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筋肉を伸ばせば増える!?話題の『ストレッチ筋肥大』を調べた研究の話

 

近ごろ、筋トレクラスタでよく耳にするのが「ストレッチによる筋肥大(Stretch-Mediated Hypertrophy)」ってワードであります。ざっくりまとめると「筋肉を伸ばした状態でトレーニングを行ったほうが筋肥大が促進されるよ!」って考え方ですな。

 

 

ストレッチによる筋肥大ってなに?

この概念が生まれたのは1970年代で、動物を対象とした実験で確認されたものです。たとえば、1973年の研究(R)では、鶏の翼に200gの重りを24時間取り付けて筋肉が伸びた状態を維持。そうすると、翼の筋肉が最大で170%も増加したんだそうな。かなり劇的な数値っすね。

 

というわけで、これ以降「筋肉を伸ばすと筋肥大が起こる!」って希望が出てきたわけですが、残念ながらヒトにもそのまま適用できるのかは不明だったんですよ。動物実験と現実のトレーニングには、いろいろと違いがありまして、

 

  • 負荷が異常に高い:動物実験では、筋肉にかけられる負荷が非常に大きい場合が多い。これは通常の筋トレでは再現が難しい。

 

  • 時間が異常に長い:実験では、筋肉が伸びた状態が数時間から24時間も維持されることがある。これも普通のトレーニングでは実現不可能。

 

  • 動物モデルの特異性:鶏やラットなどの動物と人間の生理的な違いが、結果の解釈を難しくする。

 

ってあたりがジャマをして、「この概念が真実かどうか?」「真実だとしてどうトレーニングすれば良いのか?」についてはよくわからないんですよね。ある程度まで研究の裏づけはあるものの、解釈の余地が大きすぎて、「本当に効果があるの?」って疑問は残るわけです。

 

 

 

「ストレッチによる筋肥大」をヒトで調べてみたら?

それでは、「ストレッチによる筋肥大」は実際に使えるのかってことで、人間を対象にした最近の研究を見てみましょう。

 

いくつか読んで面白かったのはミナス・ジェライス連邦大学などの研究(R)で、この実験では、ヒザを大きく曲げた状態(65〜100度の膝屈曲)で脚のエクステンション運動を行ったグループは、ヒザを浅く曲げた(30〜65度)でトレーニングを行ったグループよりも大腿四頭筋が2倍近く成長したんだそうな。

 

というと「凄い!これはやるしかない!」って印象がありますが、ちょっとした注意が必要でして、

 

  • この実験で使われたストレッチ時間はわずか数分ぐらいだった。
  • 筋肉の伸びも完全なストレッチではなく、膝の最大屈曲角度(150度)よりは50度も足りていない。

 

ってあたりは気になるところです。つまり、この研究で確認された「筋肉が育った!」って現象は、「ストレッチによる筋肥大」というよりは、別のメカニズムによる可能性も否定できないんですよね。

 

では、筋肉を伸ばすトレーニングが筋肥大に有効な理由は何なのかと言えば、いくつかの仮説が考えられるでしょう。

 

  1.  筋繊維の長さの変化:筋肉の伸びが大きいと、筋繊維の長さが増加する。これによって筋肉の伸縮効率が向上し、筋力やパフォーマンスにプラスの効果を与えると考えられる。ただし、この効果は筋肥大の初期段階、特にトレーニング初心者しか得られない可能性もあり、上級者にはあまり意味がない主張する研究者もいる。


  2. 筋膜の張力変化:筋肉を包む筋膜がストレッチされると、その張力が筋肉の成長因子を活性化させる可能性がある。この考え方が正しいのなら、筋肉を伸ばしたままトレーニングを行うことで、筋膜を刺激して筋肥大を促進するのかもしれない。


  3. 神経が適応しやすくなる:筋肉が伸びた状態で負荷をかけることで、神経系が効率的に筋繊維を動員するようになる。この適応は、筋肉の成長だけでなく、パフォーマンスの向上にも役立つと思われる。

 

ということで、ここらへんの要素がいろいろと絡み合って、筋肉を伸ばした状態でのトレーニングが筋肥大に効くのかもしれないなーと思うわけです。

 

 

 

どうトレーニングに取り入れるべきか?

ということで、「ストレッチによる筋肥大」の妥当性はさておき、筋肉は伸ばしたトレーニングは十分に意味があると思えますんで、日々の筋トレに取り入れてみても良いのではないでしょうか。その際は、以下のガイドラインを守ってみると良い感じです。

 

  1.  基本に忠実に、長い筋長を活用する:スクワット、デッドリフト、ベンチプレスなどの多関節運動で、筋肉を伸ばした状態を意識しましょう。

    たとえば、スクワットでは深くしゃがみ込み、大腿四頭筋とハムストリングをしっかり伸ばします。

    ベンチプレスでは、バーを胸にギリギリ触れるくらいまで下げて最大限のストレッチをかけます。

    デッドリフトでは、ヒップヒンジ(股関節を軸に体を折りたたむ動作)をしっかり行うことで、ハムストリングと大臀筋のストレッチを最大化するか、通常のデッドリフトよりもスタートポジションを低く設定することで、筋肉の伸張をさらに強調します(床にプレートを敷いて自分の立ち位置を高くしたりとか)。


  2. ストレッチの時間は適度に:長時間のストレッチは不要で、多くの研究では、1回のトレーニングセッションで数分間ぐらい筋肉を最大に伸ばすだけでも効果が示されていますんで(合計で3~5分間程度)。1セット中で約10~15秒間筋肉が伸ばされた状態にあると、筋肥大の効果が高まるんじゃないでしょうか。


  3.  継続性を重視:筋肥大には時間がかかるため、筋肉を伸ばすトレーニングも継続が重要。短期間の試行では効果を実感しづらいんで、すぐに諦めないでくださいませ。


  4. 上級者でも試す価値あり:トレーニング歴が長い人でも、筋肉を伸ばすトレーニングを取り入れることで、新たな刺激を与えることができ、停滞期の突破にも役立つんじゃないかと。

 

というわけで、過去の動物実験と人間のトレーニングデータを見てみると、とりあえず筋肉を伸ばしながら行うトレーニングは筋肉を育てるのに良さそうなので、意識してみてはいかがでしょうか。

 

とか言いつつ、私自身は、深くしゃがんだりバーを胸のギリギリまで近づけるトレーニングを行うと、関節の負荷が上がりすぎる傾向も感じてまして、「安全第一で浅めにやるか……」とも思ってたりしますが。


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