いま注目の心理特性「謙遜」はどこまでメリットがあり、そして後天的に鍛えられるのか?問題
https://yuchrszk.blogspot.com/2019/11/blog-post_11.html
「知的謙遜って大事よねー」みたいな話をよく書いてますが、近ごろ、その名もズバリ「謙遜(Humility)」というタイトルのレビュー(R)が出ておりました。
まずチームの問題意識から紹介すると、
近年では謙遜についての研究が急速に進みつつある。そのため、アップデートされた知識をまとめ、さらなる研究に役立ちそうな疑問を提示する時期だろう。
とのこと。ここ数年、心理学の世界では「謙遜」の重要性がフォーカスされてきたんだけど、そろそろ知見をおさらいしてもいいんじゃないの?って感じですね。
で、ここでいう「謙遜」ってのは、以下の態度を指しております。
- 正確に自分の限界と能力を評価できる能力
- 対人関係において、自己中心的ではなく他者を中心に置くスタンス
とにかく自分の分をわきまえて、他者ファーストなコミュニケーションを志向するのが大事だよーってことですね。
では、まずこのレビューでは「謙遜」のメリットをどう評価しているかと言いますと、
- 親密な人間関係を築くのにとても役立つ
- ポジティブな気分をキープする働きがあり、メンタルヘルスの維持に役立つ
- 逆に怒りや恨みのようなネガティブな感情から身を守る働きもする
といったところで、おもに対人関係と本人のメンタルにおよぼす良い影響が強調されておりました。まぁ「謙遜」の研究って90年代ぐらいからスタートした日の浅いジャンルなので、その効果量はまだよくわからんのですが、とりあえず将来は有望っぽいぞってことで。
続いて、このレビューでは「謙遜」が高い人の特徴なんかもあげられていて、具体的にはこんな感じです。
- ペパーダイン大学の調査によれば、「知的謙遜」の高さはIQとの相関がなかったが、好奇心や心の広さなどと強い相関を示していた
- アメリカの健康な男女を対象にした研究では、謙遜レベルが高い人ほど政治的に極端にならない傾向があった(保守でもリベラルでもない立場に身を置きやすい)
- また、謙遜レベルが高い人は攻撃性が低く、意見を異にする人たちを裁かない傾向も強かった
ってことで謙遜レベルが高い人たちってのは、新しいことや知らないことが大好きで、他人を攻撃せず裁きもしないって傾向があるんだ、と。なんだか分かりますね。
ちなみに、「謙遜レベルってどう計測するの?」と思われた方も多いかもですが、たとえば「多くの場面で、他者は私から学ぶことが多いと思う」とか「他人から反対されると気落ちしてしまう」みたいな文章に賛成するかどうかで判断してます。傲慢な態度を取らないか?とか、批判に弱いか?みたいなところを指標にしてるわけですね。
もっとも、本論でチームが「今後の研究課題だよねー」と言ってるポイントもありまして、
- 果たして「謙遜」は後天的に学べるものなのか?
ってのはまだまだ議論が残るとこではあります。確かに、ちょっと前に取り上げた「「知的謙遜」のレベルを高めるには?」でも、「いまんとこ謙遜レベルを高めるこれといった方法はないけど、定期的に自分の知識を他人に説明してみるのはアリかなー」ぐらいの結論でして、まだよくわからんところではあります。
研究チームいわく、
もっとも厄介な問題のひとつは、もともと心が広くて謙遜を鍛えたいと思うような人ほど、謙遜が必要ないというところだ。もちろん、逆もまたしかりだが。
とのこと。もともと謙遜レベルが高い人ほど「謙遜を養わないと!」と思いがちで、逆に傲慢な人は「謙遜なんか不要でしょ!」と思う傾向があるのだ、と。これは私も気をつけませんと……。
ってことで以上の話をまとめると、
- 「謙遜」研究はまだ日が浅いが、人間関係を養い、ネガティブな感情のバッファーになってくれる可能性がある
- 「謙遜」をトレーニングで鍛えられるのかどうかは未知数。というか、そもそも謙遜が必要な人ほど謙遜を鍛えようとしない問題が大きい
ってとこです。謙遜と好奇心に強い相関があるのを見ると、意識して新しいことをやるように心がければいいのかなーという気もしますが、ここらへんは謎っすね。
いずれにせよ、近年は「謙遜」のパワーに注目が集まってるのは間違いないんで、注目しておくとおもしろいかと存じます。どうぞよしなに。