HIITで長生きできるのか?に関する現時点で最良の結論のお話
このブログで初めてHIITを紹介してから早6年。普通の有酸素運動よりも効率よく心肺機能を高められるテクニックとして市民権を得てきた気がしますが、近ごろ出ておりましたデータ(R)は、
- HIITで長生きできるのか?
ってとこに焦点が当たってて新しかったです。HIITが心肺機能を高めるのは間違いないんですけど、果たして寿命を伸ばす働きがあるのかどうかはまだわかってなかったんですよね。
これはノルウェー科学技術大学の調査で、「ジェネレーション100」って名前の長期研究データから高齢者(70~77歳)1,567人のサンプルを使ってます。調査自体は2012年にスタートしてまして、「運動が高齢者の死亡率にどう影響するの?」って問題を調べたテストとしては過去にない規模でして、非常によろしいのではないでしょうか?
実験では全体を2つのグループに分けまして、
- HIITグループ:週に2回のHIITトレーーニングを行う
- MICTグループ:週に2回だけ普通の有酸素運動を行う
- コントロールグループ:特に運動の指導はされない
みたいになってます。この実験で使われたHIITがどんなもんだったかと言いますと、以下のような感じです。
- 10分間軽いストレッチやランニングでウォームアップ
- 最大心拍数の約90%の高負荷で全力スプリントを2分
- 最大心拍数の約60%で3分走り続けて乳酸を除去(いわゆるアクティブレスト)
- ステップ2〜3を4回くり返す
- 5分だけ軽いストレッチやランニングでクールダウン
これをちゃんとやると結構辛いんですけど(さっき試してみた)、1回の運動時間は35分ぐらいなんで週2ペースなら続けられそうっすね。
一方でMICTグループの運動法はこんな感じです。
- 最大心拍数の70%ぐらいの負荷で、50分間走り続ける
非常にシンプルっすね。ちなみに、この実験に参加した高齢者の皆さんは、ひとりで運動をするもよし、インストラクターの指導を受けるもよし、グループトレーニングセッションに参加するもよしで、好きなパターンを選んでもらったそうです。
で、5年後の結果をまとめるとこんな感じです。
- 全死亡率については、コントロールグループ(4.7%)と、MICTとHIITグループのあいだに差はなかった(4.5%)
- 心疾患や癌についても、コントロールグループとHIITとMICTグループとの間に差はなかった(みんなだいたい15〜6%ぐらい)
- ただし、HIITを行ったグループには、長期にはより死亡リスクが低下するトレンドは確認された
ってことで、全体的に見れば特に運動の指示を受けないグループとHIITを行ったグループに明確な差はなかったものの、もっと長い目で見たらHIITが優位になるかも?ぐらいの結果っすね。
もうちょい差がつくかなーと思ってたんで、なんか残念な結果だったんですけど、どうもデータを見てると「コントロールグループも結構エクササイズをしている!」って問題がありまして、そのせいでハッキリした違いが出にくくなってる可能性もあるなー、とか思いました。
実際のところ、今回のデータの解釈については研究チームも悩んだ感じがありまして、ニュースリリース(R)ではこんなことを言っておられます。
第一に、運動は一般的に高齢者の健康に良い。それに加えて今回の研究結果は、高強度なトレーニングを定期的に行うと、さらにプラスの効果があることを示している。
肉体的にも精神的にも、5年後に観察された生活の質は、HIITグループの方が他の2つのグループよりも優れていた。さらに、HIITはフィットネスに最大のプラス効果をもたらした。
なんだかんだで、チームはHIITのメリットに期待をかけてる感じっすね。この調査はまだ続いてるんで、さらに5年後にはまた別の結果が出てるのかもしれません。
そんなわけで、今回はそこまでハッキリしたメリットが確認されなかった感じですが、微妙ながらHIITに有利な傾向は出てるんで、週2ペースでお試しいただくのもいいんじゃないかと。
ちなみに、「最大心拍数で90%」ってのは分かりにくいかもなんで、実践の際は「もう限界で体が動かない!」ってレベルを20点だとした場合に、主観で16点ぐらいの辛さを目指すイメージでやってみるのがお勧めです。どうぞよしなにー。