目標に向かって走り出すとなぜか急にやる気がなくなる……のは「焦点」の切り替えが問題なのだ!という実験の話
「あなたが目標を達成できない理由はこれだ!」みたいなデータ(R)が出ておりました。
これはクイーン・メアリー大学の実験で、2つの実験を通して159人に以下のような指示をしております。
- 「体力を使う作業」(重いものを運ぶ、とか)か「頭を使う作業」(難しい数学の問題を解く、とか)のどちらかを選ぶように指示する
- その際に、「より努力が必要な作業を選べば、大金をあげますよー」と伝える
- 実際に作業をしてもらい、参加者がどのように行動したかを見る
すると、実験ではこんな結果が確認されました。
- ほとんどの人はより多くのお金をもらえる作業を選んだ(これは当たり前ですな)
- ところが、実際に作業が始めると大金がもらえる作業なのに、みんな努力をしなくなった
ってことで、つまり「人間はどんなに良いごほうびをもらえるとわかっていても、実際の場面では努力をしなくなる」って現象が確認されたわけです。
この結果について、チームはこう言っておられます。
普通に考えれば、大きな見返りが期待できる仕事ほど努力の量も増えるものだと想像するだろう。しかし実際には、報酬が大きいだけでは、目標を達成するための十分な努力を引き出すことはできない。
今回の実験では、報酬の額と実際に人々が費やした努力の量との間には、直接的な関係がないことがわかった。
その理由は、私たちが目標を選択するときは、「どのような見返りがもらえるか?」というポイントに焦点を当てるのに対して、実際に目標を達成しなければならない場面では、見返りよりも現実的な努力のレベルに焦点を当ててしまうからだ。
ややわかりにくい表現ですけど、これは誰にでもよくあることでしょう。たとえば、
- 「ダイエットするぞ!」と目標を決めた時点では、「スリムになった未来の自分」というイメージ(=報酬)にばかり意識が向いてモチベーションが上がる
- 実際にダイエットが始まると、食事をガマンしなければならない辛さ(=努力)にばかり意識が向いて、報酬に意識が行かなくなる
- モチベーションが低下する
みたいな流れです。実にありがちな話ですが、この現象を「報酬から努力への焦点の移動」って観点からとらえ直したところが、本研究のポイントになっております。
つまり、ここから引き出せる教訓としては、
- 目標を立てるときには、報酬をハッキリさせるのも大事だけど、その前に「達成のためにはどれだけの努力が必要か?」ってポイントを詰めておかないと、死ぬ
- いったん目標に向かい始めたら、「いま自分の意識は努力にばかり焦点が向いていないか?」ってのを定期的にモニタリングしないと、死ぬ
- もし自分の意識が努力に向いているのに気づいたら、無理やりにでも報酬に意識を向け直して、大きな視点からゴールを見つめ直さないと、死ぬ
ってことになりましょう。この点から考えると、目標設定の段階で「目標達成のジャマになりそうな障害は?」ってポイントを考えさせる「WOOP」の手法は、やっぱ理にかなってるんだろうなーとか思いましたね。
個人的には「いま努力にばかり焦点が向いていないか?」って自問はしたことがなかったんで、ちょっとこれは意識してみようかと。