アンチエイジングの秘策と噂の「カロリーリストリクション」は実践すべきか否か
当ブログでは定期的なプチ断食をおすすめしてますが、似たようなジャンルに「カロリーリストリクション」ってのがあります。通称「カロリス」と略されまして、一部では「若返りの秘策!」とも呼ばれてたり。
いまのところカロリスの効果をヒトで調べた研究がない
「カロリス」の方法は、維持カロリー(いまの体重をキープするのに必要なカロリー)の60〜80%ぐらいまで食事量を減らして、それを毎日続けていくだけ。維持カロリーは、以前に紹介したTDEEを使って割り出してもいいし、めんどうなら「いまの体重(kg) × 33」って式でおおまかな数字を出せばよいでしょう。
カロリスがアンチエイジングに効くと言われるのは、実際にカロリーを減らしたアカゲザルが若さをキープしてるから。「アカゲザルのカロリーを25年制限した研究の最新結果が出たぞ」にくわしく書いたとおり、25年にわたってカロリスを続けたサルのほうが見た目も体も若かったんですね。
こういった現象が起きるのは、そもそも「食事」が体にストレスを与える行為だから。食事の消化と吸収は臓器を酷使しますし、栄養が代謝される過程で活性酸素も出ますんで、どうしても体にダメージが出ちゃうんですな。
ただし、いっぽうでは慢性的なカロリー制限が体に良くないのも間違いなし。低カロリーの状態が2日も続くと
- 筋肉のタンパク質が減っちゃう
- 内臓タンパクが減っちゃう
- 免疫系の悪化
といった悪影響が出てくるので、どうにも判断は難しいところであります。なにより、いまのところカロリスの効果をヒトで調べた長期研究がない(1)ので、なにも断言できない状況だったりします。
そんなわけで、いまわかる範囲でカロリスのメリットとデメリットを並べてみようかと。
カロリスで得られそうなメリット
1 やっぱりアンチエイジングには効きそう
2011年のレビュー論文(2)いわく、
動物やヒトを対象にした実験によれば、必要な栄養を満たしたカロリー制限は、いくつかの代謝や分子構造に影響をあたえ、結果として心臓や血管の老化を遅らせる働きがあるかもしれない。
とのこと。なんでも、長年カロリスを実践してる人たちを調べたところ、
- 動脈硬化のリスクが低い
- 体内の炎症レベルが低い(C反応タンパクが少ない)
- 中性脂肪が少ない
- LDLコレステロールが少ない
- HDLコレステロールが多い
- 血圧が正常
- 空腹時血糖値が良好
といった傾向が見られたんだそうな。似たような結果はバイオスフィア2(人工の生態系)の実験でも出てまして、やはりカロリスを行った参加者ほどアンチエイジング系の数値はよかったみたい。
2 ガンのリスクも下がるかも
同じく2011年のレビュー論文(3)によれば、カロリスにはガンの原因を減らす働きがあるそうな。たとえば、
- 内臓脂肪
- テストステロン
- インスリン分泌量
- エストロゲン
- 炎症性サイトカイン
- IGF1(成長ホルモン)
などなど。ただし、テストステロンやIGF1には元気を出す効果もあるんで、このへんが減っちゃうのは痛し痒しかも。
カロリスで起きそうなデメリット
1 筋肉と骨密度の減少
2010年のレビュー論文(4)によれば、ヒトを対象にした短期の実験では、多くの参加者に筋肉と骨密度の減少が見られたとのこと。
また、2007年のレビュー論文(5)では、
体重が低い人や体脂肪が少ない人の場合は、マイルドなカロリスでも健康を害する可能性がある。
とのこと。体脂肪の蓄積がない人ほど、筋肉や骨密度が減っちゃう危険性がありそう。
2 ホルモンバランスの異常
特に女性にとって怖いのが、カロリスによるホルモンバランスの異常。2009年のレビュー論文(6)では、ホルモンが崩れたせいで、
- 冷え性
- 生理不順
- 不妊
といった症状が現れることが報告されております。さらに、前述の2011年論文(3)によれば、カロリスには甲状腺や成長ホルモンを乱す可能性もあるそうで、寿命は伸びたけど日々の活力が減っちゃう可能性が大きいっぽい。
まとめ
以上の話をまとめますと、
- 人間の寿命がカロリスで伸びるかどうかはまだサッパリわからない
- ただし、アンチエイジングへの効果は間違いなさそう
- いっぽうで日々の活力を失わせる可能性も大きい
といったところです。個人的には、やっぱり慢性的なカロリー制限は辛いんで、プチ断食でいいかなーと思っております。なにせ、プチ断食でもちゃんとアンチエイジングの効果は得られそうなので。
基本的には食べ過ぎに注意するほうが大事なんで、体脂肪が12%をキープできるレベル(女性は21%)で、十分なカロリーを取っていこうかと思っております。