脳の劣化は20代半ばから始まる!では、我々はどうすればいいのか?というCARDIAスタディのお話
歳を取ると脳が縮むのはよく知られたこと。だいたい40代ぐらいからジワジワと脳細胞が小さくなっていう傾向がありまして、私も誕生日を迎えるたびに「また脳が少し縮んだか‥…」とか思っております(超ネガティブ)。
が、近年では「実際は脳の劣化ってもっと早い時期から起きるのでは?」(R,R)って見解もいくつか出てまして、おおよその傾向をまとめておくと、
- 中年期の脳の健康状態は、20代〜30代をどう過ごしたかにわりと左右される
- ほとんどの人は、20代半ばぐらいから空間的な視覚の能力と推論力が下がりはじめる
- さらに30代の初めぐらいには、記憶力と推理力が低下しはじめる
- 30代半ばぐらいには情報処理スピードの低下が起きる
みたいな感じです。もちろん、これらの減少は40代からの悪化スピードに比べりゃわずかなもんですが、とりあえず早めに対策し特に越したことはないでしょう。私の場合は、本格的に取り組み始めたのは35歳ぐらいからなんで、後悔先に立たずなところもありますが。
さて、こうなると脳の劣化を食い止めるにはどうすりゃいいの?ってのが気になるとこですが、CARDIAっていう有名なデータセットを使った調査が2つほど出てますんで(R,R)、軽くまとめときましょう。
そもそもCARDIAってのは1985年からスタートした調査で、5115人の若者をずーっと追跡して、それぞれのライフスタイルや病気の発症率なんかを定期的に記録し続けたデータになってます。ここから生まれた研究はかなり多くて、だいたい800近い査読論文が世に出てるはず。このタイプのデータとしてはかなり定番と言えましょう。
で、上にあげた2つの研究はどれも「脳の老化防止と関係してるポイントは何?」ってとこを調べていて、CARDIAから669〜3247人ぐらいのデータを抜き出してまとめてくれてます。そこでどんなことがわかったかと言えば、こんな感じ。
1. 頭を使う仕事はやっぱり脳に良さげ
使わない筋肉は衰えていくように、脳もやっぱり使わないと衰えていっちゃう。その点でやっぱり普段から認知機能を酷使するような仕事についてる人は、歳をとっても情報処理が速いし、精神の柔軟性も高い傾向が見られております。
では、具体的にどんな仕事が脳に良いのかと言いますと、
- 情報の精度を評価するような仕事
- 情報処理と分析を行う仕事
- 商品やサービスのクオリティを判断するような仕事
- 意思決定と問題解決が多い仕事
- 創造性が必要な仕事
- 目標と戦略の決定が多い仕事
みたいな感じになってまして、とにかく「ものごとを考える仕事は脳に良い」と言えそう。
まぁこれは観察研究なんで因果関係は分からず、「たんに頭が良い若者は負荷が高い仕事についてるからでは?」って可能性も否定はできないところではあります。そこらへんは注意が必要ですが、他の研究でも「認知負荷が高い作業は脳を健康にする!」みたいな傾向は出てるんで、気をつけとくといいでしょうな。
2. テレビを見すぎてる人は脳が劣化するかも?
20〜30代のあいだに1日3時間以上ぐらいテレビを見てる人は、25年後に情報処理スピードと精神の柔軟性が有意に下がってたそうな。具体的には、
- テレビをたくさん見てて運動不足な人
- テレビをほぼ見なくて運動してた人
っていう2つのグループを比べた場合、テレビをたくさん見てて運動不足な人は、25年後に認知機能が低下する可能性が2倍だったみたいで、なかなかビビる数値っすね。
もっとも、これは「テレビは悪だ!」ってことではなく、あくまでテレビの視聴が、
- 日ごろの暮らしで認知への負荷をかけてない
- ちゃんと運動をしていない
という事実につながってるんだよーってことであります。その意味で言えば、現代ではスマホとかYouTubeの視聴時間で脳の老化を予測できそうな気がしますな。
ちなみに、「頭を使う仕事」と「テレビの視聴時間」の2つは、昔から「中高年の脳の老化と相関する!」と言われてきた要素だったりします。が、上にあげた2つの研究は、「仕事とテレビは20代の脳にも影響するのだ!」って可能性を示したところが大きなポイントだと言えましょう。
特に最近のアルツハイマー研究なんかを見てると、「アルツハイマーが発病する20〜30年ぐらい前から脳細胞には異変が起きている!」みたいな知見も出てますんで、あらためて「早い時期から対策しとくのが大事なんだなー」とか思った次第です。まぁ私のように20〜30代前半までほとんど運動をしなかった人は覆水盆に返らずなんすけど、いまからでもやれることをしとくしかないですねぇ…‥。