今週の小ネタ:コスメ&プラ成分の危険性、チーズの抗酸化作用、コリン不足の怖さ
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
コスメやプラスチック成分が子供に危険?
これはマウントサイナイ医科大学などの研究(R)で、「コスメやプラスチックの成分が子供に危険なのでは?」みたいな内容になってます。どんな研究かと言うと、
- 妊娠3ヶ月目の母親718名に血液と尿検査を行い、26種類の化学物質レベルを調べる(内分泌系を乱すと言われているものをチェックした)
- その後7年目にフォローアップを行う
みたいになってます、その結果なにがわかったかと言いますと、
- ビスフェノールF、ビスフェノールA、フタル酸エステルの血中濃度が高い母親の子供はIQが低かった(特に少年に相関が高く、平均で2ポイント低い)
というわけで、なかなか怖い内容になっております。内分泌系は人の代謝や成長をコントロールしてるんで、こいつをBPAなどが乱してるんじゃないのか、と。
もちろんこのデザインでは厳密な因果関係はよくわからんわけですが、いたずらに近づける理由もなさそうではあります。まぁ日本ではBPAなどは厚生省が厳密に規制をかけてますが。
チーズの抗酸化作用は侮れないぞ!
次はペンシルバニア州立大学などの研究(R)で、「チーズが高塩分の食事のダメージをやわらげるかも!」って内容になっております。なんでもチーズにふくまれる抗酸化成分が血管のダメージを守る可能性があるみたいなんですな。
これはランダム化のクロスオーバー試験で、64 ± 2歳の健康な男女11人を対象にしたもの。どんな実験かと言いますと、
- 減塩食のみ
- 乳製品を省いた食事のみ
- 減塩食+たくさんのチーズを食べる食事
- 塩が多い食事+乳製品を省いた食事
の4種類をそれぞれ8日間ずつ実践してもらっております。減塩食は1日の塩が1500mgで、塩が多い食事は1日5500mg、チーズが多い食事は1日170gを食べたんだそうな。
でもって、それぞれの食事ごとに被験者がラボに行き、血管の機能をチェックしたところ、
- 乳製品をとらずに塩が多い食事をした時期は、被験者の血管は硬さを増して機能も低下していた
- が、同じ量の塩を取っていても1日170gのチーズを食べていた時は同じ現象が確認されなかった
だったそうです。まぁかなり小規模な試験なんで、この結果をもって「チーズ食ってりゃ塩辛い食事も問題なし!」とはならないんですが、やはりチーズの抗酸化能力は侮れないかも?と思わせる内容でしたね。
肉や卵を避けすぎてコリン不足にならないようにね!
コリンといえば卵の黄身などにふくまれる大事な要素。脳が満足に働くためには欠かせない成分でして、一部にはコリンをスマドラがわりに使う人たちもいたりとか(もちろん普段の食事でコリンが足りてる人が飲んでも無駄ですが)。
で、新しい論文(R)ではあらためて「コリンは超大事!」ってポイントを強調されていて勉強になりました。
これは過去のコリン研究などを引きつつ「コリン不足はイギリスで深刻な被害をもたらすぞ!」といった主張を展開したもので、主筆のエマ・ダービーシャー博士いわく、
カナダのアルバータで行われたある研究では、妊婦の23%、授乳中の母親の10%しかコリンの推奨摂取量を満たしていなかった。(中略)現在における植物ベースの食事法の隆盛を考えると、これは興味深いとともに心配な現象だ。
とのことで、全体的に「野菜ばっかで肉や卵を食べない食事」の問題を心配する内容になっておりました。確かにコリンは肉や魚に多い成分なんで、野菜が中心すぎると不足が心配されるとこではあります(ブロッコリーやほうれん草にも入っているけど、どうしても量は少ない)。
人体に関するコリンの重要性を考えれば、イギリスで長らくコリンの重要性が見過ごされてきたのには疑問がある。
(中略)
もしコリンが1日の必要量を満たせないようなら、サプリメントを使うのも必要だろう。
ってことで、これはイギリスのケースですが、コリンの研究が遅れているのは日本も同じですんで、気をつけておきたいとこっすね。まぁ普通に肉や卵を食べてればそんなに問題にはならないかもですが。