睡眠を改善するためには「タンパク質」をどれぐらい増やせばいいのか?を調べた系統的レビューの話
https://yuchrszk.blogspot.com/2020/05/blog-post_19.html
その昔、「タンパク質が睡眠の改善に役立つかも?」みたいな話を紹介しました。タンパク質は睡眠ホルモン(メラトニン)の原料であるトリプトファンが入ってるので、ちゃんと取らないと眠れなくなっちゃうかも?と言われてるんですよね。
でもって、新たに「タンパク質で眠れるようになるの?」問題を掘り下げた良いデータ(R)が出てたんでチェックしよきましょう。
これは「三大栄養素のバランスと睡眠の質には関係があるのか?」ってポイントを調べた系統的レビューで、15の観察研究と4つのRCTをまとめたもの。糖質、脂質、タンパク質のバランスを変えたら本当にぐっすり眠れるようになるのかを、ガッツリと調べてくれております。
また、結論を出すにあたってはメタ回帰分析が行われていて、用量-反応関係があるかどうかがわかりやすくなってていい感じ。例えば、「タンパク質は快眠に必須」って結論が出た場合に、じゃあどれぐらいまで1日の摂取量を増やせばいいのかが判断できるわけっすね(統計セクションの説明が超簡素なんで、よくわかんないとこも多いんですが)。
それでは、分析の結果をまずはグラフでどーぞ。
これは「睡眠の質が良い人(Good sleepers)」と「睡眠の質が人(Bad sleepers)」は三大栄養素のバランスがどのように違っているかを示してまして、だいたい以下のような傾向が見てとれるわけです。
- 良く眠れている人ほどタンパク質の摂取量が多い
- 特にランダム化比較試験のデータ(わりと精度が高い)を見ると、タンパク質の摂取が多い人は、タンパク質が少ない人より全体的な睡眠の質が良い。具体的には、睡眠時間が30% vs 18.3%、睡眠スコアが22.5% vs 16.7%、睡眠効率が33.8% vs 20%だった。
- また、睡眠の質が悪い人は脂肪の摂取量が多い傾向がある。ただし、そこまで顕著なレベルの違いでもない
- 炭水化物については、睡眠の質が良い人と悪い人で目立った違いはない。もちろん、良く眠れている人ほどタンパク質量が多いので、自然と脂肪や糖質の摂取量は低くなる傾向はある
ということで、良く眠れている人の特徴をまとめると、
- タンパク質は多め(総摂取カロリーの25〜30%ぐらい)
- 脂質は少なめ
- 糖質はどっちとも言えず
みたいになっております。やはり快眠にはタンパク質が効くのではないか、と。
もっとも「タンパク質を増やすと睡眠が増える」のではなくて「睡眠が増えるからタンパク質が増えるだけかも?」って可能性はまだ否定できず、本論のチームも逆相関に注意するよう戒めてはおります。わりと保守的なスタンスですね。
まぁ個人的には「タンパク質で睡眠が改善する」って説は十分にあり得るかなーと思ってまして、
- 上述のとおりタンパク質のトリプトファンは睡眠ホルモンを作るのに必須である
- 高タンパク食は空腹を減らしやすいので、睡眠の邪魔がなくなる(R)
ってメカニズムが働いてる可能性はありそうな気がしております。現時点ではどちらも仮説でしかないし、ヒトで十分な研究があるわけじゃないので、どちらも推測の域を出ないところですけどね。
もしかすると、今後の追試では「やっぱタンパク質は無関係だった」って結論になるかもですが、最悪の場合でも高タンパク食が睡眠に悪影響を与えることはないはずなんで、いま睡眠の問題にお悩みの方は1日の摂取量を増やしてみる価値はあるでしょう。具体的には、タンパク質の量を総カロリーの25〜30%に増やして様子を見ていただければ幸いです。