ストレスは脳に悪い!では具体的にどれぐらい悪いのか調べてみましょう、という観察研究の話
慢性的なストレスが体に良くないのは「最高の体調」でもさんざん強調した話。具体的なメカニズムについては「なぜダラダラと仕事をやってる人は死亡率が高くなるのか?」を参照していただければ幸いです。
で、体に悪いものは当然ながら脳にも悪いわけで、そこらへんの問題をくわしく調べたデータ(R)が発表されておりました。
これはスウェーデンの女性を対象にした観察研究で、テーマはずばり、
- 心理的なストレスは人間の脳をどれぐらい衰えさせるか?
といったものです。参加者の数は1,415人で、みんなが38歳から60歳になるまでに5回の認知テストを実施。と同時に「ふだんどれぐらいストレスを感じてますか?」って質を3回ほど行っております。
この研究におけるストレスの定義がどんなもんだったかと言うと、
仕事、健康、家族その他の問題により、イライラ、緊張、神経質、不安、恐怖または睡眠の問題が1ヵ月以上続く状態
みたいになってます。仕事のミスで3日ぐらい落ち込んだようなケースではなく、いつも借金のことが頭にあってずーっと不安が去らないレベルの負担を「ストレス」として扱ってるわけですね。
研究が行われた35年のあいだ、参加者のうち161人がアルツハイマーなどの認知症にかかりまして、彼らのストレスレベルと比べたところ、こんな傾向が確認されました。
- 中年期に繰り返しストレスを感じた女性は、そうでない女性より認知症のリスクが約65%高かった
- さらに、3回の調査すべてで「ストレスがある!」と答えた女性は、認知症リスクがおよそ150%も高かった
150%とはまた豪快な数値が出ましたなぁ。さらに具体的な数値をまとめとくと、
- 3回の調査のうち、1回だけストレスを報告した人の認知症リスクは1.10倍
- 2回ストレスを報告した人の認知症リスクは1.73倍
- 3回ストレスを報告した人の認知症リスクは2.51倍
みたいになってます。もちろん健康や収入などの要素は調整されていて、それでもストレスと認知症の関係は確認されたそうな。うーん、おそろしい……。
研究チームいわく、
これは中年期のストレスが高齢期の認知症につながる可能性を示した最初の研究であり、過去には動物実験でも同様の結果が確認されている。
そもそもストレスは、脳卒中、心臓発作、高血圧などの心血管疾患のリスクを高めることが以前から示されている。
とのこと。ストレスが血管まわりに悪影響をあたえて、そのせいで認知症が起きるのではないか?ってことですね。ただしこの研究では、ストレスが血管性の認知症よりもリスクを高める可能性も示唆していて、なんか特有のメカニズムがあるのかもなーって雰囲気もただよってたりはします。このへんは謎が多いんで、今後のデータ待ちっすね。
ちなみに、今回のデータからは「ストレスが高い人は確実に脳が衰える!」って結論は読み取れないので、そこもご注意ください。再びチームの発言を引用すると、
本研究は認知症の危険因子のより良い理解をもたらす可能性があるが、さらなる調査が必要である。というのも、「ストレスを受けている」と答えた人のほとんどは認知症を発症していないからだ。
そのため、認知症リスクを下げるためにストレスを減らすようにアドバイスしたり、高いストレスの認知症リスクについて警告をうながすべきかは、現在のところ判断ができない。
とのこと。認知症になった人がストレスを抱えていたのは事実ながら、ストレスが大きいからといって必ずしも認知症になるわけじゃないんだよーってことっすね。ここらへんの違いがどこから出てるのかは現時点では不明であります。
とはいえ、長期的なストレスが体に悪い点はほぼ立証されてるんで、1カ月も続くような心理的負担は対処するにこしたことはありますまい。どうぞよしなにー。