筋トレ前に難しい仕事をするとトレーニングの成果が上がらなくなるかも?みたいな話
すごーく当たり前のことを言いますが、脳と筋肉はつながっているので、頭が疲れてたら体もうまく動かない可能性は高いわけです。たんに「頭が疲れてやる気が出ないなー」といった話ではなく、脳の疲労により筋肉にうまく情報が伝達されず、そのせいでパフォーマンスが下がっちゃうような状況っすね。
簡単に言えば、「筋トレの前に『難しい勉強』やら『頭を使う仕事』などを行うと、筋トレのパフォーマンスが下がる可能性があるのでは?」って話なんですが、果たしてこの問題はどれぐらいの影響があるのか?を調べたデータ(R)が出ておりました。
これは筋トレ好きな男性10名を対象にしたクロスオーバー試験で、年齢はだいたい22歳前後で、4年ぐらいのトレーニング歴がある人だけを選んだそうな。具体的な実験デザインをまとめておくと、
- 最初の実験では、みんなのバックスクワットの1RMを調査
- 2回目の実験では、半分の参加者に30分間のストループテストを指示して脳を疲れさせ、100点満点の尺度で「自分の精神的な疲労はどれぐらいか?」を評価してもらう。残り半分には30分のドキュメンタリー映像を見てもらう
- 15分後、1RMの70%のスクワットを3セット、筋肉が疲れきるまで実行してもらう(セット間の休憩は3分)
- 3回目の実験では、2回目の実験で認知タスクをしなかった人にストループテストをしてもらい、あとは同じ手順で筋トレのパフォーマンスを調べる
みたいになってます。ストループテストは「赤い色で書かれた『青』という文字」などを正しく答えるテストで、かつて脳トレとして流行ったアレです。実際にやるとわかりますが、数問でかなりイライラさせられまして、脳の疲れを起こす働きはかなりのもんであります。
そこでどんな結果が出たかと言いますと、
- 頭が疲れていない状態(100点満点の尺度で平均23.3ポイント低い状態)でスクワットをした場合、頭が疲れた状態よりも15.8%ほどトレーニングのボリュームが多かった
- 頭が疲れた状態でスクワットをすると、第1セットから第3セットまでの回数の減少が、頭が疲れてない状態よりも激減した(13.2% vs -34.6%)
- その他、筋トレのモチベーションやジャンプ力については、頭が疲れてても疲れてなくても目立った違いは見られなかった
ということで、頭が疲れても運動のやる気が落ちるわけじゃないものの、筋トレをこなす回数にはそれなりの違いが出たみたいっすね。
ただ、ここで判断が難しいのは、昔の研究では「脳の疲れと筋トレのパフォーマンスには関係ない!」って報告もチラホラあるとこっすね。これらの実験(R,R)では、認知タスクのあとにレッグエクステンションをしても、特にパフォーマンス(最大筋力)は落ちなかったって結果でして、わりと悩ましいとこなんすよ。
ただまぁ今回の実験は「トレーニングのボリュームが落ちた」ってのがメインの発見なので、過去のデータと合わせてみると、
- 脳が疲れてても瞬間的に生み出すパワーには影響しない(つまり、頭が疲れてても同じような重さを動かせる)
- ただし、脳が疲れてると持久力はなくなりやすい
といったことなのかもしれんですね。
また、上記の実験を見て「ストロープテストの結果って現実に適応できるの?」みたいな印象を持った人もいるかもしれません。現実の世界では「企画書の作成」とか「プレゼンの準備」みたいな作業がメインなので、今回の実験とは脳の疲れ方が違うのでは?みたいな疑問っすね。
これについては「よくわからない」としか言いようがないんですけど、先行研究などを見てると、とにかく「認知負荷がある作業を連続で行えば脳は同じように疲れる」って傾向はあるみたいなんで、日常的なタスクが筋トレのパフォーマンスを下げる可能性はそこそこあるだろうなーとか思うわけです。
まーこのあたりはまだ未解決な謎が多い問題なんですけど、現時点で言えそうなのは、
- まだ仕事をしてない早めの時間に筋トレをするとパフォーマンスが上がるかも?
- 脳を酷使するような作業は、せめて筋トレの1時間前には終えといた方がいいかも?
- 脳疲労によるボリュームの低下を組み込んだトレーニングメニューを作っておくといいかも?(セット数を少し増やすとか)
ぐらいのとこですかね。個人的には、この問題を詰めて考えるのがめんどうなので、適当にボリュームを増やす方向でやってますが。