食物繊維でどこまでダイエットができるのか?をガッツリ調べたメタ分析のお話
アンチエイジングの基礎といえば「食物繊維」。その効果についてはかなり良い証拠がありまして、食物繊維の摂取を増やすと、かなりの確率で病気を防げるとの報告が出てたりします。
なんだけど、ここで気になるのが「食物繊維が体にいいのはわかったけど、ダイエットには効くの?」ってポイントであります。「食物繊維でダイエットできるかもよー」みたいなデータは昔からいくつかあって、89,432人を対象にした観察研究(R)でも、普段から食物繊維を良く食べてる人ほど体重が軽いって結果になってたりします。確かに、食物繊維はカロリーがないし胃のなかを満たしてくれるしで、いかにもダイエットに効きそうな感じはするわけですね。
では、正味なところ「食物繊維のダイエット効果ってどんなもんなの?」ってのをがっつり調べたデータ(R)が出てましたんで、結果をまとめておきます。
この論文は、過去に行われた「食物繊維とダイエット」に関する研究から質が高い62件を抜き出したメタ分析でして、トータルで3,877人分のデータがふくまれております。データの内訳をざっくりまとめておくと、
- 全体的には「水溶性食物繊維で体重は減るか?」ってポイントを調べている
- 実験で使われた食物繊維の種類は、寒天、アルギン酸、β-グルカン、グアーガム、コンニャク、オオバコ、キサンタンガムなど
- 参加者の年齢は平均で51歳ぐらいで、過体重、肥満、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの人がふくまれていた
- 実験期間は平均10週間で、食物繊維の摂取量は1日6.7グラムが中央値だった(1日0.8〜36gの範囲)
- いずれの実験もカロリー制限は行わず、食物繊維の効果だけをチェックしている
みたいになってます。全体的にデータの質は悪くないんで、なかなか結論にも信頼が置けそうな感じっすね。
その結論がどうだったかを簡単にまとめていくと、以下のようになります。
- 1日8.0 gの水溶性食物繊維を8週間ほど飲み続けると、体重が有意に減少する(-0.33kg)
- ただし、食物繊維のダイエット効果は個人のコンディションによって大きく異なり、過体重または肥満の参加者は-0.46kg、糖尿病またはメタボリックシンドロームの参加者は-0.45kgの違いが出た。ただし、健康な参加者では有意差が見られなかった
- 研究期間が長ければ長いほど体重は減る傾向があったが、用量反応関係の証拠は認められなかった(つまり、食物繊維を大量に飲んでも痩せやすくなるわけではない)
ってことでして、健康体の人が食物繊維をとっても別に痩せやすくなるわけじゃないんだけど、ある程度まで太ってる人であればダイエット効果が得られるんではないか、と。
さて、この研究で得られた数値をどう見るべきかってのは難しいところですが、個人的な雑感としては、
- 普通に健康な人がダイエット目的で食物繊維をとるのはあんま意味がないかも
- 肥満ぎみな人は積極的に食物繊維をとったほうが良さげ
ぐらいの事は言えそうであります。肥満ぎみな人の場合は、カロリー制限なしでも「体重-0.33kg, BMI-0.28, 腹囲-0.63cm」って効果が出てますんで、健康レベルの改善って点では十分に意味がありましょう。
一方で健康体な人についてですが、「カロリー制限と食物繊維を組み合わせるなら意味があるのでは?」って気もしております。というのも、過去のデータ(R)では「食物繊維は食欲を抑える効果がある」って報告も少なくないので、低カロリー下での食べ過ぎ防止には効くんじゃないかとも思うんですよね。
まぁこのへんは今回のメタ分析じゃわからんので、今後の調査に期待ってことで。とりあえずの結論としては、「カロリー制限をしない場合は、そこまで食物繊維に期待しないようにね!」って感じになるでしょうね。