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現時点で最良のデータによる「心臓病を減らす最強の食事」とは?のメタ分析(個人的には厳しい気もしますが)

 

「心疾患って怖いよねー」というのは言うまでもない話で、WHOなども「世界における死亡者3分の1は心疾患だ!」なんて報告(R)を出してたりするわけです。その多くは心不全と脳卒中だったりして、もちろん日本人も人ごとじゃない感じ。

 

 

「じゃあどうすればいいの?」ってことで、まず思いつくのは食事の改善でしょう(「禁煙」などは当たり前すぎるので置いといて)。心疾患の大きな原因のひとつは動脈硬化なので、「そりゃあ口に入れるものは大事でしょう!」って気がしてくるわけです。

 

ってことで、新しいデータ(R)は、「サプリや食事法で心疾患に意味があるものってないの?」ってとこを調べたアンブレラレビューになっております。具体的には、成人を対象とした244の臨床試験から992,129人分の調査をまとめてくれてまして、かなりマッシブなデータ量になっております。

 

 

ここではかなり大量のビタミンやミネラルの実験がふくまれていて、なかでもフィッシュオイルとビタミンDの量が多め。食事法もいろいろあつかっていて、毎度おなじみ地中海式ダイエットや低脂肪食などが俎上にのぼってます。

 

 

その結果、まずどんなことがわかったかと言いますと、

 

  • 食事法については質が高いエビデンスが皆無だ!

 

ってことです。心疾患に良いと言われる食事法はいろいろあるものの、ハッキリと言えるレベルじゃない!ってのがまず大きなポイントになってます。まぁ個人的には厳しすぎる見解のような気もしますけど、食事法のRCTって本当に難しいんで、共感もできるところです。

 

 

では、以上をふまえたうえでどんな結論を出しているのかと言いますと、

 

  • メリットがありそうなもの(エビデンスレベル中)
    • 塩の摂取量を減らす(通常の血圧の人):全死亡リスク10%低下
    • 塩の摂取量を減らす(高血圧の人):心疾患による死亡リスク33%低下

 

  • メリットがありそうなもの(エビデンスレベル低)
    • オメガ3脂肪酸:心筋梗塞と冠動脈疾患のリスク低下(ただし数値はかなり小さい)
    • 葉酸:脳卒中リスクが20%低下

 

  • メリットがなさそうなもの(エビデンスレベル低)
    • ビタミンB:全死亡リスクの低下と脳卒中への効果はなし
    • マルチビタミン:全死亡リスクの低下への効果はなし
    • カルシウム:全死亡リスクの低下と脳卒中への効果はなし

 

  • 有害なもの(エビデンスレベル中)
    • カルシウム+ビタミンD:脳卒中リスクが17%上昇

 

みたいになってます。昔から評価が高い「減塩食」のエビデンスが中レベルで、オメガ3が低レベルってのはちょっとビビりますなぁ。だいぶ基準が厳しい感じ。

 

 

さらに興味深いことに、ここでは「地中海食はエビデンスがない」と言い切ってまして、このあたりもなかなか気になるポイントではあります。個人的には、やっぱデータの選択基準が厳しいのかなーと感じてまして、たとえば今回のデータの数ヶ月前に出た「地中海食」についてのレビュー(R)なんかを見ると、

 

現行のエビデンスは多く、強く、結果も一貫している。伝統的な地中海色を実践すれば、健康状態は良くなり、臨床的に意味があるレベルで冠状動脈性心疾患、虚血性脳卒中など、あらゆる心疾患の発症率を減らすことができる。

 

とまで言い切っちゃってるんですよね。これらの論文は、どっちも昔のデータをもとに解釈してるんですけど、それでもこれだけ真逆の結果が出ちゃうんだからおもしろいもんですな。

 

 

まぁ個人的には地中海食はかなり有望だろうとは思ってるんですが、まだまだ余談は許せないところでしょう。もちろん「地中海食が悪い」みたいな話もないので、とりあえず現時点では「減塩」を心がけつつ、なるたけ健康食を心がけるしかないすなー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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