ネガティブ思考で成功するための「防衛的ペシミスト」活用法
仕事の関係で「ネガティブだからうまくいく」を読み返したりしてました。著者のノレム博士は「ネガティブ思考こそが成功の秘訣!」って説を、ちゃんと実験で証明したエラい人。もう十数年前の本ですが、わたしのようにポジティブシンキングが苦手な方には最適ではないかと。
ノレム博士は、成功しやすい人間のキャラを大きく2つに分けております。
- 防衛的ペシミスト(DP):いままで成功しても、次は失敗するかも、と考えるタイプ。不安のせいで人より事前の準備に力を注ぐため成功率が高まる
- 戦略的オプティミスト(SO):いままで成功したんだから、次も大丈夫でしょ! と考えるタイプ。失敗を恐れずにトライアル・アンド・エラーをくり返すので成功率が高まる
これはどっちが良いって話ではなく、あくまで生まれつき備わった性質の問題。まったく真逆のキャラですが、どちらも同じぐらい社会で成功しやすいことがわかっているんですね。
ここで大事なのは、ちゃんと自分のキャラを理解して、身の丈に合った戦略を使うこと。生まれつきDPの人は、いくらポジティブに考えても無駄などころか、場合によっては逆効果になっちゃうようなんですな。
DPは本番前にリラックスしてはいけない
有名なのは1993年の実験(1)で、参加者を2つのグループに分けたんですね。
- 認知テストを行う前に、具体的なテストの内容や結果をリストアップする
- 認知テストを行う前に、テストから気がそれるような楽しい活動をする(ゲームとか)
すると、DPとSOのあいだで大きな違いが出たんですよ。
- DPの参加者:
- テスト前に気をそらすと成績が低下
- テスト内容について事前に考えると成績が上昇
- SOの参加者
- テスト前に気をそらすと成績が上昇
- テスト内容について事前に考えると成績が低下
まったく逆の結果になっております。どうやらDPの人は、本番の前にリラックスすると逆に不安が高まり、パフォーマンスが悪くなっちゃうらしい。わたしも準備に時間を使ったほうが落ち着くタイプなんで、非常に納得の結果であります。
DPは本番前にポジティブに考えてもいけない
さらに1996年の実験(2)では、参加者を以下の2グループにわけてダーツをしてもらったんですね。
- コーピングイマジナリー:ダーツを投げたらどんなミスをするか?もしミスをしたらどう挽回するか?までを事前に想像する。
- マスタリーイマジナリー:完璧にダーツを投げている姿を想像する。いわゆる一般的なイメトレ。
その結果はご想像のとおりで、
- DPの参加者:
- コーピングイマジナリーでダーツの成績が上昇
- マスタリーイマジナリーでダーツの成績が低下
- SOの参加者
- コーピングイマジナリーでダーツの成績が低下
- マスタリーイマジナリーでダーツの成績が上昇
みたいな感じ。とにかくDPの人は、ポジティブな想像をするとモチベーションが下がり、本番にも弱くなってしまうみたい。
DPを上手く活かすには?
そんなわけで、どうやらDPの人はポジティブシンキングを使わないほうがよさげ。過去には「アジア人にはポジティブシンキングが効かない」って話がありましたが、これもアジア系には不安症の遺伝子が多いからなのかもですな。
とはいえ、DPの良さは「不安を行動に活かす」ところにあるんで、そこを間違えると大失敗につながる可能性もあり得ます。具体的には、
- 問題は具体的に考える:目の前の問題を明確にしない限り、不安は上手く働いてくれないんですな。たとえば、ボンヤリと「スピーチに失敗したらどうしよう…」と考えていると、DPの人は不安だけが増して本番はメチャクチャになりがち。「データが飛んだときのためにバックアップを持っていこう…」ぐらい明確に考えるのが吉。
- セルフハンディキャッピングの罠に注意:セルフハンディキャッピングは、あらかじめ失敗の言い訳を作っておく行為のこと。たとえばテストの前にあえて夜ふかしをして、「やっぱ寝てないから頭が働かなかったよー」と言ってみたりとか。意外とDPの人がハマりがちな罠であります。
- 先延ばしの罠にも注意:DPの人は不安が大きいのでダラダラと先延ばしをしがち。この問題を克服するには、やはり問題を明確にするのがベストで、タスクの細部に意識を向けるほど先延ばしが減ることがわかっております。
といったところ。不安はDPの大きな武器ですが、使い方を誤ると単にネガティブなだけの人になっちゃうんでご注意ください。まあ自分がそうなんですが。
いずれにせよ、まずは自分のキャラがDPかSOかを判断したうえで、長所を活かせる戦略を選んでいくのが吉。DPが下手にポジティブに手を出すとエラい目にあいますんで。