イスに座ってる1時間を睡眠にまわせば、仕事のやる気も出るしメンタルも落ち込まない!……かもよ、という話
あいかわらず日本では睡眠不足が問題になってまして、だいたい人口の4割が6時間も寝てないとか言われてたりします。なかなか深刻なもんですな。
で、新しいテスト(R)も睡眠の重要性に関する話で、「イスに座り続けるぐらいなら潔く寝たほうがメンタルが改善するかもだ!」みたいな話になっておりました。だらだらと何もせず座り仕事をしてるぐらいなら、その分を睡眠に当てたほうが、その後の精神状態は確実に良くなるんじゃない?みたいな話っすね。
これは明治安田厚生事業団の研究で、「明治安田ライフスタイル研究(MYLSスタディ)」という健康調査のデータを使ってます。2017〜18年に参加した男女1,095人のデータを使ってまして、
- 参加者は腰に活動量計をつけて、普段の運動時間やイスに座ってる時間をチェック
- さらに調査票でみんながいつも何時間ぐらい寝ているかもチェック
って感じで、日中の座り時間とメンタルヘルスの相関を調べたんだそうな。
ここでいう「メンタルヘルス」ってのは、おもに「どれぐらい仕事で生き生きと働けているか?」と「心理的にどれぐらいストレスを抱えてるか?」の2点を調べてます。どちらも定番の質問表を使ってますね(詳細はリンク先参照)。
で、すべてのデータをひっくるめたうえで、教育レベル、喫煙、飲酒、職種、残業時間などの要素をコントロールして分析したら、こんな結果になりました。
- 「座りっぱなしの時間が長い」人は、心理的ストレスが高くなり、仕事の活力が下がる傾向がある
- 低強度の身体活動の時間が長い人は、心理的ストレスの高さとだけ相関があった
- 平日によく寝てる人ほど心理的なストレスは低く、仕事の活力度は高い
- 座りっぱなしの時間または低強度身体活動の時間を1日60分減らし、その時間を睡眠にあてた場合、仕事の活力低下が起きる確率が11.4%下がり、心理的ストレスが起きる確率が26.6%の確率で下がる
ということで、座ってる時間やほとんど動いてない時間を1日60分だけ減らして、代わりに睡眠に使ったほうが仕事のやる気も出るし、こころが落ち込む可能性も減るかもよ?って結論っすね。
ちなみに、この研究が示す「低強度の身体活動」は1.6〜2.9METsまでの身体活動ってことなんで、だいたい普通のウォーキングとか家事全般ぐらいのレベルですね。「あれ?過去のデータだとウォーキングでもメンタルは改善するって話もあったのに?」とか思いましたけど、ここらへんの食い違いは謎っすね。もしかしたら、
- 通勤や仕事でたんに体を動かすだけではダメで、「自分は運動しているのだ!」という思い込みの力がないと意味がないから?(エレン・ランガー先生の「『老い』に負けない生き方」みたいな考え方っすね)
- 運動でメンタルを改善するには、思ったよりも負荷が高い運動が必要だから?
って感じなのかもしれませんが、ここらへんは今後の試験待ちってことで。
さらに余談ですが、この研究では以下のような傾向も確認されていて、さらに混迷が深まるとこではあります。
- 中~高強度身体活動(3.0METs以上)の時間の長さは、メンタルヘルスと関係が見られなかった
- 休日の睡眠や身体活動の時間は、どっちもメンタルヘルスと関連がなかった
うーん、これが事実なら「どんなに負荷が高い運動をしてもメンタルヘルスとは関係ないのか?」って気もするんですけど、こちらも謎ですね。たんに実験スタート時における参加者のベースラインが先行研究と違うのかもしれませんが。
まぁいずれにせよ、座りっぱなしがメンタルに悪いって傾向はどのデータでも一貫してまして、研究チームはこう申しておられます。
海外の研究では、座位行動を減らして運動(身体活動)を増やすことが良好なメンタルヘルスと関連すると報告されています。しかし、世界的に睡眠時間が短い者が多い日本では、行動変容の優先度は睡眠が高いものと考えられます。
日本人が睡眠不足なのは間違いないので、とにかく「起きてダラダラしてるぐらいならその1時間を睡眠にあてよう!」ってアドバイスはわかりやすくていいですね。