不安が激しくて止まらない!は甲状腺ホルモンのせいかもよーという研究のお話
甲状腺の機能は大事!とは昔から書いてきたことで、軽くポイントをおさらいすると、
- 甲状腺は喉仏の下あたりにある小さな器官で代謝に欠かせないホルモンを作っている
- そのため、甲状腺からホルモンが出ないと、疲れやすくなったり血圧が下がったりする
みたいになります。雑にまとめれば、甲状腺は元気になるホルモンを生産してるんで、ここがやられると活力が低下しちゃうんですよ。冷え性の原因のひとつでもありますんで、身に覚えがある方は検査などしてみてはいかがかと。
でもって、 e-ECE 2020(欧州内分泌学会)(R)で発表された新しいデータは、「甲状腺の異常は不安感を激増させる原因になるから気をつけて!」って結論になっててまことに恐ろしい感じでありました。
まず研究チームの問題意識はこんな感じ。
現在、先進国における25~60歳の人口の最大35%が不安障害を抱えていると言われている。不安は、人々の生活の質や仕事やコミュニケーション能力に深刻な影響を与える可能性があり、抗不安薬は必ずしも効果が持続するとは限らない。
現時点では不安障害の検査では、神経系の機能障害に焦点が当てられることが多く、内分泌系の役割は考慮されていない。
ってことで、まず先進国では35%も不安障害に悩んでるかもしれないって数値にビビりますね。まぁ日本はアメリカに比べると数が少ないとはよく言われるものの、世界的に不安が問題になってるのは間違いないっすね。
でもって、「不安の検査ではもっとホルモンの働きを重視しよう!」ってのはまったく共感で、ホルモンバランスがメンタルに影響を与えるのは確実ですし、意外と内分泌系の問題に気づいてないケースは多いですからねぇ。
ということでキエフ市立臨床病院の医師チームは、過去にパニック発作を経験しており、かつ不安障害と診断された男性29人(平均年齢33.9歳)と女性27人(平均年齢31.7歳)に協力を頼んで、まずはみんなの甲状腺機能をチェック。これを不安のレベルと比較したところ、
- 不安障害の患者さんは甲状腺が炎症を起こしてるっぽかった(ただし甲状腺の機能には異常はなく、ホルモンも正常値の範囲内ではあったがちょっと高めだった)
- また、甲状腺の自己抗体の検査も陽性だった(つまり、免疫系がなんらかの異常を起こして甲状腺を攻撃してるせいで炎症が起きてる可能性が高い)
って違いが見られたらしい。やはり甲状腺ホルモンは不安感の発生に大きな役割を果たしているかもしれないわけですね。
で、さらにこの実験では、参加者にイブプロフェンとチロキシンを14日間投与して、どんな変化が出るかもチェックしてたりします。どちらも定番の抗炎症剤っすね。
こちらの結果がどうだったかと言いますと、
- 抗炎症剤を飲んだ参加者は甲状腺の炎症が減少!
- 甲状腺ホルモンレベルも正常化!
- ついでに主観的な不安のスコアも低下!
といった感じだったそうです。このブログをお読みの方であれば不安と炎症に密接な関係があることはご存じのはずでして、この問題を食事で解決しよう!って試みもなされているところだったりします。
今回の研究では、甲状腺の炎症が不安レベルと関係してる可能性を示したのが新味でして、やっぱホルモンのバランスも気をつけねばなーとかあらためて思ったことでした。この実験では性ホルモンや副腎ホルモンについては焦点を当ててないんですが、おそらくここら辺もメンタルに影響してるんでしょうなぁ。
甲状腺ホルモンは病院で普通に調べられますんで、気になる方はチェックしてみてはいかがかと。どうぞよしなにー。