このブログを検索




今週半ばの小ネタ:食欲ホルモンが記憶力を左右、歩数を増やして長生き、酒飲みは共感力が低い?

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

 

食欲ホルモンが記憶力を左右している!………かも

食欲ホルモンが記憶力にも影響してるかも?ってなおもしろデータ(R)が出ておりました。グレリンっていう「食欲ブースト系のホルモン」が、記憶を左右してるんじゃないかというんですよ。

 

 

といってもまだ動物実験の段階なんですが一応デザインを紹介しとくと、

 

  1. ラットの迷走神経(腸から脳に信号を送る神経)を壊して、グレリンホルモンが脳に作用する経路をシャット
  2. その後、ラットたちがどんな行動をとるかをモニタリングする

 

みたいになってます。そこでどんな変化が起きたのかと言いますと、

 

  • グレリンが効かなくなったラットは、食事の回数が増えた!

 

だったそうです。食欲ブーストホルモンが効かないのになぜ食事が増えるの?って感じですけど、これがどういうメカニズムなのかと言いますと、

 

  1. グレリンが効かないせいで、エピソード記憶に障害が起きる
  2. さっき食べたばかりの食事を忘れてしまう
  3. また食べる!

 

って感じなんだそうな。グレリンのシグナルが脳に行かないせいで過去の記憶を忘れちゃって、食事をした事実が頭から抜けちゃうらしい。うーん、怖い。

 

 

もちろん、人間にも同じことが言えるのかは謎なんですけど、「グレリンって食欲のコントロール以外にもいろんな機能を持ってるのでは?」とは昔からよく言われてるんで、ヒトでも似たことが起きたりするのかもっすね。この知見を現実に活かすなら、「だらだら食べるんじゃなくて、ちゃんと空腹な期間を作って脳にグレリンのシグナルが届くようにしておこうぜ!」みたいになりましょうか。

 

 

 

1日の歩数が1,000歩増えるごとに死が遠ざかる件

ウォーキングが体にいいなんて話は耳にタコでしょうが、新たに「具体的にどれぐらい歩数を増やすと、どれぐらい死亡リスクは下がるの?」という問題をガッツリ調べた論文(R)が出ててためになりました。

 

 

これがどんな話なのかと言いますと、

 

  1. 歩行数と全死亡率を調べた観察研究から17件をピックアップ(全部で21,118人)
  2. どれだけ歩くとどれだけ病気で死ににくいのか?の関係性を調べる

 

って感じの系統的レビューになってます。日本をふくむ世界中からデータを集めてまして、追跡期間は3カ月~10年の幅に広がっております。

 

 

データだと、調査に参加した人たちの歩数は1日2,681~10,969歩のあいだで、だいたい6,000歩がまんなかぐらい。すべてをひっくるめて死亡リスクと比べたら、こんな結果になりました。

 

  • 1日の歩数が増えるごとに全死亡リスクは下がり、だいたい1日1,000歩増えるごとに6~36%の範囲でリスクが下がる

 

  • 歩数アップによるメリットは、どんなに体を壊してる人でも、タバコを吸ってるような人でも得られる!

 

だそうです。1日1,000歩増やすごとに、ほぼ確実に全死亡率が下がっていくみたいでして、なんともありがたい結果ですねぇ。この調査では歩数の上限が1日1万歩ぐらいの人を対象なので、それより多く歩いたらどうなるかは不明ですが。

 

 

 

酒飲みは他人の痛みに共感するのが下手?

酒好きにはイマイチ辛いニュースが多い昨今ですけども、今度は「飲みすぎる人は共感力が下がる!」ってな話(R)が出ておりました。

 

 

これは71人の男女を対象にしたテストで、そのうち半分は「酒を飲み過ぎ」に分類されるグループで、残りは「飲み過ぎてない」グループに分類される人たちだったそうな。でもって、実験がどんな内容だったかと言いますと、

 

  1. みんなに手足を負傷した人の画像を見せ、「このケガが自分のものだと想像してください」や「このケガが他人のものだと想像してください」と指示する

  2. みんなが想像してる間の脳をfMRIでチェックして、参加者がどんなは脳をしてるかを調べる

 

みたいになってます。いかにも痛そうな画像を見た場合に、酒飲みとそうでない人は反応が違うのか?ってのを調べたわけですね。

 

 

ちなみに、この研究における「飲み過ぎ」の定義は、

 

過去30日間のあいだに、1回の飲み会で60g以上のアルコール(ワインボトル1本の約4分の3ぐらいの量)を飲んだことがある。

 

みたいになってます。これは酒好きな方なら簡単に満たしちゃいそうな基準っすな。

 

 

で、結果はこんな感じです。

 

  • 「飲み過ぎ」な人たちは、酒を飲まない人に比べて、「他人の痛みを想像する」タスクが苦手だった!

 

  • 「自分の痛みだと想像する」タスクの成績は両グループで変わらなかった

 

  • さらに、「飲み過ぎ」な人たちは、体の部位を認識するのに関わる脳の視覚領域が異常に活性化していた(これは、他人の痛みに共感するために、より多く脳のエネルギーを使わなきゃいけないのが原因だと思われる)

 

要するに、酒をたくさん飲む人は他者への共感性が低下しちゃってるのではないか、と。研究チームいわく、

 

この結果は驚くべきものだ。データによると、酒をたくさん飲む人は、痛みを抱える他者に共感を抱くために、より脳を働かせる必要があるらしい。

 

日常生活の文脈に置き換えれば、酒をたくさん飲む人は、他人の痛みを感じ取るのに苦労しているかもしれないということだ。

 

とのことで、酒好きはちょっと注意しとくといいかもしれませんねー。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM