有名人を不幸にする「暴走するファン」とは、どんな人たちなのか?
ファンの暴走が叫ばれて久しい昨今。有名人に激しすぎる愛情を示すがあまり、その有名人を批判する相手を過度に罵倒したり、その有名人につきまとったりと、ファンが過激な行動に出てしまう現象は、もはやおなじみのものでしょう。
ミズーリ大学などの研究によれば、2001年から2021年の間に、このようなファンの暴走が大幅に増加したことを報告。SNSの発達によって有名人との距離が近くなり、その結果として、暴走が起きやすくなったものとされております。
でもって、こういったメンタルを説明する理屈はいろいろあるんですけど、最もよく言われるのは「吸収中毒モデル」ってやつです。
このモデルによると、ほとんどの人は、純粋にエンターテインメントとして有名人を消費するんだけど、
- 個人のアイデンティティや有意義な人間関係を持たない人は暴走しがち!
って傾向がある点を指摘しておられます。明確な自己を確立できていない人は、有名人に関する情報に夢中になることで、自分の問題を補おうとするんじゃないかってことですね。
この行為は、短期的には問題の解決に役立ちますが、長期的には有名人に対して依存症のようなメンタリティが進み、自分のアイデンティティを満たすために極端な行動に出やすくなり、ヘタをすればストーキングのような強迫観念や機能不全行動につながる可能性も出てくるんですな。わりと納得感のあるモデルじゃないでしょうか。
でもって、この吸収中毒モデルでは、ファンの様態を3パターンに分けてます。
- 娯楽社会的レベル:有名人への依存のなかでは最も軽症で、有名人を娯楽として楽しみ、その有名人への関心に基づいてファンクラブなどに参加するタイプ。ここから有名人への依存に進まなければ問題はない。
- 脅迫個人的レベル:好きな有名人に執着し、その有名人に対して強迫的な感情を抱くタイプ。推定では、ファン全体の約20%がこのレベルで有名人にハマりがちだとされてます。
- 境界病理学的レベル:好きな有名人に関する行動や妄想をコントロールできないタイプ。研究によると、ファン全体の約3%から5%が、このレベルの有名人依存に該当するそうな。
ってことで、当然ながら、「脅迫個人的レベル」と「境界病理学的レベル」にまで進むと、メンタルには悪い影響が出やすくなります(R)。具体的には、
- 自尊心の低下が起きる(女性で顕著)。
- 日中の眠気の増加が起きる(若い人に多い)。
- 認知能力もダメージを受ける。これは、有名人に精神的エネルギーと注意力が費やされた結果、日常的な問題解決や意思決定に必要な認知リソースが減るのが原因だと思われる。
って報告がありまして、有名人への執着が強い人ほど、うつ病や不安症にハマりやすいと言われてたりします。
そこで近年では、この問題を計測する「セレブリティ・アティチュード尺度」ってテスト(R)も開発されてまして、「暴走するファン」たちが、内面でどんなことを考えているのかを理解するのに役立ちます。
自分でも試してみたい方は、以下の34問を読んで、どれぐらいあなたの心に響くかを考えて5点満点で採点してみてください。この文章に同意する人ほど、有名人への執着の度合いが高いことを示しております。
- もし私が好きな有名人に会えたら、彼/彼女は、なんとなく私が彼/彼女の一番のファンであることをわかっているでしょう。
- 私がその有名人に興味を持ち続けている主な理由のひとつは、それによって人生の苦しみから一時的に逃れられるからです。
- 私の好きな有名人は、あらゆる面で完璧です。
- 私の好きな有名人とは、言葉では言い表せない特別な絆で結ばれています。
- 私の好きな有名人のことを知ることは、彼/彼女を愛すること。
- 私の好きな有名人に何か悪いことが起こると、自分に悪いことが起きたように感じます。
- 私の好きな有名人が何かで失敗したり負けたりすると、自分も失敗したように感じます。
- 私の好きな有名人の成功は、私の成功でもあります。
- 私の好きな有名人は、私のソウルメイトです。
- 私の好きな有名人が死んだら、私も死にたくなります。
- もし誰かが私に10万円を渡してきて「好きなように使っていい」と言ったら、そのお金を、私は有名人の個人的な所有物を買うために使います。
- 私の好きな有名人に良いことがあると、自分のことのように感じます。
- 私の好きな有名人の、人生の細部を知りたいです。
- 私の好きな有名人の写真や記念品を、いつも同じ場所に飾っています。
- 私の好きな有名人に憧れている人と話すのが好きです。
- 私の好きな有名人に関するニュースをチェックするのは、とても楽しい娯楽です。
- 私の好きな有名人のことを好きな人とは、一緒にいるだけでも楽しい。
- 私の好きな有名人のことを見たり、読んだり、聞いたりすると、つねに楽しい時間を過ごせる。
- 私の好きな有名人のライフストーリーを知るのはとても楽しい。
- 大人数でいる時に、私の好きな有名人の話を見聞きするのが好きです。
- 友人と、私の好きな有名人の行動を話し合うのが好きです。
- 私の好きな有名人の命を守るためなら、喜んで死ねます。
- もし私が好きな有名人に会う幸運に恵まれ、その有名人から違法なことを頼まれたら、私はおそらくその依頼を引き受けます。
- もし私が、好きな有名人の家を急に訪ねたとしても、彼/彼女は私に会ってくれるだろう。
- 私は自分の好きな有名人について、嫌でも頻繁に考えてしまいます。
- 私はしばしば、自分の好きな有名人の、個人的な癖や習慣について知らねばならないと感じます。
- もし私にトラブルが起きたら、私の好きな有名人は、すぐに助けに来てくれるだろう。
- 私は、好きな有名人と独自の連絡手段を持っているので、お互いに密かに連絡を取り合うことができます。
- もし私の好きな有名人が犯罪を犯したと言われても、それは間違いなく嘘でしょう。
- もし私の好きな有名人が脱法ドラッグを推奨していたら、私はそれを試すでしょう。
- 自分の好きな有名人に関するニュースは、苦しい人生からの心地よい息抜きになります。
- もし私が、好きな有名人の車へ勝手に乗り込んでいるところを発見したら、彼/彼女は混乱するだろう。
- 私の好きな有名人と、数日間、同じ部屋に閉じ込められたら最高です。
- もし好きな有名人がレストランで私を見かけたら、彼/彼女は私に座って話をしようと誘うだろう。
採点が終わったら、以下の文章につけた点数を足し合わせて、それぞれ平均を出しましょう。「この点数より上だったヤバい!」みたいな基準はないものの、だいたい3点を上回ったら、ちょっと執着が強めになってるかも?とは言えるでしょう(ちなみに、ここで数字が出てないのは、フィラー項目と考えられます)。
- 境界病理学的レベル: 1+ 8 + 11 + 2 + 33 + 18 + 24 + 12 + 14 + 16 + 28 + 6 + 3
- 娯楽社会的レベル:17+ 31+ 23+ 13+ 19+ 29+ 5
- 境界病理学的レベル: 4 + 22 + 25 + 15 + 20 + 7
まぁ有名な芸能人やクリエイターを好きになることは、本質的に悪いことではないんですが、それが執着へとエスカレートしたら問題が生じますんでご注意ください。ぜひとも、憧れと執着の境界線を見極めつつ、「推し活」をなさっていただければと。