今週の小ネタ:男、歳を取るほど孤独になる問題、「ニュースは向こうからやってくる感」でダマされやすくなる、「炎症」で「セックスの満足度」が高まる
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
男、歳を取るほど孤独になる問題
「年齢を重ねるとともに人間関係が減っていく」って話をよく耳にしますな。歳を取るほど友人や知人が減っていき、晩年は特定の人としか付き合わなくなっていくみたいなんですよね。
近ごろハーバード大学などが発表した研究(R)も似たような結論を出してて、男性が「心の支え」とする人の数は30歳から90歳までの間に50%も減少するって結論になっておりました。
この研究は、1939年から1942年にハーバードの学生だった235人の男性を対象に行ったもの。その後の71年間にわたって定期的に「誰に感情的サポートを求めているか?」を尋ねて、人的ネットワークの変化をチェックしたらしい。その結果、どんな変化が明らかになったかと言いますと、
- 30歳の時点では、感情的なサポートを提供してくれる人の数は平均2人だった。
- 90歳になると、その数は平均1人に減少した。
って感じでして、参加者は30代から90代にかけて、サポートネットワークが50%も減ってたわけですな。この現象は全員に共通したもので、特定の人だけが年齢とともに孤立するわけではなく、加齢による自然な変化みたいなんですよね。
これには、いくつかの原因が考えられまして、おそらく以下のポイントがあるんでしょうな。
- 配偶者への依存:調査によれば、結婚している時期ほど、感情的サポートネットワークが小さくなる傾向が見られた。これは、配偶者に感情的なサポート役を集中させるためだと思われる。結婚によって他者とのつながりが減り、結果的に「サポートの一本化」が進むのかもしれない。
- 退職は意外と影響しない:「退職」はネットワークの規模にほとんど影響を与えないという結果も出ている。「仕事の人間関係が減ったら孤立しちゃうのでは?」と考えがちなんだけど、感情的なつながりってのは、仕事仲間ではなく家族や親しい友人がメインの軸になってるのだと思われる。
「結婚で付き合いが減る→妻への依存が高まる→妻に去られてメンタルが死ぬ」ってのは確かによく聞く現象でして、上記のようなメカニズムはありそうですな。
また、この研究では、「幼少期の家庭環境」が感情的サポートネットワークの規模に影響しているって知見も出てまして、
- 親からの温かいサポートを受けて育った人は、成人後もより大きなネットワークを持つ傾向が強い。
- 幼少期の経済状況(親の収入や学歴)は、ネットワークの規模に影響しない。
つまり、お金よりも親子関係の質がその後の人間関係を大きく左右するんじゃないかってことで、これも示唆的ですなぁ。
ということで、この研究から教訓を得るならば、「オッサンは意識して人とのつがなりを広げないと死ぬぜ!」って感じでしょうな。年齢を重ねるほど他者とのつながりが減るのは避けられないので、歳を取るほど趣味やボランティア活動を通じて新しい人間関係を築くようにするしかないんでしょう。私のような内向人間にはめんどい話ですが。
「ニュースは向こうからやってくる感」でダマされやすくなる
「ニュースは自然にやってくる」って感覚がある人ほどダマされやすくなるぞ!って話(R)が出ておりました。
「ニュースは自然にやってくるって感覚」と言われてもピンときづらいかもですが、これは現代人によくある感覚のあり方なんだそうな。どういうことかと言いますと、
- SNSのアルゴリズムが進化したことで、私たちの「いいね」やシェアした情報が分析され、それに基づいて興味がありそうなコンテンツを次々と届けてくれるようになった。
- そんな風に情報を得ているうちに「自分で情報を探さなくても、必要なニュースは自然に流れてくるものだ!」って感覚が生まれるようになった。
みたいな感じです。友達やフォローしている人たちが重要な情報をシェアしてくれるので、「自分から積極的にニュースを探しに行く必要はないのだ!必要な情報は自動的に得られるのだ!」って感覚が出てくるって話ですな。これを、上掲の研究チームは「News-Finds-Me Perception(ニュースは向こうからやってくる感)」と呼んでおります。
まぁ「ニュースがやってくる感」があっても問題さえ起こさなければほっとけば良いんだけど、実はこの考え方には思わぬ落とし穴があるんだってのが今回の研究の結論だったりします。これはシラキュース大学などが行った研究で、結論から言うと、
- 「ニュースは向こうからやってくる感」が強い考える人ほどフェイクニュースに引っかかりやすく、さらにそれを拡散してしまう可能性が高い!
