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AIを使いすぎると考える力が落ちる?AIで脳機能を落とさないための簡単なガイドライン



AI面白い!ということで、私ももはやAIなしで生きられない体になりつつあるわけですが、ここで一つの疑問が浮かぶわけです。

 

  • AIばっかり使ってるデメリットってないの?

 

テクノロジーの進化ってのは常にメリデメがあるもんで、たとえば2011年に発表された有名な研究(R)では、「Google効果」って問題が指摘されてたりします。簡単に言えば、Googleでよく検索しまくる人は、そこで得た情報を長く記憶しづらいよーって話でして、どうもGoogleの登場は私たちの記憶力によからぬ影響を与えている可能性があるんですな。

 

この現象は、最近では「デジタル健忘症」などと呼ばれてまして、検索した情報は記憶できないのに、「どうやって検索するか」ばっかり覚えているような状況は誰にも身に覚えがありましょう。私もそうです。

 

となれば、AIがさらに強力な「思考の下請け」になってる近年では、脳になんらかの影響が出てもおかしくないんじゃないかって予想も立つわけです。「使われないものは衰える」は、基本的な原理ですからね。

 

 

ってことで、スイス・ビジネススクールのマイケル・ゲーリッヒ教授が、面白い研究(R)を行っておりました。ここではイギリスで666人の男女を集め、みんなAIの使用頻度を調べて、これをクリティカル・シンキングの能力と比較したんだそうな。

 

クリティカル・シンキングってのは、「目標に向かって合理的に考えられるか?」みたいなスキルのことで、「この問題の前提ってなに?」とか「みんな正しいと言ってるけど本当?」といったように批判的に物事を見る能力を意味しております。近年では「トラブル知らずの人生を送るために必要な能力では?」みたいに言われてまして、数ある能力の中でも、かなり重要性を指摘するデータが増えてきた印象ですね。自分のクリティカル・シンキングレベルがどれぐらいか判断してみたい方は、「あなたの「クリティカル・シンキング」レベルを計る7つのチェック項目」をチェックしてみてください。

 

で、AI使用とクリティカル・シンキングにどんな関係があったかと言いますと、

 

  • AIをよく使っている人ほど、情報をちゃんと精査せずに受け入れる傾向がある
  • AIを活用して時間を節約しても、その時間は思考に使われるわけではなく、NetflixやSNSなどの娯楽に費やされることが多い
  • AIの利便性によって、問題解決能力が徐々に衰える

 

みたいになってます。要するに、「AIを使えば使うほど、人は考えなくなる!」って話ですな。ユヴァル・ノア・ハラリ先生も、「AIの普及によって社会全体が思考停止に陥る可能性がある」とか言ってた気がしますが、そんなに根拠ゼロな予測でもないかもっすね。

 

まぁ、これはある意味で当然でしょう。例えば、筋トレをやめると筋肉が落ちるのと同じように、思考を外注しすぎしたらクリティカル・シンキングも衰えるでしょうからね。うーん、怖い。

 

とはいえ、ここから「AIで人間はバカになる!」って結論するのは極端な話でして、ゲーリッヒ博士は「AIの正しい使い方次第で、クリティカル・シンキングを強化できるんじゃない?」と推測しておられます。そのためにどうすりゃ良いのかってことですが、結論としては、過去のSNS研究などと似たような感じになってます。ざっくり言うと、

 

  • AIを受け身で使わない!

 

みたいになります。過去にも「SNSはアクティブな使い方が大事!」って話がありましたけど、これと同じっすね。

 

残念ながら、研究ではAIをどのように使うべきかの指針までは示されてないものの、おそらく以下のような使い方をすればいいんだろうなーと愚考しております。

 

  1. AIとの対話を増やしてみる:「この意見に反論してみて」と指示を出したり、「なぜそう考えるのか?」とAIに問い続けたり、「この企画書の論理的な矛盾を教えて」みたいな感じで「自分の思考の甘い部分」を明確にしたり、「この文章に矛盾がないか教えて」ってプロンプトを使って自分の論理的な欠陥をチェックしたりと、AIの回答を踏まえて自分なりの結論を導くような感じで使う。

  2. AIをリサーチツールではなく、思考補助ツールとして活用する:「このアイデアに対する別の視点を教えて」「この意見に対して反対の立場を取るとしたら、どんな主張ができる?」「この問題を分解すると、どんな要素に分けられる?」「もし制約がなかったら、どんな最適な解決策が考えられる?」と頼んだりして、AIを単なる回答マシンとして使うのではなく「自分のアイデアを整理する手段」として使う。

  3. アウトプットの質を自分でチェックする:AIの回答をそのままうのみにせず、自分でファクトチェックする。

 

ここらへんを守っておけば、とりあえずAIを使いながらクリティカル・シンキングを維持できるんじゃないかと。特に思考の補助ツールとして使うのはめっちゃ大事でしょうな。心がけねば……。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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