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チェスや音楽を学んで脳力アップ!はどこまで本当なのか

 Chess

 

 将棋で脳力アップ!みたいな現象は起きるのか?

昔から、心理学の世界では「学習の転移」って現象が問題になってきたわけです。

 

 

たとえばフルートの経験がある人はサックスの上達が早かったり、ソフトボールをやってたら野球も上手くなりやすかったりとか、そんな感じ。要するに、あることを学んだら、その後の学習が簡単になる現象を意味しております。

 

 

ただ、ここで問題なのが「転移はどこまで起きるの?」ってとこです。ソフトボール → 野球ぐらの近さなら転移は起こりやすいでしょうが、たとえば「将棋 → 記憶力のアップ」とか「ソロバン → 論理思考の向上」ぐらい遠いものに対しても起こりえる現象なのか、と。これは俗に「遠い転移」と呼ばれていて、本当に存在する現象なのかは、まだ議論が分かれるとこだったんですね。



「遠い転移」の文献を徹底的にレビューした

そんな状況下、新しく出た論文(1)は、「遠い転移はあるのか?問題」についてガッツリ調べくれてていい感じでした。

 

 

これはリバプール大学のレビュー論文で、過去の文献をさらって「学習転移」の存在について調べてくれたんですね。ここで問題になったのは「遠い転移」で、具体的には、

 

  • チェスが上手いと論理力が高まる
  • 音楽を学ぶと認知機能がアップする
  • 脳トレでワーキングメモリが向上する

 

といった説についてチェックしております。

 

 

こういう話が出てきたのは、多くの観察研究により「チェスや楽器が上手い子供は知能テストの成績も良い」って傾向がハッキリ出てるから。ただし、あくまで観察研究の結果なんで、チェスや音楽に頭が良くなる効果があるかと言われると心もとなかったんですな。

 

 

結局、チェスが上手い人はチェスが上手くなるだけだった

が、その後にいくつかのRCTやメタ分析が出まして、かなり確実なところがわかってきたんですよ。その結論をざっくり言っちゃえば、

 

  • 遠い転移は存在しない!

 

って感じです。「英語ができればフランス語も学習しやすい」ぐらいの転移はあるけども、チェスができたとしても合理的な判断力が増すわけじゃないし、音楽ができても流動的な知性が増すわけじゃない、ってことですね。まぁ音楽と脳機能の問題については、以前から言われてたことではありますが。

 

 

ワーキングメモリのトレーニングは効く可能性がある 

ただ、ここにはひとつだけ希望がありまして、

 

  • ワーキングメモリのトレーニングなら、遠い転移が起きるかも!

 

って見解も出てたりします。ワーキングメモリのトレーニングってのは「N-Back課題」みたいな脳トレのことで、メンタルが強くなるなんて方向もあったりとか。ワーキングメモリを鍛えれば、ほかにもいろんなメリットを享受できる可能性はあるみたい。

 

 

もっとも、「N-Back課題」の効果についても「実は長続きしないんじゃない?」って話もありまして、まだ油断はできないところではあります。とりあえず現段階では、N-Back課題も音楽もチェスも「好きならやればOK!」ぐらいの印象でして、「こいつで脳機能を鍛えるぞ!」みたいな下心を持たずに挑んだほうがよさそうっすね。どうぞよしなに。


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