このブログを検索




クレアチンでがんリスクが下がる?高齢者ほど肉を食え?最新研究と食生活のポイント

 

「肉を食べるとガンになる!」という話は昔からあって、かつては世界保健機関から「肉は発がんリスクを上げるよ!」なんて宣言が出たことがありました。とくに赤身肉や加工肉については、国際がん研究機関(IARC)でも「発がんの可能性あり」に分類されていて、ちょっとドキッとさせられるわけです。

 

が、その一方で、新しい研究(R)は、「肉でむしろガンのリスクが下がる!(かも)」という、ちょっと意外なデータが出てきてまして、個人的に楽しい内容でした。

 

 

ざっくり言うと、クレアチンを多くとっている人はガンが少ない

この研究は、平均年齢50歳の男女25,879人を対象にした横断調査になってまして、そのうちガンの診断を受けたことがある人は2,715人(10.5%)だったとのこと。研究では、2日分の食事調査から、参加者の「肉・魚・貝類」摂取量をベースに「いつもどれぐらいクレアチンを摂取してるか?」ってのを推定したらしい。クレアチンは動物性食品にしかほとんど含まれていないので、食事の内容を見れば、超ざっくりと摂取量を推測できるんですよ。

 

そのうえで、みんながガンにかかった率を比べたところ、1日あたりのクレアチン摂取量が最も高かったグループ(0.24g/日)は、最も低かったグループ(0.03g/日)に比べて、ガンの診断率が16%も低かったらしい。これはなかなか「すごい!」と言える違いじゃないでしょうか。

 

なんで、この研究でクレアチンに注目したのかと言いますと、私のように50歳ぐらいになってくると、たいていの人は、

 

  • クレアチンやタンパク質の摂取量が少なくなる
  • そのせいで筋肉量が減少している(サルコペニア)
  • 運動量も少なくなり、さらに筋肉量が減る

 

みたいな変化が起きるので、これらの要因が重なって全身の回復力が落ちがちになるんですよ。その点で、クレアチンが筋肉量のアップに効くのは間違いないところなんで、こうした筋肉の維持や炎症の抑制が、間接的にガンのリスクを下げてくれる可能性は十分にあるんですよ。つまり、「肉を食べる→クレアチンが多い→筋肉が増える→体の回復力が上がる→ガン予防になる!」みたいな流れっすね。

 

 

「肉でガン」説との矛盾? 実はそうでもない

こう聞くと、「え、肉ってガンのリスクを高めるんじゃなかったの?」と思う方もいらっしゃるでしょう。たしかに、赤身肉や加工肉の過剰摂取は大腸がんリスクとの関連が指摘されてるんですが、研究の分析を細かく見ると、こんな感じの整理ができそうであります。

 

  • 赤身肉・加工肉 → ガンリスクが上がる

  • 魚や鶏肉 → ガンとの関連性は薄い or なし

  • クレアチン → むしろガンリスクが下がる

 

つまり、たんに「肉」ってくくりで見ると雑すぎて、その中に含まれる成分や種類でリスクの方向性が変わってくるわけっすね。クレアチンは魚や鶏肉にも含まれるため、必ずしもリスクが高い食材に偏っているわけではないんですよね。

 

ただし、この研究では、「クレアチンとガンの関係」は51歳以上のグループにしか見られなかったので、そこは押さえておきましょう。50歳以下のグループでは、効果があるかもしれないんだけど、有意な関連が見られなかったんですよ。

 

これには、いろんな原因が考えられまして、

 

  • 高齢者は筋肉量やクレアチンの摂取量が少ない傾向がある
  • そのせいでクレアチンの効果が出やすい
  • 結果として、免疫力や抗炎症力が維持され、ガンのリスクが下がる

 

みたいな感じなんでしょうな。こうなると、私などはさらに意識してクレアチンを摂取していかねばならんのでしょうな。

 

 

とはいえ、まだ仮説の段階ではある

とはいえ、この研究は、いわゆる横断研究(ある時点のデータを切り取っただけ)なので、「クレアチンをとるとガンが減る!」と断言できるわけじゃございません。たまたまクレアチンを多くとっていた人たちが、他にも健康的な生活をしていただけって可能性もありますんで。

 

また、この研究では1日のクレアチン摂取量が割と少なめで、最大でも0.24gぐらいだけなのも注意っすね。サプリだと1日3〜5gぐらいは摂取するのが普通なんで、「クレアチンそのものの効果」よりも、魚や肉に含まれる他の成分の影響が出ている可能性もありましょう(ビタミンD、オメガ3、鉄、亜鉛、B12とか)。

 

ってことで、この研究をもとに「ガン予防のためにクレアチンをサプリでがぶ飲みだ!」と結論づけるのは、まだ早い感じではあります。ただし、今回の研究でチェックされた、

 

  • 「健康的な動物性タンパク質の摂取が、がんリスクにどう影響するのか?」

 

ってポイントは、いままであまり注目されてこなかったとこなんで、「ガン予防のために良質なタンパク質を!」ってのは、ある程度は確度が高いアドバイスなのかもですね。

 

特に50歳以上の方にとっては、

 

  • 鶏肉や魚などの質の良いタンパク質源をしっかりとる
  • 筋肉を維持するために適度な運動とクレアチンのサプリを使う

 

といったアプローチが有効ではないかと思われるわけです。ちなみに、おすすめのクレアチンについては、パレオチャンネルのほうで紹介してますんで気になる方はどうぞ。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM