このブログを検索




今週の小ネタ:姿勢が良い人は性格が悪い(かも)、カフェインがアルツハイマー病を予防するかも、1回の運動は10日にわたってポジティブな効果をもたらすかも


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

姿勢が良い人は性格が悪い(かも)!

「姿勢が良い人は性格が悪い(かも)!」みたいな研究(R)が出ていて、おもしろかったです。一般に、ピンと背筋が伸びた姿勢は良いことだと考えられますが、実はその人のヤバい性格を反映している可能性もあるというんですな。

 

ここでは「自然な立ち姿と性格の関係」を調べるために、5つの実験が行われております。その大事なとこだけ説明すると、

 

  1. 369人の参加者を集め、みんなの自然な立ち姿の写真を前後左右から4枚撮影。すべての写真を機械学習ツールで分析し、それぞれの姿勢を評価した後で、参加者の性格アンケートの回答と比べた。

    結果、自然に直立した良い姿勢を取っている人は、支配的、競争的、反社会的傾向と関連した性格特性を示した。具体的には、これらの人は社会的支配志向とサイコパシーの得点が高く、共感と怒りのコントロールの得点が低かった。

    ちなみに、一般にはうつ病患者には猫背が多いと言われるが、思ったほどは相関しておらず、「良い姿勢と反社会的性」の関係の方がはるかに一貫していた。



  2. 上の試験から107人の参加者を選び、5週間後に再び姿勢の評価を実施。その結果、参加者の姿勢は5週間後も安定していた。つまり、自然な姿勢は単なる一過性のものではなく、安定した個人の特性なのだと言える。



  3. 129人の参加者が座っているときと安静時の筋活動を記録したところ、支配的な性格を持つ人の姿勢は、主に首を伸ばす筋肉の働きが特徴的であることがわかった。それと同時に、より直立した姿勢の人は、他人とコミュニケーションを取る時も、支配的な態度を取ることもわかった。



  4. 125名の自然な立ち姿の写真を撮り、みんなの姿勢と、マキャベリズム、ナルシシズム、攻撃性などの特徴と比べた。その結果、より直立した姿勢の人は、マキャベリズム、サイコパス、思い上がったプライドなどの要素が大きかった。これらの性格は、すべて権力欲やマウンティングの行動に関連している。

 

ということで、自然に背筋がピンと伸びた「良い姿勢」の人は、反社会的な性格を持ってることが多く、自分の怒りをコントロールするのが苦手で、他者より優位に立とうとしがちだって結果であります。うーん、意外。

 

研究チームいわく、

 

我々の研究から得られるメッセージは、身体の姿勢は身体的な健康にとって重要であるだけでなく、性格の関連する側面、特に社会的相互作用に関連する側面も反映するということだ。

 

これは、日常生活において自分の身体に注意を払うことの重要性と利点を強調するだろう。

 

とのこと。もちろん、このテストは「姿勢が良い人は性格が悪い」ことを示したものではないし、「後天的に意識して姿勢を改善した人」には当てはまらないので、そのあたりはご注意ください。とはいえ、人物を評価する際の、ちょっとした参考にはなる鴨ですな。

 

 

 

カフェインがアルツハイマー病を予防するかも

「カフェインがアルツハイマー病を予防するかも!」ってデータ(R)が出ておりました。

 

まずこの研究の結論から言ってみると、

 

  • カフェインをあまり飲まない人は、軽度認知障害にかかるオッズが2.49倍高い!

 

みたいになります。なんでも、カフェインをよく飲む人は、アルツハイマーと関わる脳脊髄液バイオマーカーのレベルが低かったというんですな。

 

この研究は、軽度認知障害147人とアルツハイマー病116人を対象にした調査で、みんなにコーヒー、紅茶、チョコレートなど、カフェインを含む食品を普段どれぐらい摂取しているかをチェックし、さらにすべての参加者の血液サンプルと脳脊髄液サンプルも検査しております。

 

分析に当たっては、参加者をカフェインの摂取量によって分類しまして、

 

  • 低カフェイングループ:1日の摂取量が216ミリグラム以下。
  • 高カフェイングループ:1日の摂取量が216ミリグラムより多い。

 

って感じで区分けしつつ、脳機能に違いが出るのかをチェックしたんだそうな。

 

その結果、カフェインの摂取量が少ない人ほど、記憶障害が起きている確率が有意に高かったとのこと。 具体的には、カフェイン摂取量が少ない参加者は、摂取量が多い参加者に比べて、軽度認知障害またはアルツハイマー病と診断される確率が2.49倍高かったそうで、「カフェインには記憶力を保護する効果があるのでは?」って気がしてくるわけですね。

 

また、認知機能だけでなく、脳脊髄液にも違いが見られまして、 カフェインの摂取量が少ない参加者はAβ42のレベルが低かったそうな(=脳内のアミロイドプラークが形成しやすくなっていると判断できる)。こちらの結果からも、カフェイン摂取量が少ないほどアミロイド負荷が大きくなり、病気の進行が速くなるのかもなーって感じがするわけです。

 

この研究のデザインだと、本当にカフェインがアルツハイマーの予防に効くのかはわからんのですが、カフェインと脳の関係はよく話題になるんで、個人的には十分あり得るんじゃないかなーとか思っております。

 

 

 

1回の運動が10日にわたってポジティブな効果をもたらすかも

「1回の運動は10日後の脳にも影響し続ける!」みたいな研究(R)が出ておりました。運動で頭が良くなるのは間違いないものの、1回の運動でも、思ったより長い時間にわたって脳に複合的な変化をもたらすかもしれないって話ですね。 

 

この研究は、たった1人の参加者(研究著者のアナ・マリア・トリアナさん)を対象にしたもので、133日間にわたって脳活動や健康指標を測定。30回のfMRI(機能的磁気共鳴画像)スキャンをしたり、脳活動の変化を血流で測定したり、ウェアラブルデバイスやスマホで睡眠や気分などを追跡したりしたんだそうな。確かに、脳の研究って、瞬間ごとのスナップショットしか計測しないケースが多いので、これだけ長期の追跡を行ったものは珍しいですね(サンプル数は1ですが)。

 

その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 運動量と脳活動の関係:運動量が少ない日は、前頭頭頂ネットワークの統合がすぐに低下し、作業記憶に影響したものと思われる。

 

  • 運動の即時および遅延効果:運動の効果はすぐに現れるだけでなく、10日後にも脳のネットワークに影響を与えることがわかった。特に、運動は脳ネットワークの統合性とコミュニケーションについて、割と長期間にわたって良い影響を与えるっぽい。

 

って感じだったそうで、要するに、運動は1日やらないだけでも脳に悪影響だし、1回やった運動は10日近く脳機能に影響し続けるし……ってことっすね。

 

1人の参加者しか対象にしてないので即断はできないものの、研究チームはこう言っておられます。

 

これらの知見は、身体活動レベルが脳ネットワークに即時的な影響と遅延的な影響の両方を及ぼすことを示している。

 

定期的な身体活動が脳ネットワークの最適な統合とコミュニケーションを長期にわたって維持するために重要であるという考えを支持するものだ。

 

ってことで、めっちゃ簡単に言えば「運動はずっとし続けようぜ!」という、非常に当たり前の結論になりますね。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM