「集中力がない!」をメリットに変える「リーキーアテンション」の考え方
注意力が漏れる「リーキーアテンション」
リーキーガットとかリーキーブレインとか、当ブログではよく「リーキー」って言葉が出てまいります。直訳すれば「漏れる」って意味でして、リーキーガットなら腸から毒素が体内に漏れた状態で、リーキーブレインなら脳と体のバリアが破れちゃうような状態。どっちにせよ良い意味では使われないケースが多め。
で、近ごろチェックした論文(1)では、新たに「リーキーアテンション」って言葉が使われていて参考になりました。直訳すれば「注意力漏れ」ですな。
注意の切り替えテストをやってみたら…
これはノースウエスタン大学の実験で、参加者にナヴォン図形を見てもらったんですね。ナヴォン図形ってのは↓こんな感じのやつです。
要するに、小さいSで大きなTを作ったり、小さいAで大きなEを作ったりした図形のことです。
で、参加者には「小さいSに注目してください」とか「今度は大きなTに注意してください」といった指示をあたえて、そのつど意識を切り替えてもらうんですね。その際に、
- 簡単バージョン:小さいTで作られた大きなTとか
- 難しいバージョン:小さいSで作られた大きなTとか
のあいだで、どっちが注意の切り替えに時間がかかるかをみたんですな。
当然、注意力がある人は簡単バージョンだろうが難しいバージョンだろうが、ほぼ同じぐらいの時間で切り替えが可能。いっぽうで注意力がない人は、どうしても「小さいS」に気がいっちゃうんで、簡単バージョンよりも難しいバージョンのほうが切り替えは遅くなるわけです。
なんだかわかりにくい話になってますけど、現実の世界で例えれば、カフェで勉強をしてるときにBGMのラジオもなんとなく聞いてたり、雑誌の記事を読みながらもうっすらと対抗ページの広告にも意識が向かってたりとか、そういった状態と同じです。誰でも体験する現象ですよね。
で、このように「ひとつのことに集中しているときでも、他の無関係な情報が意識に染み込んでくる状態」を、研究チームは「リーキアテンション」と呼んでるわけですね。「心ここにあらず」のような完全に目の前のタスクから注意が逸れた状態ではなく、もうちょいジワッと意識が漏れ出してるようなイメージでしょうか。
注意が漏れる人ほど創造性は高い
というと、「リーキアテンション」は悪いことのように思えるかもですが、この実験では「実は大きなメリットがある」って結論になってるのがおもしろいところ。参加者たちにインタビューをして、全員のアート、ダンス、料理などの体験を聞いてみたところ、
- リーキアテンションな人のほうが創造性が高い!
って傾向がはっきり出たんですよ。無関係な情報から意識をそらすのが苦手な人ほど、現実の正解では何らかのクリエイティブな仕事を残してるケースが多かったんだそうな。
これは、過去のデータに照らせばわりと納得の結果でして、たとえば「創造性が高い人には変人が多い」って研究とよく似ております。
ざっくり言えば、一般的な脳は不要な情報を選り分けるためのフィルターがついてるんだけど、なかにはこのフィルターが機能不全を起こしている人もいるんだ、と。そういう人のなかでは、つねに不要な情報が頭のなかに残り続けるため、結果として新たな情報のつながりが生まれやすいんだって話です。これなんか、まさに「リーキアテンション」の考え方に近いですよね。
まとめ
つまり、この研究から教訓を得るならば、
- アイデア出しが必要な段階 → BGM、ノイズ、視覚的な刺激が多い状態で考えて、意図的にリーキアテンションを起動させる。人通りが多い場所に行くもよし、LINEで会話をしながら考えるもよし
- アイデアを表現する段階 → なんの刺激もない場所にこもって、すべてをシャットアウトしてリーキアテンションを防ぐ
って使い分けになるんでしょうな。実際、私も本を書く前まではボーッと映画とかを見て、いざ書く段階では「Self Control」や耳栓をフル活用ってスタイルに自然と落ち着いてたりします。
まぁいずれにせよ、「いまの自分はリーキーアテンションが必要な段階かどうか?」ってところを意識しながら切り替えてくのがいいんでしょうな。気を抜くと忘れがちなポイントなんで、注意したいところ。