カルニチンが筋肉痛に効くぞ!というメタ分析の話……なんだけど
カルニチンっていう、ちょっとおもしろい成分があります。脂肪酸をミトコンドリアに運ぶ働きを持ってまして、日本ではダイエットサプリとしてよく売られてますね。
まーカルニチンのダイエット効果については「あんま飲む意味がないだろうなぁ」ぐらいに思ってますけど、代謝物であるアセチルLカルニチンはメンタルの改善に役立つ可能性が示されていて、やはりおもしろい成分だよなぁという印象であります。
で、そんな状況下、「カルニチンが筋肉痛に効く!」って内容のメタ分析(R)が出ておりました。カルニチンが遅発性筋肉痛とか筋肉損傷に効くって話は昔からありまして、それが本当なのかどうかをチェックしてくれたんですね。
チームは過去のカルニチン研究から7つを選びまして、全部で79人のデータを分析。参加者の平均年齢は22.0歳から51.9歳で、すべての研究のうち 3つは「低品質」で、4つは「高品質」と判定されてます。全体的な信頼度は「そこそこ」って感じでして、参考になる内容ではないでしょうか。
その結論がどうだったと言いますと、
- カルニチンのサプリを飲むと筋肉痛は減る
- カルニチンの効果は、サプリを飲んでから24〜96時間後まで確認された
- トレーニングを受けていない参加者のほうが、トレーニングを受けた被験者よりもカルニチンの効果は大きい
- 有酸素運動より筋トレの後にカルニチンを使ったほうが効果は大きい
- サプリメントの形態(L-カルニチンかL-カルニチンL-酒石酸塩か)はあんま関係ないっぽい
だったそうです。ということで、これをみると「筋肉痛がヒドい人はカルニチンを使ってもいいのかも?」とか思うんですけど、気になるところとしては、
- ファンネルプロットの対称性がなさすぎるぞ!
ってのはありますね。ファンネルプロットは↓みたいな山型のグラフでして、
すごーく雑に説明すると、データ・ポイント(黒い点々)が山の中にちゃんと収まってて、さらに左右の点々の散らばりが同じになってると「いいですね!」と評価されたりします。その点で今回のメタ分析は、4つある結果のうち3つのファンネルプロットがバラバラ!って結果になってるんですよ。
つまり、簡単に言っちゃうと、
- この研究ではカルニチンの効果が実際よりも大きく出てる可能性がデカい!
ってことでして、「ちょっとうのみにできないなー」ってのが正直なところなんすよね。おそらく別の方法でデータを処理し直したら、かなり効果が下がると思われ。
そんなわけで、個人的には「筋肉痛に悩んでる人はカルニチンを使ってみてもいいけど、まったく意味がない可能性があるから気をつけてね!」ぐらいの結論っすね。とはいえ理論上はカルニチンが筋肉痛に効くのもわかるところでして、
- 運動で低酸素状態になると、内皮細胞からカルニチン放出されて酸化ストレスが増えるのは間違いない
- カルニチンは抗酸化作用があるし、同時に一酸化窒素を作って血流をアップする可能性も高い
って側面はある程度まで支持されてるようには思います(R)。要するに、運動が引き起こす低酸素ストレスをカルニチンがやわらげてくれるかもしんないんですよね。
さらに言ってしまえば、
- お肉を食ってればカルニチンの摂取量はわりと十分だったりする
- 食品から取るカルニチンの方が、サプリよりも体内で効率よく処理される
って傾向もありますんで、サプリを取るなら普通に肉の量を増やした方がいいんじゃないかなーとも思っております。その意味で、あんまカルニチンのサプリを買う必要まではないかなーってのが正直なところっすね。どうぞよしなにー。