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2023年に読んだ294冊と、鑑賞した映像コンテンツ132本から、特に良かったものを選ぶエントリ

 


年の瀬!ということで、今年読んだ294冊と今年見た映像コンテンツ132本から、特に「良いねー」と思ったトップ10を、それぞれまとめておきますので、年末年始の読書の参考にどうぞ。

 

 

ちなみに、今年は「天才性が見つかる 才能の地図」「運の方程式」という本を出版しましたので、こちらも合わせてよろしくお願いたしまーす。

 

 

 

とにかくすぐ役に立つ6冊 

まずは、読んですぐ日々の生活に活かせるタイプの本から。今年は以下の6冊が良かったですねー。

 

  1. セルフ・コンパッションのやさしい実践ワークブック:セルフ・コンパッションのトレーニングに特化した本。ボディスキャンとかマインドフルネスなど、かなり定番の技法が並んでますけど、中盤で出てくる「フローチャート」がうまく仕上がってます。


  2. 「本当の自分」がわかる心理学:「インナーチャイルド」の改善を説明した本。脳の反応パターンを変える行程は複雑になりがちなんだけど、かなりシンプルにまとめられていてよき。


  3. Measure What Matters(メジャー・ホワット・マターズ) 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR:Googleも使ってる目標管理テクニックの解説本。OKRの体系だった実践法を述べるというよりも、ガイドラインを示した上で、「あとは事例からくみ取ってね!」って感じなので、自分の環境に応じて適用するための汲み取り力は必須。


  4. レジリエンス:人生の危機を乗り越えるための科学と10の処方箋:レジリエンス研究の大御所サウスウィック先生が、逆境を乗り越える方法をまとめた本。ここで先生が主張する「10の処方箋」は、現実的な楽観主義、恐怖との直面、道徳的指標、信仰とスピリチュアリティ、社会的サポート、ロールモデル、身体の健康、脳の健康、認知と感情の柔軟性、意味と目的……ということで、レジリエンスの良い復習になるんじゃないかと。


  5. プロカウンセラーが教える対人支援術:心理療法の現場で使われるテクニックに特化した本ながら、傾聴テクニックの具体例あり、メタメッセージの読み取り方の指南あり、感情の語彙を増やす重要性の指摘あり、治療の正しい目標設定の方法を教えてくれるパートありと、一般人のコミュニケーションにも使える知見が満載の良い本。


  6. JUST KEEP BUYING 自動的に富が増え続ける「お金」と「時間」の法則:大量のデータをもとに、実践的な投資と貯蓄のアドバイスを提供する本。ドルコスト平均法の話をメインにしつつ、最適なファイナンシャル・プランについて、ぐうの音も出ないレベルの正論を叩きつけてくる一冊。

 

 

 

世界の見方が変わる5冊 

続きましては、「おお!世界はこうも解釈できるのか!」というセンス・オブ・ワンダーを与えてくれる本です。

 

  1. 言語はこうして生まれる:人類はなんで言葉を使うの?って疑問に、認知学者が取り組んだ一冊。言語にまつわる複数の難問について、「言語は発明というよりもアドリブであり、コミュニティ全体が参加するゲームなのだ!」って発想で答えていくあたりが読みどころ。


  2. 物理学者のすごい思考法:理論物理学者が日ごろからどのように世界を見ているのかを語った本。ごく一般的な日常が、物理学的な思考のおかげで超おもしろクイズに早変わりする様子が数ページのエッセイとしてまとめられていて、めっちゃ楽しい。


  3. 博士が解いた人付き合いの「トリセツ」:「人間の行動はよくわからん!」と悩み続けた自閉症スペクトラムの生化学者が、タンパク質や分子化学の知識をメタファーに使いつつ、人間関係はもちろん、意思決定、紛争、人間関係の仕組みをどうにか理解していく奮闘記。自閉症スペクトラムの世界観に触れられる貴重な手記っすね。


