「ぼーっとする力」で目標を達成しやすくなる?―マインドワンダリングと自制心の科学
「つい他のことを考えてしまう」瞬間は誰にでもあるもの。たとえば、仕事中に「夕飯どうしようかな」と考えたり、通勤中に「数年後のキャリアはどうなっているんだろう」と急に未来を思い描きはじめたりといった状況っすね。先行研究によれば、私たちは日中の約50%もの時間を「ぼーっと」過ごしていることが分かってまして(R)、「この時間をもっと有意義なことに使えていたら!」みたいに思う人も多いんじゃないでしょうか。
ただし、最新の研究(R)では、この「ぼーっとする力」(科学的には「マインドワンダリング」と呼ばれる現象)が、長期的な目標を達成するのに役立ってるんじゃないかって結論を出してて面白かったです。
こいつは94名の男女を対象にした試験で、みんなに「今すぐもらえる小さな報酬」か「後でもらえる大きな報酬」のどちらかを選ぶタスクを実施。同時に、被験者がどのくらい「タスクと無関係な思考」にふけっていたかを測定したんですよ。要するに、簡単な作業をやっている間に、被験者がどれほど「ぼーっとしていたか」を評価してもらったわけですな。
そこで何がわかったかと言いますと、
- 注意を要しないタスク中に「ぼーっとしている時間」が長かった人ほど、「大きな報酬を後で受け取る」選択をする傾向があった!
みたいな感じです。つまり、「ぼーっとした状態」ってのは単に「集中力がない状態」ではなく、将来を見すえて合理的に物事を決める力をブーストしている可能性があるってことですな。
では、なんで「ぼーっとする時間」が長期の意思決定に役立つのかと言いますと、おそらく以下のようなことが言えるんじゃないでしょうか。
- ぼーっとしてる間は未来を計画する力を使う:ぼーっとしている間、私たちの思考は過去の出来事や未来の目標に向かうことが多い。これは「自伝的計画(autobiographical planning)」と呼ばれる脳の機能で、たとえ、「来月の出費を抑えるためには何を削るべきかなぁ……」といった未来志向の思考が、無意識のうちに行われる。ぼーっとした状態は、この「未来を計画する力」を刺激するため、私たちは目の前の誘惑よりも長期的な利益を優先する意思決定ができるようになる。
- ぼーっとした状態は目標を明確にしてくれる:ぼーっとした状態の脳は、単に「考え事をしている」だけではない。過去の研究では、ぼーっとした状態が創造性の向上や記憶の整理を進めてくれることが示されている。これにより、「自分が本当に望んでいること」が明確になり、目標達成への道筋を自然と作る力が育まれるのだと思われる。
- ぼーっとした状態はストレスを減らす:現実のタスクから一時的に離れることで、ストレスやプレッシャーが軽減される。その結果、冷静に「大きな目標」を考える余裕が生まれる。
ってことで、ぼーっとした状態ってのは、集中状態では活性化しない脳のシステムを刺激するため、そのおかげで長期的な意思決定をうながすメリットが得られるってことですな。つまり、ぼーっとした状態ってのは時間の無駄ではなく、長期のゴール達成に役立つ貴重な時間だってことなんでしょうな。
ただし、そうは言っても、すべてのぼーっとした状態が有益なわけじゃないので、その点はご注意くださいませ。研究によれば、以下のような条件下では、ぼーっとした状態が逆効果になる可能性もあるんですよ。
- 集中力が求められるタスク中の「ぼーっとした状態」:たとえば、試験中や重要な会議中にぼーっとしてしまうと、明らかにパフォーマンスが低下する。
- 注意散漫が過剰になる状態:過剰なマインドワンダリングは、注意力を維持する能力を損なう可能性がある。特に、ADHDや慢性的なストレスを抱える人は、これに悩まされることが多いと思われる。
ここらへんに注意しつつ、日常生活で「良いぼーっと時間」を導入するには、
- 散歩や軽い運動中にぼーっとして、歩きながら意識的に頭を空っぽにしてみる。このとき、未来の目標や計画について漠然と考えるのがコツ。
- 家事や通勤中など、単調な作業をしているときこそ、自分の目標や理想の未来について考える時間を意識的に作る。
- スマホやPCは「ぼーっとした状態」の大敵なので、一日のうちに少しだけデジタル機器から離れる時間を確保することで「ぼーっとする時間」を確保する。
といったあたりを意識するしかないでしょうなぁ。これは私もよく意識していて、寝る前の1時間とかはだいたいひたすらぼーっとしてますな。一見、無駄に思える時間でも、適切に活用することで自己コントロール力や長期的な目標達成力を高められるんで、うまくご利用くださいませー。