みたいになります。この研究は1,014名のアメリカ人を対象にしたもので、「ニュースは自分から探さなくても見つかる」と感じている人たちが、実際にフェイクニュースを信じやすいかどうかを調べたんですよ。その主な結果がどのようなものだったかと言いますと、
- 「ニュースは向こうからやってくる感」と考える人は全体の55.2%。特にSNSの利用が多い若年層で、この傾向が強く見られた。
- この感覚がある人は、SNS上のフェイクニュースを本物と信じ込みやすく、さらにそれをシェアする可能性が高かった。
- 「私は他人よりもフェイクニュースに引っかからない」と信じている人の約40%は、実際には平均以下の正確性しか持ち合わせていなかった。
みたいになります。「ニュースは向こうからやってくる感」でフェイクニュースに弱くなる理由として、研究は以下の2点を挙げております。
- 知識の錯覚を生む:SNSで断片的な情報を目にするだけで、「自分は情報通だぜ!」って錯覚が生まれる。この「錯覚の自信」が正確な情報を見極める力を損なわせる可能性がある。
- 繰り返しの効果:SNSのアルゴリズムは、似たような考えを持つ人たちの投稿を優先して表示するため、偏った情報が繰り返し表示される。これが過剰な自信を生み、フェイクニュースをさらに信じやすくしてしまう。
ってことで、どちらも非常に納得の理由な感じがしますね。そう考えますと、ニュースってのは「自分で積極的に取りに行くぞ!」って感覚が必要なんでしょうなぁ。
「炎症」で「セックスの満足度」が高まる
「炎症」と「セックスの満足度」が関係しているぞ!ってデータ(R)が出てておもしろかったです。「炎症」ってのはケガや感染症、ストレス時に体が発するSOSサインとして知られてますが、これがパートナーとの性的満足度に関わるって話なんですな。
この研究は、ノースカロライナ大学などが行ったもので、18歳から55歳までの158人の男女(うち84%が女性)を調べたもの。みんなのCRP(体内の炎症レベルを測るための一般的な指標)を検査し、同時に恋愛関係で「パートナーとのつながりを深めたい」という動機が高いかどうかをアンケートで評価し、さらに過去1カ月間での性的満足度やオーガズムの頻度を、オンラインと対面アンケートでチェックしたらしい。
結果、どんな結果が出たのかと言いますと、
- 炎症レベル(CRP)と性的満足度やオーガズムの頻度との間に有意な関連は見られなかった。
- しかし、「パートナーとのつながりを深めたい」という動機が強い人に限定すると、次のような結果が現れた。
- 炎症レベルが高いほど、性的満足度が高い。
- 炎症レベルが高いほど、オーガズムの頻度が多い。
だったそうな。つまり、「パートナーとのつながりを重視する人」に限り、炎症が性的な充実感とポジティブに関連していたわけですな。炎症といえば体に異変が起きているサインですから、これによって性的な満足度が高まるってのはなんか不思議なもんですな。
この結果には、いくつかの仮説が考えられまして、
- 「炎症=親密さを求めるサイン」説:炎症が高まると、脳が「体がストレス状態にある!」と認識する。そのせいで、人は安心感を得るために、親しいパートナーとのつながりを強く求めるようになる。特に「関係性を深めたい」という動機が強い人にとって、性的な行為がパートナーシップを強化する手段として機能しているのかもしれない。
- 「性行為=ストレス緩和」説:性行為そのものがストレスを緩和し、結果的に体の炎症レベルをコントロールしている可能性も考えられる。これがポジティブなフィードバックループとなり、満足感が高まるのかもしれない。
みたいになります。すべての人に当てはまるわけじゃないでしょうが、「危機感を持った生体は性に走る」ってのは理解できますな。