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依存型サポートで恋愛がはかどるぞ!という実験の話

 
 

好きな相手には助けを求めろ!」と思わせるデータ(R)が出ておりました。誰かに好かれたい時に、相手の好きなことをガンガンやってあげる人は多いでしょうが、実は逆を狙ったほうが良いのではないかって話ですね。「そんなの迷惑がられるだけじゃないの?」と思った方もいるかもですが、実際には「相手に頼る」行為ってのは恋愛において非常にポジティブな役割を果たすかもしれないらしい。

 

この研究は、「依存型サポートによって恋愛感情は引き起こされるか?」というテーマで合計9つの実験を行ったものです。依存型サポートってのは、「人間が助けを求める行動には、大きく分けて2つのタイプがあるよねー」って発想から生まれた考え方でして、

 

  1. 自立型サポート:相手にアドバイスや情報を求め、問題を自力で解決しようとするやり方。たとえば、「このトラブルはどう解決すれば良いと思う?」みたいに相手に尋ねて、主体的に解決を目指す。

  2. 依存型サポート:相手から直に問題を解決してもらう方法。「壊れた家電を直してくれない?」と頼むのがこれに当たります。

 

というと、依存型サポートについて、「頼りすぎ」「甘えすぎ」といったネガティブな印象を持たれることが多かったりしますが、今回の研究では「依存型サポートで恋愛がはかどるぞ!」って感じになってて面白かったです。

 

この研究には2,535名が参加していて、以下のような実験を行っております。

 

  • 助けを求める側の視点に立つ実験:日常的な問題(例:旅行プランを立てる、壊れた家電を直す)を解決する際に、参加者に「自立型サポート」と「依存型サポート」のどちらかを選ぶように指示。その際、ロマンチックな状況(魅力的な相手との午後を想像する)やニュートラルな状況(ビジネスシチュエーションを想像する)を提示して、選択の変化を観察する。

 

  • 助けを提供する側の視点に立つ実験:助けを求められる側の参加者が、依存型または自立型サポートのリクエストを受けた後、その相手にどれぐらい恋愛パートナーとしての興味を持つかを評価した。

 

  • 恋のライバル視点に立つ実験:すでに恋人がいる参加者が、「恋人が第三者から依存型サポートを求められた」状況を想像し、その第三者を「恋のライバル」として認識するかを測定した。

 

また、これらの実験では、仮想シナリオだけでなく、実際に他者とタスクを行う形式も採用されてまして、それなりに現実の世界にも適用できそうな知見を出してくれてるんじゃないかと。

 

結果、依存型サポートには、以下の2つの重要な効果があることがわかったらしい。

 

  1.  「相互依存」のシグナルを発信する:依存型サポートを求める行為は、進化心理学的に見て「私はあなたを信頼している!」「私にはあなたが必要だ!」というメッセージを強く発信する。このメッセージは、特に恋愛初期の段階で、親密さを感じさせるシグナルとして機能する。

    これは、進化論の観点から見ると、人間は「相互依存できる相手」と結びつくことで、生存や繁殖の可能性を高めてきた歴史がある。そのため、依存型サポートを求める行動は、本能的に相手との絆を深める重要な手段になったのだと思われる。


  2. 助ける側が「頼られる喜び」を感じる:もう一つの理由は、助けを提供する側の心理にある。誰かに頼られると、「自分は役立っている!」という自己効力感が高まり、結果的に助けた相手への好意が増す。これは心理学でいう「返報性の原則」にも関連しており、頼られることで、助けた側も「この人には自分が必要だ」と感じ、恋愛感情が芽生えやすくなる。

 

「ビジネスで信頼を得たければ、相手にサポートを頼め!」みたいなアドバイスは昔からあるんだけど、これは恋愛にも通じる感じそうっすね。返報性は人間の心理における基本原理なので、一定の効力があるのが当然かもしれません。

 

では、今回の知見を日常生活でどう活かせるのでしょうか? 実験を見る限りは、以下のようなアプローチが有効かもなーって気がしております。

 

  1.  気になる相手に「お願い」をしてみる:恋愛初期では、相手に小さなお願いをしてみるのがよさげ。たとえば、「この問題が、どうしても分からないから教えてくれない?」ぐらいの頼み事をしてみると、相手に「この人は自分を信頼している」という印象を与えられるはず。

  2.  助けられた後は感謝をしっかり伝える:依存型サポートを受けた後は、感謝の言葉を忘れずに伝えることが大切。その際は「あなたがいなければできなかった!」というニュアンスを含めることで、相手に「頼られている喜び」をさらに感じてもらえるはず。

  3.  恋人との関係ではバランスを意識する:すでに恋愛関係にある場合は、相手を頼りすぎないことも重要になる。適度に依存型サポートを活用しつつ、時には自立型サポートを選ぶことで、お互いの負担を軽減しながら親密さを保つことができると思われる。

 

ってことで、いろいろ書いてきましたが、「依存型サポートを求める」ってのは、恋愛感情を引き寄せる有効な戦略のひとつになりそうっすね。「私はあなたを信頼している!」ってシグナルを送ることの重要性は、恋愛だけでだくあらゆる人間関係に使える知見なので、覚えておくと良いのではないでしょうか。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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