今週の小ネタ:わさびで頭が良くなる? ブロッコリースプラウトで疲れなくなる? 「なわとび」で腸の健康が改善する?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
わさびで頭が良くなる?
「わさびが脳に良いのでは?」ってデータ(R)が日本から出ておりました。
これは健康な日本の高齢者72名(平均64歳)を対象にしたテストで、12週間のランダム化比較試験になってます。実験では全体を2つのグループに分けまして、
- わさびエキスカプセル100mg
- プラセボカプセル100mg
のどちらかを毎日摂取してもらったそうな。わさびエキスには、6-MSITCっていう健康成分が0.8mg含まれていて、こいつが脳の判断力や注意力を向上させてくれるんじゃないかと、昔から言われてきたんですよ。
で、そのうえで脳の処理速度、注意力、実行機能、推論、短期記憶、ワーキングメモリーなどを調べてみたら、結果はこんな感じになりました。
- わさびエキスのサプリメントを飲んだグループは、プラセボよりもワーキングメモリとエピソード記憶が改善された!
ということで、自分が体験したことを思い出す能力と、短時間で大量の情報をさばく能力がどちらも改善されたんだそうな。
まぁ、この試験は、わさびエキスの製造元である金印さんが資金提供をしてまして、そこらへんが気になるとこもありますけど、6-MSITCのメリットについは近ごろよく耳にするようになったんで、可能性はありそうだなーとか思ってます。今のところ、わさび系のサプリってあんま出てないので、普通にわさびを食うと良さそうであります。
ブロッコリースプラウトで疲れに強くなるかも
ブロッコリースプラウト(ブロッコリーの新芽)といえば、多くの専門家が認める健康食材のひとつ。近年も良い報告が続いてまして、今度は「ブロッコリーで運動のパフォーマンスが上がる!」みたいな話が出てたりしました(R)。
こちらは健康状態に異常のない成人9名が対象で、
- グルコシノレート(ブロッコリーの健康成分)が豊富なブロッコリースプラウトジュースを1日2回飲む。
- アルファルファスプラウトジュース(グルコシノレートは少ない)を1日2回飲む。
って2つの条件を、1ヵ月の休止期間をはさみつつどちらとも実施。ブロッコリースプラウトジュースには、1本あたり1.15mmolのグルコシノレートが入っていたのに対し、アルファルファスプラウトジュースには0.015mmolのグルコシノレートしか入ってなかったとのこと。
さらに、それぞれの実験中、参加者には合計7回のHIITをこなすように指示。そのうち5つのセッションは、参加者のVO2maxの90%~95%で4分間のインターバル5回と最大3秒スプリント2~3回で構成されてまして、残り2つのセッションは、参加者のVO2maxの85%~90%で8分間のインターバル5回って感じだったらしい。
でもって、介入の前後に、いろんなテストをやってみたら、結果はこんな感じになりました。
- ブロッコリースプラウトのサプリメントを飲んだ後は、エクササイズ中の乳酸値がプラセボよりも低かった(これは良いこと)。
- 最大酸素摂取量には差がなかったが、ブロッコリースプラウトのサプリメントを飲んだ後の方が、エクササイズで疲れきっちゃうまでの時間が、プラセボより約20秒改善した。
- 最大心拍数はプラセボ群では1分間に3拍低下したが、ブロッコリースプラウト補給後は変化しなかった。
- ブロッコリースプラウトを飲んでいるあいだ、参加者はプラセボと比較して低血糖状態ある時間が短く、平均血糖値も高かった。
ということで、これだけ見るとブロッコリースプラウトのサプリは割と良さそう。もちろん、かなり小規模な実験だし、この研究は参加者の人口統計学的情報を提供していないので(理由はよくわからん)、そこはかなり割り引いてお考えいただければと思いますが。
まぁ私としては、普段からキャベツとブロッコリーでグルコシノレートはかなり摂取してますんで、今後もブロッコリースプラウトを飲むことはないでしょうが、アブラナ科の野菜が苦手な人は、サプリを使うのもアリかもしれませんな。
「なわとび」で腸の健康が改善する?
「食物繊維+なわとび」で腸内環境が良くなるんじゃないの?という、なんだか珍しいデータ(R)が出ておりました。
こちらは84名の成人(18~22歳)が対象の試験で、12週間のRCTを行ったもの。実験では参加者を3つのグループのいずれかに割り付けてます。
- 食物繊維たっぷりグループ:1日20グラム以上の食物繊維を摂取する。食物繊維の一部は小麦穀物(1日5.4グラム)で、残りの15グラムは1日4皿の野菜と1皿の果物から摂取したとのこと。
- なわとびグループ:なわとび運動を週3回行う。「100回跳ぶ→20秒間の休息」を1セットとして、ジャンプの回数が合計2,000回になるまで続ける。
- なにもしないグループ:通常の食事と運動活動を維持する。
なんでこういう実験デザインになったのかは謎ですけど、なわとびが良いエクササイズなのは間違いないのと、適度な運動が腸内細菌に良いのも間違いないんで、わからなくもないっすね。
でもって、12週間の変化をチェックしたら、結果はこんな感じになりました。
- なわとびグループは、なにもしないグループと比較して、心拍数が毎分5拍減少し、中性脂肪は0.05mmol/L減少した。
- また、なわとびグループは筋肉が増加し、体脂肪とウエストサイズが減少したが、食物繊維グループには、体型の面で変化はなかった。
- なわとびグループと食物繊維グループで比較すると、心臓や血管の病気リスクの改善については目立った差がなかった。
- 腸内環境については、なわとびグループと食物繊維グループの両方とも変化した。これは、明確に腸が健康になったとは言いづらいものの、おそらくなわとびと食物繊維は、どちらとも腸内環境を改善する可能性があるんだと思われる。
ということで、食物繊維のメリットについてはすでに有名だったでしょうが、「なわとび」でも腸内環境に良い影響があるってのは、ちょっと面白い知見っすね。ここで使われた「なわとびエクササイズ」の方法は割と取り入れやすいので、新たな運動ルーチンとして取り入れるのも良さそう。