グリットは人生の成功にほぼ無関係!大事なことは他にあるんじゃないの?みたいな観察研究の話
過去に「グリットってほとんど意味ないんじゃないの?説」なんてのを紹介したとおり、グリットについてはだいぶ旗色が悪くなりはじめた昨今でございます。もちろん、がんばってやり抜く力が重要じゃないとは言わないものの、たとえば学校の成績とか収入といった要素に与える影響は思ったより低いのでは?と言われ始めたんですよ。
でもって、新しい研究もグリットに不利な話(R)でして、まず結論から言っちゃうと、
- グリットが勉強と収入にあたえる影響はほとんどない!もっと重要なことは他にある!
みたいになります。うーん、これまた辛い……。
これはアメリカ労働省の調査データを使ったもので、80年代に生まれた8,984人の男女を対象にしてます。みんなに定期的なデータを行なって、
- どれだけグリットがあるか?
- どれぐらい知能は高いか?
- 30代以降になって、どれぐらい教育および経済的に成功したか?
ってポイントをチェックしたうえで、すべてのデータをひっくるめて比較したんだそうな。ちなみに、ここでいう「成功」ってのは、学校の成績や学位、社会人になってからの給料で判断しております。
そこで出た結論をまとめると、
- 教育の成功においては、グリットよりも知能のほうが48〜90倍も重要
- 給料の成功においても、グリットよりも知能のほうが13倍も重要
- 全体的な成功についても、グリットよりも誠実性のほうが2倍重要
みたいになります。数値の差がすごい! グリットが完全に無意味ではないものの、それよりも良い指標があるんだよーって感じっすね。
この研究では、人間の知能として、
- 数字を使った推論ができるかどうか(比率とか割合とか複利とか、そこらへんの意味を理解して使えるかどうか)
- 文章において段落ごとの関係や役割を理解できるか
- ボキャブラリーがあるかどうか
- 数学の知識があるかどうか
みたいなポイントを重視してまして、やはり読解力と数学が大事なのねぇ…みたいな感じですね。
といっても、過去の研究では「グリットで成績が上がる!」みたいな結果が出てたのもまた事実でして、その点はどう判断すればいいのかと言いますと、
- 過去の研究って、経済レベルが同じ家庭を対象にしてたからじゃない?
と推測されております。どういうことかと言いますと、
- 先行研究により、「お金持ちな家庭で育った子供ほど知能が高い」って傾向は明確に出ている
- しかし、過去のグリット研究では、家庭の収入が同じぐらいのグループで調査をしていた
- そのため、知能の重要さが打ち消されてしまい、グリットの重要性だけが検出された
みたいな考え方です。言われてみればありそうな話ですね。
それじゃあ結局なにが大事なのってことですけど、やっぱ知能も性格も重要だからひとことでは言えないよなー、ぐらいの常識的な結論になりそうであります。ちなみに、以前にグリットのメタ分析を行なった著者チームは、こんなことを言っておられます。
学習スキルや学習習慣、大学への適応、授業への出席といった要素は、グリットよりも学業成績の向上とはるかに強く相関しており、介入によってこれらの構成要素(特に学習スキルや学習習慣)を向上させられる。
子供の成績については、結局のところ「ちゃんと授業に出る」とか「学習のやり方を学ぶ」といった要素のほうが大事なんだよーってことですね。めちゃくちゃ地味な結論ですけど、やっぱそんなもんなんでしょうねぇ……。