ずっとカロリーを減らしずつける「カロリーリストリクション」は高血圧に効くぞ!というメタ分析の話
慢性的なカロリー制限が体にいいのでは?って考え方は昔からあって、
みたいな説がいろいろと出ております。ただし、まだ本当に実践するだけの価値があるかは不明なとこもあって、個人的には広くおすすめはしてなかったりします。なんせ慢性的にカロリーをカットするのは辛いですしね。
といったところで、新しく出たメタ分析(R)では、「カロリー制限が高血圧に効くんじゃない?」って結論が出てていい感じでした。高血圧は日本でも早死にをもたらす大きな原因のひとつなんで、参考になるんじゃないかと。
この研究は「カロリー制限と血圧」について調べた32の先行研究をまとめてまして、
- 参加者は全部で1,722人。平均年齢は48~49歳
- BMIの中央値は31.6(つまりほとんどの人は肥満)
- 平均の血圧は130/81mmHg
- 実験の期間は3日間から3年間
みたいになってます。言うまでもなく肥満は高血圧の最大の原因なんで、やっぱりBMIが高めな人を中心に選んだみたいっすね。
それでは分析の結果をだだーっと見てみましょう。
- すべての試験において、カロリー制限は比較対象のグループより最高血圧が-4.5mmHg、最低血圧が-2.7mmHgずつ改善した
- カロリー制限をしても、心拍数や最大酸素摂取量にはこれといった改善はなかった(ただし相対的なVO2maxは1.8L/min増加してる)
- カロリーを大幅に制限した場合(3〜14日をかけて148~454kcalの削減)と、カロリーをマイルドに制限した場合(1.5~6ヶをかけて300~800kcalの削減)、血圧への効果はほとんど変わらなかった。どっちもだいたい最高が -5.5mmHg、最低が -2.9mmHg
- 実験期間を短期(3日~4週間)、中期(1.1~6ヶ月)、長期(1年~3年)に分けた場合は、短期の効果が一番大きくて、期間が長くなるほどどんどん効果はなくなってく感じ(長期だと効果が半分になるぐらいのイメージ)
ということで、ざっと全体を見れば「カロリー制限は肥満による血圧の改善に効く!」といってよさそうな数字が出てますね。長期になると効果が激減しちゃうのは不思議な印象ですけど、まぁ時間がすぎるとキッチリとカロリー制限を守る人の数は減るでしょうし、短期のあいだはしっかりした食事の改善もするでしょうから、当然なのかもしれません。1年以上もカロリーを削り続けるのって辛いですからねぇ。
ちなみに、今回の研究で確認で確認された血圧の改善レベルがどれぐらいありがたいものかというと、
- 冠動脈死のリスクが9%低下
- 脳卒中死亡のリスクが14%低下
- 全死亡リスクが7%低下
ぐらいの感じになります。これは一般的な血圧の薬と同じレベルの効果でして、まことに素晴らしいっすね。
もっとも、この研究だと「なんでカロリー制限で血圧が改善するの?」ってのはよくわからないわけですが、普通に考えれば「体重が減ったおかげ」って理由が一番デカいでしょうな。BMIが30以上の人がカロリーを減らせばガンガン痩せるでしょうからね。
なので、すでに痩せてるのに血圧が高い!っていうタイプの方には、この研究はさほど参考にならないかもしれんですね。すでに痩せてて血圧が高い場合は、ジャガイモなどからカリウムをたくさんとってみたり(1日3.5グラム以上)、運動の量を増やしてみたりといった対策をとる必要があるかなーってとこですね。
そんなわけで今回の話は、せんじつめれば「血圧改善には痩せるしかない!」という非常に普通の結論に落ち着きそうな気もしますが、長期のカロリー制限には他にもQOL向上などの可能性も示唆されてますんで、試してみるといいかもしれません。