  4. 数学が見つける近道:「数学とは近道の技術である!」と定義したうえで、微分や確率といった考え方によって世界がどうショートカットできるのかをまとめた本。いちおう実用書としても使える。


  5. 言語の本質-ことばはどう生まれ、進化したか:「言語とはなにか?」「言語はどのように生まれたか?」って根本の疑問について、豪快な仮説をぶっこむタイプの本。読み進めるにつれて「これぞ言語の本質!」と思えてくる論証のうまさが読みどころ。

 

 

 

世の中の解像度が上がる5冊 

さらに、世の中で起きている事件や現象について、さらに深い理解を与えてくれる本もまとめておきます。

 

  1. 宗教の起源――私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか:「ヒトの進化に、宗教はどんな機能を果たしてきたのか?」をテーマにした一冊。全編にわたって「ヒトが進化で備えた生物学的な機能が自然と宗教を生み出したのだ!」という主張が展開されていて、楽しいです。


  2. やりなおし世界文学:小説家の津村記久子さんが、世界の名作を読んでみる本。あくまで著者の実感から感想を積み上げるので読みやすく、その感情に嘘がないせいで納得度が高いのが超ナイス。


  3. ChatGPTの頭の中:「なぜ生成AIは動作するの?」っていう根本のポイントを説明してくれている良書。「ChatGPTのプログラムの構造は単純なんだけど、いろんな要素が奇跡的に組み合わさってなぜかうまくいってるんだよなぁ」ってファジーさを説明してくれてるのがナイスでした。


  4. グッド・ライフ 幸せになるのに、遅すぎることはない:ハーバード成人発達研究をベースに、幸福な人生を送る方法を示す本。ソーシャルフィットネスの改善法が細かく書かれていて、意外とありそうでなかった一冊じゃないかと。


  5. WORLD WITHOUT WORK――AI時代の新「大きな政府」論:「AIで仕事は減る!」って前提で話を進め、その上で余暇が激増したあとの人間の尊厳にまで踏み込んで考察する本。「AIと仕事」に関する基礎文献として、読んでおいて損なしでしょう。

 

 

 

おもしろ小説5冊

今年も良い小説をたくさん読めまして、特に以下の5冊が印象に残りました。

 

  1. 水車小屋のネネ:18歳と8歳の女性が、親元を離れて蕎麦屋で働き出す話。長いページ数で人間の関わりのネットワークを丁寧に描き、最後はヒューマニズムが浮かび上がってくるところがナイス。


  2. 献灯使:想像力を大爆発させて描くポスト311文学。災害で終わりに向かう未来の日本を描写しつつ、「ありえたかもしれない世紀末感」を立ち上がらせていてすごい。


  3. おいしいごはんが食べられますように:ある会社のちょっとした人間関係のイザコザを元に、それぞれのキャラが持つ食事の姿勢に幸福の多様性を仮託した話。最初から最後までずっとうまい。


  4. 傲慢と善良:「傲慢=客観性の欠如、善良=自律性の欠如」って図式を根っこに置きつつ進む恋愛小説。「自己評価は低いのに自己愛は強い」ってパンチラインが刺さる人は多いでしょう。


  5. 二木先生:自意識の鬱屈を描いた作品は多いものの、秘密を抱えた教師とイタい高校生を軸にした話の転がし方がうまく、エンタメ性の高さがバツグン。

 

 

 

おもしろ漫画5つ

今年は漫画もわりと読みましたんで、なかでもよかった5作品を挙げておきます。

 

  1. Shrink~精神科医ヨワイ~:新宿の精神科医を主人公にした作品。心療内科をテーマにした漫画は数多いものの、そのなかでも群を抜いて情報が正確で、実際にも使えるメンタル改善のテクニックも多め。読むだけでも気が楽になる人は多いはず。

     

