会話には笑顔が欠かせないが、笑顔ばかり使ってると死ぬぞ!という話
「笑顔は大事!」ってのは当たり前の話で、コミュニケーションに欠かせない要素なのは誰もが肌で感じてることでしょう。
なんだけど、ワシントン州立大学などの研究(R)では、「売り込みで笑顔ばっか使ってると死ぬぞ!」って話になってて勉強になりました。たとえば、起業家が資金調達のピッチで笑顔ばかり見せていると、逆に売り込みに失敗しやすくなっちゃうよーって話です。
これがどんな研究だったと言うと、
- 起業家が売り込みをしている様子を録画した動画489件を集める
- そこで起業家が浮かべている表情を「顔面分析ソフト」で解析
- それぞれの動画から、喜び、怒り、恐れ、悲しみの感情を抽出
- 起業家の表情と調達額の合計や資金調達目標の達成度を比べる
みたいになってます。表情の使い方によって、得られるお金の量が違ってくるのかをチェックしたわけっすね。
では、分析でわかったことを箇条書きにしてみましょうー。
- 最も資金調達に成功したのは、喜び、怒り、恐れの3つの感情表現を駆使した起業家だった
- 資金調達にマイナスの影響を与えた感情は「悲しみ」だけだった
ということで、たんに笑顔でガンガン押すんじゃなくて、時には怒ったり怖がったりしないと、逆に売り込みは失敗に終わってしまうんだそうな。
具体的に、成功した起業家の多くがどんな感情表現を使っていたかと言いますと、
- まずは自己紹介でチームの素晴らしさを語りはじめ、この時は「笑顔」で幸せな気持ちを伝える
- 自分が解決したい問題について語り始めるフェーズでは、「怒り」の表情を浮かべて真剣さをアピール
- 障害、リスク、リソースの必要性について話すときには、「恐怖」の表情を浮かべて相手を引き込む
みたいな感じらしい。要するに、「売り込み」といえどストーリーテリングの一種なんだから、その物語の進み具合に適した表情を使ったほうがいいよ!ってことですね。そりゃあ落語だって、ずっと笑顔で語られたら興醒めですもんね。
また、その他に得られた知見としては、
- 感情をほとんど表に出さない人は、たとえ説得力のある言葉を発していても、資金を集めることができなかった
- ひとつの感情だけを表現する起業家も、あまりうまくいかなかった
- ただし、めちゃくちゃ感情表現が豊かすぎる起業家も、あまりうまくいかなかった
なんて結果も得られております。起業家の表情は資金調達と逆U字型の関係がありまして、感情が多すぎても少なすぎても良くないらしい。まぁたいした問題でもない場面で激しい怒りの表情を浮かべてたら違和感しかわかないですもんね。
チームいわく、
今回の研究では、資金調達の売り込みを成功させるには、異なる感情を使い分けねばならないことがわかった。たとえば、怒りの表情は、あなたが何かをどれだけ気にかけているかを伝えることができるが、笑顔ばかりを浮かべていたらこれは難しい。
極端に言えば、笑顔を使いすぎると、不誠実で過度に楽観的な印象を与えてしまう。そのバランスを取るのが良い。
感情は少なすぎても多すぎても成功には至らず、ほどよいゴルディロックスポイントを探さねばならない。喜怒哀楽の表現はある程度まで資金調達を促進するが、これらの感情のどれかを頻繁に表現すると、資金調達の見通しは悪くなってしまう。
とのこと。これは売り込みの場面だけでなく、一般的なコミュニケーションでも言えそうな話っすね。ストーリーに適した種類と強度の表情を選ばないとダメってのは、あらゆる対話に共通するポイントでしょうな。