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運動のパフォーマンスを一瞬で高める「科学的に正しい気合の入れ方」

 


筋トレの効果を高める方法の1つとして「気合を入れる」ってやり方があります。 運動の前に「 自分ならできる!」「 もっと重いものを持ち上げられる!」 みたいに自分を鼓舞してパフォーマンスを上げると言う方法です。

 

というと、ただの精神論のようですが、 スポーツ心理学の世界では昔から有効性が確かめられてきた手法の1つ。 一時的にパフォーマンスを高めるためであれば、 間違いなく役に立つんですよね。

 

でもって、 新しいメタ分析(R)では、この「気合を入れる」という手法について深く調べてくれていて、

 

  1. 気合を入れると本当にパフォーマンスは上がるのか?
  2. どんな気合の入れ方が効果的なのか?

 

などの点について深掘りしてくれております。あくまで運動のパフォーマンスに関する研究ですが、全体を読んだ限りでは、大事な試験とか仕事の前に使っても効果がありそうな印象を受けました。 その点では、汎用性がある内容かもしれないですね。

 

具体的には、26の論文から27の研究を 集めたメタ分析になっていて、合計93の効果が 生産の対象になっています。参加者は合計1,022人で、256人が女性、728人が男性。さまざまな「気合を入れる」方法を6つのタイプに分類し、 それぞれがどれぐらいの効果を持つのかを定量的にチェックしてくれてます。

 

まずは、その結果をざっくり見てみましょう。

 

  • ほとんどの比較において、「気合を入れる」 方法の大多数(65%)が、 何もしなかった場合よりも、 運動のパフォーマンスが上がることがわかった。

 

  • 「気合を入れる」 方法は、 どのような人でも(大学生、初心者、 筋トレ上級者、アスリートなど) メリットを得られる傾向があり、トレーニングを受けている人とアスリートにとっては、より一貫した メリットが確認された。

 

  • ほとんどすべての方法に効果が見られたが、いくつかの方法は他よりも効果的だった。具体的には、「準備的覚醒」「セルフトーク」「PETTLEPイメージ」「外的注意集中」などはパフォーマンス向上の効果が高く、対照条件との比較では68~100%の支持を得た。

 

ということで、 やはり「気合を入れる」方法 には使うだけの意味がありそうであります。 まぁこのメタ分析だと、それぞれのテクニック間での効果を比較した研究は少ないんで、 いまいち確かなことが言えないんですが、 パフォーマンスアップのために使ってみる価値はあるでしょう。

 

それでは、この分析で効果が確認された「科学的に正しい気合の入れ方」を紹介しましょう。

 

  • 準備的覚醒: 例えば、 運動の前に大声を出したり、素早く歩き回ったり、激しい試合の 動画を見たりして、テンションを高める方法。 その方法は何でもいいが、 自分で選んだ手法を使うほど、パフォーマンスアップの効果は高くなる。

 

  • 刺激イメージ/感情イメージ: 刺激イメージは、 自分が使う身体能力の高まりをイメージする方法を意味する。 例えば、 筋トレの際に、筋ポンプや筋力の増加などをイメージすること。

    感情イメージとは、感情的な感覚をイメージすることで、 例えば筋トレの際に幸福感や達成感などを 前もってイメージしておく。

    ある研究では、 被験者に以下のような指示を出している。

    「目を閉じた状態で、その運動を行っている自分を想像してください。頭にカメラがあるかのように想像し、 その動作をしている際の身体の感覚を 客観的にイメージしましょう。 また、その動きをするときに、あなたの目が見るであろうもの、感じるであろうものを 詳しくイメージしてください。この時には、自分にとって最も快適な方法で動作をイメージし、 緊張しないように注意しましょう」

    これらのトレーニングは頻繁に使うことができるが、うまく使えるようになるには時間がかかるので 注意が必要。

 

  • PETTLEPイメージ法:2001年に開発された手法。 7つの要素を具体的にイメージしていくことでパフォーマンスを高める。 詳しく説明すると長くなるので、これについてはまた別のエントリを設ける予定。いくつかの研究では、PETTLEPは他のスポーツ特有のスキル 改善に優れており、 例えばフィールドホッケー、バランス運動、ゴルフの精度改善 等への効果が確認されている。

 

  • セルフトーク: 筋トレの際に「私はもっと重量を持ち上げられる」「私は高くジャンプできる」などと 自分に語りかける方法。 この他にも、ベンチプレスを行いながら、「上方に押し上げ、肘をまっすぐにする」といったように、 自分が行うべき動きを描写するパターンもある。

    データによれば、自分を励ますタイプのセルフトークの方が運動のモチベーションアップには有効だと考えられる。 一方で、自分の体の動きを指示するようなセルフトークは、テクニックの練習 効果を高めるために有益 だと思われる。

 

  • 外的注意集中: 運動の際の自分の身体の動きに意識を集中させる方法。 例えば、筋トレの際に「できるだけ強く押す」ことに意識を集中させたり、筋肉が収縮する 感覚に意識を集中させたりする。

 

これらの方法のうち何を使うかは好みの問題なので、自分の感覚にフィットするものを選びましょう。 今のところどれがベストかは誰にもわからないので、 自分の好みに従うのがベストだと言えましょう。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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