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幸福のために大事なのは総収入ではない!「使い方」なのだ!という研究の話

 

年収で得られる幸福には限界がある!」ってのは有名な事実。これはどんな国でもわりと当てはまる話で、だいたい年収500〜1000万あたりで幸福感の上限が来たりするんですよね。

 

 

まぁビールが本当に美味いのは最初の1杯だけで、あとはそこから得られる喜びが低下していくことを思えば、金の幸福が目減りしていくのも当然の話ではありましょう。幸福の増加が青天井だったら話は楽なんですけどね。

 

 

が、この話でよく言われてきたのは「消費パターンの要素を組み込んでなくない?」ってポイントです。たとえば、同じように年収1000万を稼ぐ人でも、その大半を遊びに使っちゃう人と、その大半を投資にまわす人では、両者の人生の満足度が同じだとは思いづらいですもんね。

 

 

ってことで、新しいデータ(R)は、「年収と消費パターンを組み合わせたうえで人生の満足度を再計算してみたよ!」って話になってていい感じでした。

 

 

これは心理学者と経済学者がタッグで行なった研究で、PSIDというアメリカの大規模な家計調査を使ったもの。このデータは何が良いかというと、

 

  • 国民が何にお金を使ったかをいくつかのカテゴリに分類してまとめている
  • 人生の満足度の変化を時系列で記録している

 

ってあたりです。なので、すべてのデータを処理すると、消費パターンと人間の幸福の変化がわかりやすくなるんですよね。

 

 

最終的に処理されたデータは5660人分で、そのうち7割が男性で平均年齢は46歳。全体の半分は結婚していて、60%が自分の家を持っていたとのことです。

 

 

さて、以上をふまえたうえでどんな結果が出たかと言いますと、

 

  • 人生の満足度は、トータルの収入よりも消費パターンの影響を大きく受けていた

 

  • 特に人生の満足度への影響が大きい変数は「誇示的消費」だった(無駄に高いものを買ったりして、自分の財力を見せびらかすために行う消費)

 

  • 「体験への消費」(車とか服とかの「モノ」に使うのではなく、観劇やスポーツなどの「体験」に使うお金を使うパターン)は、特に人生の満足度とは相関していなかった

 

みたいな話だったそうです。ちょっとややこしいので言い直すと、

 

  • やっぱり人間の幸福に大事なのは収入の額よりは「使い方」である

 

  • 他人への自慢のために金を使う行為は、人生の満足度が上がることもあれば下がることもある。どっちにせよ影響力はデカい

 

 

みたいな感じですね。「総収入より使い方が大事」って結論には驚きはなかったものの、「体験の消費と満足感」が支持されなかったのはちょっとビックリ。

 

 

ここらへんの食い違いが起きた理由は謎ですけど、

 

  • お金の使い方で幸せになるためには、自分のパーソナリティに適合していなければならないから?(実際、「自分のキャラにあった買い物をすると幸福度が上がる!」ってデータ(R)がある)

 

  • 今回のデータセットは「体験の消費」の中身をざっくりとしかまとめていないから?(たとえば、「慈善活動」みたいに他人に貢献する活動と、単に自分の好奇心を満たすための体験では、質が変わってきそうな気はする)

 

といったあたりが原因なのかもなーとか思っております。とりあえず、「収入額より使い方が大事!」って知見についてはかなり一貫してますんで、「どうにも金を使っても幸せにならんなー」と思ったら使い方をチェックしてみるのは一興でありましょう。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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