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今週半ばの小ネタ:癌治療の下痢にプロバイオティクス、ホラー映画で脳が活性化、親のストレスは子供にバレバレ

Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。   

  

 

 

癌治療の下痢にプロバイオティクスが効く!

プロバイオティクスで癌治療による下痢がやわらぐ!って内容のメタ分析(R)が出ておりました。癌の放射線療法を行うと下痢が起きやすいんですけど、この問題にプロバイオティクス(腸内細菌サプリね)が役立つというんですな。

 

 

そもそも放射線療法が下痢を起こしやすいのは有名で、おおよその発生率は20-70%ぐらい。放射線療法をすると腸内に炎症が起きちゃうんで、どうしようもないんですよね。

 

 

そこで今回のメタ分析では先行研究から8件のデータをピックアップして、1,016人分のサンプルをもとに「プロバイオティクスで下痢の問題はどうにかならないか?」ってとこを調べてくれております。

 

 

プロバイオティクスの使い方は、1回109〜1.35×1012 CFUのプロバイオティクスを放射線療法のスタート1週間前または終了までに1日1〜3回を投与。菌の種類は乳酸菌とビフィズス菌がメインになっております。

 

 

でもって、結果がどうだったかと言いますと、

 

  • プロバイオティクスを飲むと放射線療法による下痢のリスクが38%低下する(プラセボ投与と比較)
  • バイアスのリスクが低かった4件の試験をふくめて感度分析を行うと、下痢のリスク低下は56%まで増大した

 

ということで、これは十分に意味がある感じっすね。全体的にデータの質が低めで結果のばらつきも大きいのが難点ではありますが、試すに値する内容なんじゃないかと。あと、これはあくまで放射線療法を受けた患者さんだけを対象にしてますんで、一般的な下痢にプロバイオティクスがどこまで役に立つかは判断できないところです。そこはご注意をー。

 

 

 

ホラー映画で脳の意思決定エリアが活性化する?

ホラー映画を見ると人間の脳はどういう影響を受けるのか?」って研究(R)が発表されておりました。私のようなホラー好き人間には気になるデータじゃないでしょうか(自粛期間中もホラー映画ばっか見てるし)。

 

 

これはトゥルク大学の研究で、実験デザインは非常に簡単です。

 

  1. 216人に「これまで見た中で最も怖い映画は?」と質問する
  2. すべての答えから10本のホラー映画をピックアップ
  3. 選ばれた映画を37人の男女に見てもらい、同時に脳をスキャンする

 

多くの人が「これは怖い!」と思った映画に対して、人間の脳はどのように反応するかを見たわけですね。

 

 

そこでどのような現象が確認されたのかと言いますと、

 

  • ホラー映画を見る人間の脳は、視覚や聴覚に関するエリアがより活発になる
  • 中でもショックシーンの後では、感情処理や意思決定に関わるエリアが活性化し、スピーディな反応を可能にしていた

 

だったそうです。つまりホラーファンってのは、殺人鬼やゾンビの脅威に対して脳が活性化する感覚を求めて、わざわざ自ら怖い思いをするんじゃないか?って仮説であります。確かに「ホステル」とか見ると脳がガンガンに活性化する気がするんで、正しいのかも。

 

 

ちなみに、この結果を敷衍すれば、怖い映画を見たあとは意思決定の能力が高まるのでは?って気もするわけですが、このデータではわからんです。とりあえずホラーファンの方は、「いま感情や意思の決定能力が高まっているのだ!」と思いながら鑑賞するといいかもしれませんが。

 

 

ちなみに、この研究で使われた「超怖い映画」のリストはこんな感じになってます。うーん、渋いラインナップだ。

 

  • デビルズ・バックボーン
  • 哭声/コクソン
  • 死霊館
  • 死霊館 エンフィールド事件
  • REC 2
  • インシディアス
  • エクソシスト
  • グッドナイト・マミー
  • チャイニーズ・ゴースト・ストーリー
  • アンダー・ザ・シャドウ 影の魔物

 

 

 

 

親のストレスは子供にバレバレ

親のストレスは子供にバレバレ!ストレスを隠そうとするとさらにバレバレ!」みたいな研究(R)が出ておりました。

 

 

これはワシントン州立大学などの調査で、7歳〜11歳までの子供とその親御さん計107人を集めてECGセンサーを着けるように指示。全体の交感神経系の活動を測定した後で、気持ちが落ち着く音楽を5分間ほど聴いてもらったそうな。

 

 

そこからさらに親と子供を離れ離れにしたうえで、

 

  1. 「自分を親としてどう思うか?」ってテーマで親に5分間のスピーチをしてもらう
  2. 研究者が用意したサクラの評価者が親のスピーチに否定的な態度を取る(しかめっつらとか首を横に振ったりとか)

 

といった手順で参加者にストレスを与えた後で、子供のもとに戻って会話したり自由に遊ぶように誘導したらしい。

 

 

で、その際に親の行動を2つのパターンに分けまして、半分には「ネガティブな感情を隠してください」と伝え、残り半分には「素のままでいてください」と言い含めたとのこと。すると、両グループにははっきりした差が確認されまして、

 

  • 感情を押し殺して子供に接した場合は、コミュニケーションに温かみがなく、お互いの会話も少なくなる傾向があった
  • 感情を押し殺した場合、母親の生理的なストレスが高いと子供の生理的ストレスも高くなる傾向があった
  • 母親が感情を抑圧せずに素のままで対応した場合は、ストレスは母親から子供に伝わらなかった
  • 父親が感情を押し殺しても子供にストレスが伝わることはなかった。ただし、この場合は、子供のストレスが父親に伝染する傾向があった

 

ということで、なんだか父と母でだいぶ異なる結果が出てますね。おもしろいもんですなぁ。

 

 

ここらへんの性差が起きる理由はよくわからんですが、とにかく子供が親のストレスに敏感なのは間違いなさげなんで、ネガティブな感情を抱いたときはせめて抑圧しないように気をつけたほうがよさげ。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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