モノを買うと幸せになれるか?貯金はどこまで人の幸福を左右するか?を調べた観察研究のお話
「お金をどう使えば幸せになれるか?」って問題については過去にも何度か取り上げてきたところ。まだまだ決着のついてない議論ではありますが、新たに「消費量と貯金はどう人間の幸福に影響するか?」って問題を調べたデータ(R)が出てておもしろい感じでした。
これはアリゾナ大学などの研究で、968人の若い男女を集めたうえで、年齢が18〜21歳の時点から調査を始めて、それから3〜5年ほど追っかけた内容になっております。調査方式はオンラインアンケートで、どんなポイントを調べたのかと言いますと、
- モノを買うことにどれぐらいの重みを置いているか?(物質主義かどうかですな)
- どんな経済活動を行っているか?(貯金はちゃんとしてるか?とか)
- エコな消費活動をどれぐらい行っているか?(環境に優しいプロダクトを買ったり、リサイクルを積極的に行ったりとか)
- 人生の満足度、経済的な満足度、心理的なストレスのレベル
みたいな感じです。いずれも7点満点で点数をつけるタイプの質問紙になってまして、主観的な採点を行ってもらったそうな。
でもって、それで何がわかったかと言いますと、
- 物質主義のレベルが高い人ほど、消費を減らそうとはしていなかった(これは当たり前ですな)
- 普段から消費の量が少ない人ほど幸福度が高く、精神的なストレスが少なかった
- 積極的に貯金を行い、自分の収入の範囲で暮らしている人ほど幸福度も高かった
- 積極的にエコロジーグッズ(電力消費が小さい家電とか)を買うタイプの人には、幸福度の上昇が見られなかった
- 「消費を減らして環境に貢献だ!」と考えるエコフレンドリーな人には、幸福度の上昇が見られた
だったそうです。この結果を見る限りでは、「とにかく自分の身の丈にあった分だけお金を使い、基本的にはモノを買わない方が幸せになりやすいよ!」って傾向が見てとれますね。いかにエコな消費だろうが、結局のところ新しいモノを買っちゃうと心理的なストレスは増すのではないか、と(2019/11/09付記:もちろん、これだけだと因果関係はわからんのですが)。
まぁモノを買わないことにはお金が回らないので、この結果を持って「物質主義はやめろ!」とは言いづらいわけですけど、とりあえず近年では「モノより体験にお金を使おう!」みたいな見解が一般的なんで、まずはこちらの方向でお試しいただけるといいかもしれません(ただし「体験の消費と幸福感に相関はない」ってデータもあるので難しいんだけど)。
というわけで最後に、この研究で使われた「物質主義と貯金に関する質問」を翻訳して載せておきます。いずれも7点満点で採点して、「完全に当てはまる」なら7点で、まったく当てはまらないなら0点です。
物質主義をチェックする4問
- 私は自分のためにモノを買うと幸せになれると感じる
- 私はもっと高価なモノを買いたいと思っている
- 自分が望む仕事は高収入な仕事だ
- 新しいモノを買うのが本当に好きだ
貯金をチェックする3問
- 未来のために毎月貯金をしている
- 緊急時のために貯金をしている
- 長期の経済的なゴールに向けて投資をしている
いずれも「何点を取ればOK!」みたいな基準はないんですけど、とりあえず平均値が0.5〜0.67を超えていれば「そこそこ優秀」と言えるんじゃないかと思われます。自分が幸福になれそうな態度を取っているかどうかのチェックにお使いください。