ニセの薬でも腰痛は治る。本人が「ニセ薬」だと知っていても治る
何の効果もないはずの錠剤を飲み続けたら…
「偽薬で腰痛が改善したよ!」 っていうおもしろい論文(1)が出てたんでメモ。
これは、腰痛に悩む97人の患者さんを対象にした実験で、まずは全員に「プラシーボ効果とはどういうものか?」について15分のレクチャーを行ったんだそうな。ご存じのとおり、ニセの薬を飲んでいるのに、なぜか効果が出ちゃう現象のことですね。
そのうえで、参加者を以下の2グループにわけたらしい。
- 「ニセ薬です」と書かれた錠剤を飲む
- イブプロフェン鎮痛薬を飲む
つまり、プラシーボのグループは、本人が「これはニセの薬だ」とわかったうえで、本来は何の効果もないはずの錠剤を飲み続けたわけですね。
プラシーボとわかっていても痛みが改善!
ところが、投薬を3週間ほど続けてもらったところ、
- プラシーボグループは痛みが30%改善!
- イブプロフェングループは痛みが9%改善!
って結果だったんですな。なぜかニセ薬を飲んだほうが効果がデカいという、謎の結果になっております。
環境のせいで脳がダマされた
研究者いわく、
これは、参加者が治療のプロセスに深く関わったことによる現象だ。参加者たちは、医師やナースから細かい説明を受け、錠剤を飲んだ。これらの行為は、私たちの日常的なヘルスケアシステムを象徴する儀式のようなものだ。
その結果、参加者のカラダは、痛みをやわらげる方向に働いた。
とのこと。「医師からもらった薬を飲んだ」という一連の行為のせいで脳がダマされて、ニセ薬だとわかっていても体が反応したんだ、と。本人が「これは本物の薬だ」と思い込んでいなくても、プラシーボ効果は十分に引き出せるわけですね。
ただ、この説明だと、本物の薬よりプラシーボの効果が上回った理由がわからないんですが、おそらくは、
- 新しいアプローチに対して参加者の期待感が上がったから
- イブプロフェンは定番の薬なので、だいたい効果のレベルもわかっている
といったあたりが大きいのかなーと。やっぱ脳はおもしろいですねー。
環境を整えて脳をダマそう
さらに研究者いわく、
もちろん、プラシーボ効果で腫瘍を取り除いたり、詰まった血管を通すのは不可能だ。プラシーボは万能薬ではない。
しかし、間違いなく患者をよい気分にさせる効果はある。
とのことで、私たち一般人としては、ガンガン脳をダマしていけばいいんじゃないかと思う次第。とにかく「それっぽい環境」さえ整えれば脳はダマせるみたいなんで、「まずは形から入ろう!」みたいなアドバイスもかなり正しいんでしょうな。