自分の「ヤバい思考パターン」を理解して対策しようぜ!という研究の話:6つのタイプとその対処法
当ブログでよく「うつ病の根本原因のひとつ」と言ってるのが「反芻思考」であります。「反芻思考」ってのは自分の欠点や過去の失敗を何度も何度も考え続けちゃうことで、たとえば、友人とちょっと口論をした後で「自分は相手に嫌われるようなことを言ったのでは?」と悩み続けてしまうような状況ですね。
一度や二度の反芻思考だったら問題にはならないんだけど、これが慢性化すると、うつ病やその他の心理的なトラブルが起きちゃうとされているんですな。具体的には、
- 感情の不安定化
- 注意力や判断力の低下
- うつ病や不安障害の発症リスクの増加
みたいな問題が起きるとされてまして、心当たりがある人は、できるだけ早めに対策しておきたいところなんですよね。
くわしい対策は「ネガティブ思考がわきあがって止まらない!をとりあえずしのぐ3つの技法」などを参考にしていただければと思いますが、ミシシッピ州立大学などが新たに発表した研究(R)も、「自分の反芻思考タイプを判断してみよう!」って視点を提供してくれていて有用でした。反芻思考にもいくつかのパターンがあるので、自分がどれにハマりやすいかを押さえておくと、対策を立てやすいよーって考え方ですね。
調査は725名の男女を対象にしてまして、みんなの「反芻思考の傾向」と「パーソナリティ障害の症状」をチェック。その上で反芻思考のパターンと、それぞれのパーソナリティ障害スコアの間にどのような相関があるかを分析したんだそうな。
それでは、まずは研究チームが反芻思考をどのように分類したのかを見てみましょう。
- 怒りの反芻:怒りを引き起こした出来事を繰り返し思い出し、復讐や報復を想像することに囚われるタイプ。例えば、職場での不公平な扱いや、友人に無視された経験について考え続けたりとか。
- 抑うつの反芻:「何もやる気が出ない」「自分には価値がない」といった気持ちを何度も思い返すこと。このタイプの反芻は、うつ病と深く結びついている。
- 悲しみの反芻:「なんでこんなに悲しいんだろう」と、悲しみの感情に囚われ続けるタイプ。過去の喪失体験や失敗に繰り返し思いを巡らせることが多い。
- 自己批判の反芻:自分の欠点や失敗を過剰に意識し、自分を責め続ける思考。たとえば、会話中にミスをしたとき、「自分はダメな人間だ」と思い続けるケースが該当する。
- 対人トラブルの反芻:「あの人にひどいことを言われた」「裏切られた」といった人間関係の問題に囚われるタイプ。他者とのトラブルが頭から離れないのが特徴。
- 心配:「明日の会議がうまくいくだろうか」「将来どうなるのか」といった、未来に対する不安が止まらないタイプ。特に不安障害の症状と関連が深いと考えられる。
ってことで、反芻のタイプを大きく6つに分けたわけですね。これを見つつ、「自分はどの反芻をしやすいだろう?」と考えてみるだけでも、自分がネガティブにハマりやすいパターンを理解できて良いのではないでしょうか。
でもって、この研究では、反芻思考が特定のパーソナリティ障害と密接に関連していることも明らかにしてまして、こちらの知見も興味深いです。ここでは、性格障害の中でも、特に「Cluster B(B群)」と反芻思考の関連が強いとされてまして、このグループに含まれるのは、
- 境界性パーソナリティ障害(BPD): 感情の不安定さ、衝動的な行動、人間関係の問題が特徴。
- 反社会性パーソナリティ障害(ASPD): 他者への共感や道徳観念の欠如、攻撃的な行動が特徴。
- 演技性パーソナリティ障害(HPD): 注目を集めたいという強い欲求が特徴。
- 自己愛性パーソナリティ障害(NPD): 自分自身への過剰な評価と他者への共感の欠如が特徴。
って感じになります。こういったパーソナリティ障害の問題は、特定の反芻思考と強く結びついてるわけですな。
具体的にどんな結びつきがあるのかと申しますと、
- 怒りの反芻: BPD、ASPD、HPDに共通して関連。特にBPDでは、このタイプの反芻が感情の不安定化を強める要因とされる。
- 自己批判の反芻: BPDと強い関連性が見られた。自己批判が自己価値感を下げ、感情のコントロールを難しくするのだと思われる。
- 悲しみの反芻: HPDやNPDとの関連が確認された。これらの障害では、自己中心的な思考が悲しみの感情と絡み合うことがあるっぽい。
- 心配: ASPDでは、むしろ「心配の欠如」が特徴的に見られた。そのせいで罪悪感や未来への不安を感じにくく、反社会的な行動を取るのに悩まないのだと思われる。
こうしてみると、認知行動療法やマインドフルネスで反芻思考を減らすのは、治療が難しいとされるパーソナリティ障害全体の改善に役立つ可能性もあるんでしょうな。これはなかなか良いニュースっすね。
では、上記の「反芻思考の6つのタイプ」をどう活かすべきかって話ですが、残念ながら論文の中にはそこまでの言及はありません。なんだけど、先行研究などをふまえれば、だいたい以下のような対策が考えられるでしょう。
- 怒りの反芻が多い人:呼吸法によるリラクゼーション法を学習するのが基本。その上で、神経科学が教える最強の「怒り」コントロール法である「リアプレイザル」を使ってみるのが吉。
- 抑うつの反芻が多い人:軽い運動(ヨガ、ウォーキング、ジョギング)で抑うつ症状をやわらげるのが基本。その上で、「ウソでもいいから前に進んでる感じを作る」手法で、小さな成功体験を積み重ねるのが良い。
- 悲しみの反芻が多い人:自分の感情を言葉で表現するトレーニングを積み、漠然とした悲しみを具体化し、整理する。ジャーナリングで自由に感情を書き出すのもおすすめ。
- 自己批判の反芻が多い人:自分の長所や成功したことをリスト化する作業がよさそう。1日の終わりに「今日できたこと」も書き加えてもいいでしょう。あと、このタイプはおそらく完璧主義対策が必須。
- 対人トラブルの反芻が多い人:他者の視点を想像するトレーニングが基本になりそう。その他、「許し」のスキルを鍛えるのもかなり効くと思われる。
- 心配が多い人:「プレモーテム」で最悪の事態を想定するのが有効だと思われる。「1日15分だけ心配する時間を設ける」みたいに、時間を決めて心配する手法も有効だと思われる。
ってことで、こんな感じで、自分の反芻思考パターンごとに対処してみると、ネガティブな影響を減らすことができるんじゃないでしょうか。どうぞお試しあれー。