行動経済学で定番の先延ばし克服テク「誘引バンドル」を正しく使う3ステップ
心理学の世界には、昔から「誘引バンドル」っていう有名な目標達成テクニックがあるんですよ。ざっくり言えば「大好きなもの」と「嫌だけどやらなきゃいけないこと」を組み合わせる手法であります。
「誘引バンドル」で週5のジム通いに成功
具体的には、たとえばチョコが死ぬほど好きだけど原稿は書きたくない場合、あらかじめ「ジムに行ったあとだけチョコを食べられる」といったオリジナルルールを設定しておくだけ。当ブログで何度か紹介している「イフゼンプランニング」に近い手法でして、シンプルながらそれなりの効果が実証されているっぽい。
ペンシルベニア大学のキャサリン・ミルクマン教授によれば、このテクニックを使って実際に「運動嫌い」を克服したとのこと(1)。「ジムに行ったときしかハンガー・ゲームのオーディオブックを聞いてはいけない」ってルールを決めたら、自然と週5回のペースでジムに行くようになったとか。ほほえましいエピソードっすね。
「誘引バンドル」の効果を上げるには物理的な縛りが必要
というわけで、なかなか使い勝手の良さそうな方法ではありますが、シンプルなだけに注意点も多い模様。そのあたりをミルクマン教授が実験で確認してくれております(1)。
実験の参加者は226名の学生で、全員を以下の3グループにわけたんですね。
- ジムに面白いオーディオブックを詰め込んだiPodを置いておき、ジムに行ったときだけ聞ける
- 「ジムに行ったときだけオーディオブックを聞いてください」と指示する
- 商品券をあげて、「もっとジムに行ってください」と指示する
その結果は、予想どおりグループ1の圧勝。具体的な数字で言うと、
- グループ1はグループ2よりも29%も多くジムに行った
- グループ1はグループ3よりも51%も多くジムに行った
といった結果だったらしい。単純に「好きなことを嫌いなこと」を組み合わせるだけでも効果はあるものの、物理的な縛りをつけると22%も効果が上がるわけですね。
結局は友人に罰を頼んでおくのがベスト
とはいえ自分ひとりで物理的な縛りを設けたところで、最終的にはズルをしたくなるのが人間というもの。そこで教授がおすすめしてるのが、信頼できる友人に罰をお願いする方法であります。
たとえば、
- もしジムに行かなかったらオーディオブックを消すように友人に頼んでおく
- タバコを吸ったら友人に1万円を支払う
- 原稿が終わらなかったら、友人にチョコをゴミ箱に捨ててもらう
といった取り決めをしておくわけですね。「ヤル気の科学」で有名なイアン・エアーズ教授が設立した「sticKK.com」と同じ発想ですね(sticKK.comでは「減量に失敗したら1万円罰金」といった設定を自動化できる)。
これまたシンプルな解決策ながら行動経済学の世界では何度も効果が証明されてまして、試してみる価値は十分にあるのではないかと思います。
まとめ
そんなわけで「誘引バンドル」を正しく使うには、
- 「超好きなもの」と「嫌だけどやらなきゃならないもの」をピックアップ
- 「嫌だけどやらなきゃならないもの」をやったときだけ「超好きなもの」が手に入るようにルール設定
- もし「嫌だけどやらなきゃならないもの」ができなかったときは「超好きなもの」を捨てるよう友だちに頼む
といった手順でどうぞ。個人的には、近ごろサボり気味な英語の勉強用に使ってみようかと。