現代人の大半は20分しか作業が続かない。では、どうしましょう?みたいな話
「メールのない世界(A World Without Email)」って本を読み終わり。著者のカル・ニューポートさんは「デジタル・ミニマリスト」とか「大事なことに集中する」で有名なコンピュータ科学者で、「情報が激増する現代でどう生きるか?」みたいな本を多く手がけてる先生ですね。
タイトルから推察できるとおり、本作もまた「デジタルの便利さが生む弊害」を主張してて、ここではメールやメッセージによって生まれる「ハイパーアクティブ・ハイブマインド」を問題にしております。直訳すると「過活発性集団思考」みたいな感じですかね。
このマインドがどういうものかというと、大きな仕事を進めるにあたって、いろんな問題点について話し合うためのメッセージを何度も往復させるようなワークフローのことで、大きな組織で働いていたら誰にでも経験があるでしょう。さっき企画の要点を話し合ってたと思ったら、次に上司から予算管理の質問が届いて、さらに続けざまに会議の相談が……みたいな状況っすね。
ニューポート先生いわく、
管理職は1日の85%を仕事ではなく、会議や電話、人との会話に費やしている。この働き方は、柔軟性と適応性があ流ものの、人間の脳の働き方とは相反している。
このような状況はあなたを疲れさせ、破壊的なダメージをもたらす。そこで人々は、「金曜日はメールをしない」のような”ハック”を使って対処しようとするが、お互いにメールをしないためのワークフローが存在しないため、うまくいくことはない。
とのこと。人間の脳はマルチタスクに向いていないって話は有名ですけど、だからといって「夕方までメールチェックはしない!」と決めたところで、組織全体にその意識が浸透してないと実行は難しいだろうって話です。確かに、自分がメッセージのチェックを控えても、上司や同僚がやりとりをしまくってたら、無視するわけにはいきませんもんね。めちゃくちゃ現実的な問題定義ですなぁ。
ちなみにニューポート先生は、RescueTime(タイムトラッキングソフト)で集めたデータを公開していて、
- ユーザーの半数は、メールやSlackなどのコミュニケーションアプリケーションを6分以下の間隔でチェックしていた。最も多かった平均チェック時間は1分に1回だった。
- ユーザーの半数は、連続した最長の作業時間が40分以下であり、最も典型的な作業の持続時間はわずか20分だった。
- 3分の2以上のユーザーは、1時間以上ぶっ続けで仕事をした経験がなかった。
みたいな傾向があったと報告しておられます。作業の持続時間が20分を超えない人は、確かに多いんじゃないでしょうか(私も体調が悪いと20分もたないことがザラにありますし)。
というわけで、私たちは、単にメールの使い方を改善するだけではなく、共同作業を処理するために新しいワークフローが必要なわけですが、そこでニューポートさんの提案としては、こんな感じになります。
- とにかくメールやメッセツールを使った、自由形式でのメッセージのやりとりは控える
- 自由形式を控える代わりに、できるだけ構造化されたプロセスを作るように考えねばならない
- 「構造化されたプロセス」についてone-size-fits-all な方法はないんだけど、ニューポートさんはAsanaやTrelloなどのツールを使っているそうな。これらのツールは、タスクをメールから解放し、より整理されたプロジェクトボードに移すのに役立つとのこと
- ソフトウェア開発で使われるスクラムやアジャイル開発のような生産性向上用パラダイムも、かなり有効なので使ってみるのがおすすめ
現代のメールやメッセージの問題は個別性が大きいんで、あくまで組織ごとに「どうやれば仕事のプロセスを構造化できるか?」ってのを考えるしかないのが難しいとこですね。個人的には、アジャイル開発については不勉強なので、さっそく「アジャイル開発とスクラム 」を読んでみようかと思いました。