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ネイビーシールズ直伝!不安とプレッシャーに強くなる“3つの思考スキル”を教えてくれる本を読んだ話

  
 

不確実性の達人(Masters of Uncertainty)』って本を読みました。

 

著者のリッチ・ディヴァニー先生は、21年間にわたってネイビーシールズの一員として世界各地で作戦を遂行した上に、SEAL兵士のメンタルを鍛えるための「マインド・ジム」を立ち上げたりした凄い人らしい。

 

もちろん本書も「ネイビーシールズは、メンタルを鍛えるために何をやっているのか?」にフォーカスした内容になってまして、戦場の極度のストレスでも力を発揮できる人と、プレッシャーに押しつぶされてしまう人の違いはどこにあるのか?ってあたりを、具体的なトレーニング法と共に教えてくれてて勉強になりました。

 

ってことで、いつもどおり本書から勉強になったポイントをまとめてみましょうー。

 

  • 2011年の「ビンラディン捕縛・殺害作戦」は、まったく計画どおりに進まず、ヘリの墜落、計画のズレ、想定外の事態が次々に発生した。が、それでもネイビーシールズが成功を収めたのは、完璧な計画があったからではなく、「カオスの中でどう動けるか」を知っていたからだと言える。

 

  • 人生に「完璧な状態」は存在しないため、不確実性は番狂わせではなく、「ゲームのルール」なのだと言える。重要なのは「最適なパフォーマンス」を発揮する力で、これはつまりその瞬間のベストを尽くす力だと表現できる。

    高いパフォーマンスを発揮する人は、スーパーパワーを持っているわけではなく、彼らは「混沌の中でも力を発揮するシステム」を持っているのだと言える。

 

  • このシステムの第1ステップは「視野を動かす(Move Horizons)」。つまり、「今、自分にわかっていること」「自分がコントロールできること」を確認することである。例えば、約204kgからウルトラランナーになったある選手は、初日は靴を買い、翌日はそれを履き、そしてポストからポストへ、街角から街角へ走る距離を伸ばし、ついにはフルマラソンを走破するまでになった。

    これは、ネイビーシールズが不確実性の中で冷静さを保ち、状況をコントロールするために使っているアプローチとまったく同じである。つまり、全体のミッションではなく、目の前の小さな目標に集中することであり、「一歩進む」「一つの目標を達成する」「小さな勝利を積み重ねる」といったやり方で得られる「明確さ」と「コントロール感」が、混乱を乗り越える鍵になっていく。

    このとき、「その作業の所要時間(Duration)・進む道筋(Pathway)・達成後の結果(Outcome)」=DPOを定義すると、より自信と推進力が高まり、ストレスは「行動の原動力」に変わる。

 

  • 次のステップは「進み続ける(Keep Going)」、脳のドーパミン系を刺激する目標設定を行うことを意味する。モチベーションは、単なる「やる気」ではなく、適切に設計されたゴール──チャレンジングだが達成可能な目標──によって脳内でドーパミンが分泌され、行動が継続される。

    逆に目標が大きすぎると、脳は「ムリだ」と判断してドーパミンが出ないし、簡単すぎれば達成しても満足感が得られない。ネイビーシールズの訓練「ヘルウィーク」に耐え抜く者たちは、「根性」で乗り切っているわけではなく、「次の訓練まで」「次の食事まで」「あと10分だけ」という「小さく勝てる区切り」に分解することで、ひとつひとつの成功がドーパミンを呼び起こし、粘り強さを生む。

    最終的な目標にばかり注目していると、心が疲れ果て、やる気も削がれていくため、ネイビーシールズは、常に「次にやるべきこと」に意識を向ける。この考え方は、私たちの生活でも応用可能であり、遠すぎる目標は、「できっこない」と感じさせてしまう。

 

  • そして最後は「冷静を保つ(Stay Cool)」で、ストレス反応を調整して集中力を保つ技術を意味する。これら3つのステップは、すべて人間の神経系に根ざした「訓練可能な技術」である。

    ここで問題になるのは、私たちは、意識していなくても、常に心の中で問いを立てている点であり、その質問が不安や疑念のスパイラルを引き起こす場合があることである。ネイビーシールズは、そうした問いに飲まれている余裕は無いため、彼らは訓練でこう自問するようにしている。

    「いま、何がわかっている?」
    「自分にコントロールできることは何か?」

    こうした即座に行動できる「事実」に意識を向けることで、恐れが判断を乗っ取るのを防ぐのが基本となる。これは戦場に限らず、日常生活でも有効な戦略であり、生産的な問いかけをすることで、不確実性に「麻痺」させられずに済む。

 

  •  定されたリーダーシップでは対応しきれないため、ネイビーシールズは、「ダイナミック・サボーディネーション(Dynamic Subordination)」という原則でチームを動かそうとする。これは、

    1.状況や課題に応じて、もっとも適した専門性を持つ人が一時的にリーダーシップを担う
    2.他のメンバーは、その都度サポートに回る

    という仕組みであり、伝統的なヒエラルキー型(上下関係で役割を固定)でも、リーダー不在型のフラット構造でもなく、「瞬間ごとの最適なリーダーシップ」が自然に生まれる仕組みであり、これによってチームは機動力と信頼を維持しながら前進するようにしている。

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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