  2. ブランクスペース:空想を実体化できる能力を持つ女子高生の話。脳内のデータが現実以上のリアルを獲得していく過程が描かれていて、「想像力」をテーマにした作品のなかでも、かなりすごいことをやっているんじゃないかと。


  3. だらしない夫じゃなくて依存症でした:アルコール依存の夫婦を描いた漫画。依存症の現実を過不足なくストーリーに落とし込み、実際に問題を抱えた人に向けたTIPSも豊富だし、感動と実用のバランスが取れているのがよき。


  4. セックス依存症になりました。:セックス依存症の当事者が自らの苦闘を描いた漫画。ここで描かれる依存のあり方は、アルコール依存やギャンブル依存にも似ていて、「やっぱり認知のゆがみか……」って気分になりました。個人的に、依存症ってめっちゃ現代的な問題だと思っているんで、たいへん勉強になりました。


  5. 谷崎マンガ 変態アンソロジー:高野文子、榎本俊二、西村ツチカなどが谷崎の小説を漫画化した本。手練れの漫画家たちが、あの手この手で谷崎御大の変態ぶりを再現していて、たいへん楽しめました。

 

 

 

おもしろ映像コンテンツ

最後は今年良かった映像コンテンツです。ここだけは、個人的に良かったものを、上から下に向かって特に良かった順に並べてます。

 

  1. BLUE GIANT:ジャズにのめり込む男を通して、フローに取りつかれた人間の物語を描いた作品。活気にあふれまくったライブシーンと、そこにのめり込むキャラたちの描写がフローの良さを明確に表現していて、フローに入りにくい体質の私は激しいうらやましさを覚えました。


  2. AIR/エア:エアジョーダンの誕生を描く話。リスク性向の高い男たちを描くプロジェクトXって感じで、演出はシンプルで的確だし、役者陣も達者だしで、リスク嫌いな性格の私でも、モチベーションがかき立てられました。


  3. マイ・エレメント:火、水、土、風を擬人化したキャラによるロマコメ。恋愛映画としての表現が愛らしく、思わず見入っちゃう美しいシーンが山ほどあり、世界観の構築ぶりも凄まじく、最終的には落涙。


  4. 生きる LIVING:黒澤明の名作の英国版リメイク。演技も演出もすべて丁寧だし、カズオ・イシグロ先生の脚本も時代に合わせたアップデートが最高。「生きがいがない……」と思っているすべての人に刺さるのでは。


  5. キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン:1920年代のアメリカで起きた先住民の大量殺人事件を描く話。 なんの魅力もない小悪党たちの行動が積み重なって、マイノリティの大量殺人につながっていく様を描ききる傑作。


  6. オクトパスの神秘: 海の賢者は語る:主人公の海洋学者がタコに恋する実話を描くドキュメンタリー。今年見た映像のなかではダントツのセンス・オブ・ワンダーがありました。


  7. ミッション インポッシブル/デッドレコニング part one:2時間40分もあるのに1分もダレ場がないのが超絶アクション。まったく大したストーリーではないのに、編集の妙でここまでおもしろいものができるのかという驚きがありました。


  8. TAR ター:アートの喜びと辛さを掘る話でもあり、創作性と社会性の衝突を見せつける話でもあり、人格と作品性の矛盾を考える話でもあり、人間の二面性を観察する話でもあり、時間と記憶にまつわる話でもあり……と、いろんなテーマをまとめて叩きつけてくる良い映画。


  9. イニシェリン島の精霊:主人公のおじさんが、親友のお爺さんから急に絶交される話。小さな喧嘩が取り返しのつかない事態につながっていく様子を徹底したブラックジョークで描いた傑作で、今年見た映画で一番笑いました。


  10. aftersun/アフターサン:31歳になった主人公が、11歳のころに父と出かけた旅行の記録を振り返るうちに、子どものころには気づかなけった父の心の傷を知り……みたいな話。徹底して記憶の残酷さにこだわった描写がすばらしく、とにかく全編がエモさの塊。泣いた。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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