「アインシュタイン vs. エジソン」ロールモデルとして有効なのはどっちだ?みたいな実験の話
ちょい前に「ロールモデル大事!」みたいな話を書いたりしました。歴史上の偉人でも身近なハイパフォーマーでもなんでもいいんですけど、自分が尊敬できるような人を思い描くだけでも目標の達成率は上がるみたいなんですよね。
で、新しい実験(R)はさらに進んで、「どんなロールモデルを使うとモチベーションが上がりやすいか?」ってのを調べてくれてて有用でした。
ペン州立大学などの研究でして、3つの実験をとおして「モチベーションが上がりやすいロールモデル」について調べております。具体的には、まずひとつめの実験では176人の男女を集めて、チームが用意した科学者の伝記を読むように指示したんだそうな。その内容は、
ある科学者は、キャリアのあいだに複数の困難や失敗に見舞われましたが、どうにか努力を重ねて成功しました。
みたいな感じでして、どんな偉人にも当てはまりそうな文章を作ったんだそうな。
が、そのあとでチームは参加者を2つのグループに分けてまして、
- 「さっき読んだ伝記は『アインシュタイン』の話です」と伝える
- 「さっき読んだ伝記は『エジソン』の話です」と伝える
って感じで、同じストーリーにもかかわらず違う人物の人生だと伝えたらしい。
なんでこの2人を選んだかと言いますと、一般にアインシュタインは「生まれつきの天才」だと言われてるのに対して、エジソンは「努力の人」だと考えられてるからです。要するに、特許庁で働きながら相対性理論を生んだナチュラルな天才と、1000回以上の失敗を重ねて電球を作った努力人とでは、どちらがモチベーションに効くのか?ってとこを調べたわけですね(まぁ実際はエジソンも十分にナチュラルな天才だと思いますが)。
その後、すべての参加者は、「自分の才能についてどう思いますか?」ってのを調べるアンケートに答えまして、
- 優れた科学者になれるのは天才だけだ
- 科学に向いていない人もいる
- 知性は生まれつき決まり、後天的には変えられない
みたいな発言にどれだけ賛成するかをチェック。さらに、数学の問題をいくつか解いてもらって、みんながどのような解決のアプローチを取ったかも調べたらしい。
それでどんな傾向があったかというと、
- 「エジソンの話を読んだ」と思い込んだ人たちは、「成功するために特別な才能は必要ない!」「頭の良さは後から鍛えられる!」と思いやすい傾向があった
- そのおかげで、「エジソンの話を読んだ」と思い込んだ人たちは、数学の問題でも良い成績を出す傾向があった(だいたい23%ぐらいの向上)
だったらしい。エジソンみたいな努力型の偉人に触れると「しなやかマインドセット」が成長して、結果としてパフォーマンスが上がるみたいっすね。
さらに、2つ目の実験では162人の参加者を集めて、
- 「アインシュタインの伝記を読んでもらいます」と伝える
- 「マーク・ジョンソンの伝記を読んでもらいます」と伝える(実はこんな科学者は存在しない)
って感じで、やはりまったく同じ伝記を読むように指示したんだそうな。すると、こちらの結果もひとつめと同じで、架空の科学者の伝記を読んだグループほど「俺はできる!」って気分になり、数学テストの成績が良くなったらしい。「有名な天才科学者」よりも「がんばってる無名の科学者」の方がロールモデルとしては使いやすいのかもしれんですな。
ちなみに最後の実験もデザインは同じで、こちらでは288人の参加者を対象に、
- アインシュタイン
- エジソン
- マーク・ジョンソン
の3人でモチベーションへの違いを見ております。こちらの結果がどうだったかと言いますと、
- エジソンがベスト!
だったそうです。結局のところ、有名な努力型の偉人をモチベーションにするのが一番いいのかも?ってことっすね。
研究チームいわく、
これらの結果を総合すると、「あの人が成功したのは努力したからだ」と思い込んだ場合は、天才のサクセスストーリーを聞くよりも動機づけられるようだ。
とのこと。確かに天才すぎる人をモデルロールにしたら、「自分には関係ないもんな…」って気分になりそうですからねぇ。まぁアインシュタインについては、天才である一方でギャグ好きなリベラルオジサンって側面もありますんで、そこらへんをロールモデルに採用するのはありかもしれませんが。