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今週半ばの小ネタ:10分の深呼吸で記憶と学習の能力が改善? 呼吸法で作業の気が散っちゃう問題が解決? アロマセラピーで勉強の集中力アップ?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

 

10分の深呼吸で記憶と学習の能力が改善?

このブログでは、呼吸法の重要性を何度も書いてきたわけです。呼吸を調整するだけでも私たちの神経系は調整されて、一気にリラックスできちゃうんですよね。

 

 

なので、ムダに不安に襲われないためにも、普段から呼吸法はトレーニングしておくのがおすすめなわけですが、近年は「呼吸法はリラックス以外にも効くよー」って報告が増えてきたので、いくつかピックアップしておきましょう。

 

 

ひとつめはボールステイト大学の研究(R)で、まずは結論からいうと「呼吸法で一時的に記憶力や学習能力がブーストするかもよ!」みたいになります。研究チームは、85人の大学生を集めたうえで、以下の2グループに分けました。

 

  1.  10分だけ呼吸の感覚に集中する

  2.  何もしない

 

この実験で採用されたのは「普通の深呼吸」でして、「『腹式呼吸』さえやっときゃ人生のいろんな問題は解決するんじゃない?説」に近い感じですね。ちなみに、参加者には「呼吸が鼻を通り抜ける感覚に意識を集中してくださねー」といった指示が出たそうでして、呼吸瞑想にも近いかもっすな。

 

 

すると、その後で行われた記憶や学習テストの成績には大きな違いがありまして、

 

  • 呼吸訓練をしたグループは、言語学習と記憶のレベルが10〜20%ほど改善していた

  • 呼吸訓練をしたグループは、何もしないグループよりも脳の符号化が大きく改善していた

 

「脳の符号化」ってのは、外部から取り込んだ情報を記憶に変換するプロセスで、この機能が増加すれば学習効率も大きく上がるものと考えられます。つまり、勉強が終わった後よりも、勉強前の10分を使って呼吸トレーニングをした方が確実に脳機能アップに効くと考えられるわけです。これは手軽でなので、勉強前に深呼吸をやってみるのはアリかもですね。

 

 

 

呼吸法で作業の気が散っちゃう問題が解決?

ふたつめはウィスコンシン大学マディソン校の研究(R)で、こちらの結論がどのようなものだったかと言うと、

 

  • マルチタスクによる脳機能を呼吸が防いでくれるかもだ!

 

みたいになります。人間の脳ってのは、周囲の雑音やスマホの通知などに気を取られてしまうと、機能が大幅に下がってしまうんですけど、この問題に対しても”呼吸”はすばらしい効果を発揮してくれるんじゃないか、と。

 

 

この研究では、42人の大学生を集め、まずは全員の「気の散りやすさ」を調べてます。「仕事をしたいのについネットを見てしまう」ような問題に、いつもどれぐらい悩まされているのかをチェックしたわけですね。

 

 

その後、チームは参加者を2つに分けて、

 

  1. 数を数える呼吸法を10分行ってから認知テストをする(主に注意力やワーキングメモリを測定)

  2. Wikipediaやニュースサイトをチェックしてから認知テストをする

 

といったグループに割り振りました。ここで使われた「数を数える呼吸法」は、「呼吸を1から9まで数えたらまた1から数え直す」という手法で、禅で使われる瞑想に近いやり方を採用したとのこと。トレーニングの時間は1回10分だったそうです。

 

 

すると、やはり呼吸トレーニングを行なったグループには顕著な改善が見られ、ウェブを見たグループよりも注意力が20〜30%ほどテストの成績が上昇したらしい。また、この効果は、普段からマルチタスクレベルがひどいグループほど大きかったようで、普段から気が散りやすい人ほどメリットが得られるみたいっすね。

 


こちらも手軽に実践できて効果も高いため、作業前のウォーミングアップとして呼吸法を使うと、脳機能が良い感じになってよろしいのではないでしょうか。

 

 

 

アロマセラピーで勉強の集中力アップ?

このブログでは、昔からアロマセラピーの話もよくしております。まだまだ検証データが少ないジャンルではありますが、ここ十数年でそこそこ検証が進みまして、いろんなメリットが報告されております。近年でも、いくつかおもしろいデータがあるので、簡単に見ておきましょう。

 

 

まず取り上げるのはフランクリン・ピアス大学などのテスト(R)で、研究チームは48人の学生を3つのグループに分けました。

 

  1.  ペパーミントの香りをかぐ
  2.  ラベンダーの香りをかぐ
  3.  何もしない

 

アロマを使ったグループは、それぞれ別の部屋で30分ほど香りをかぐように指示されたとのこと(ディフューザーを使用)。そのうえで、全員に集中力を必要とする脳テストを実施しています。

 

 

すると、結果はこんな感じになりました。

 

  • 記憶力テストの結果はペパーミントが最も高かった(ただし有意差はない)

  • 集中力テストの結果はペパーミントが最も高かった

  • ラベンダーは集中力を下げてしまった

 

この傾向について、研究チームは、「ペパーミントに含まれるメントールによって脳が酸素を多く使うようになり、思考力と覚醒力を高めるのではないか」と指摘しております。勉強や仕事のパフォーマンスを手軽にブーストさせたいなら、ペパーミントのアロマを使ってみるのも手かもしれないですね。

 

 

ちなみに、上の研究ではラベンダーには良い結果が見られませでしたが、これはラベンダーが持つリラックス作用のせいだと考えられます。体の緊張を解いてくれる効果が高いせいでメンタルがゆるみ、集中力の低下につながってしまうんじゃないかなーと。

 

 

ただし、実はラベンダーも使い方しだいで集中力がアップするって報告もあったりします。こちらは山梨県立大学などが行なった実験(R)で、研究チームは、36人の学生を集めて3つのグループに分けました。

  1.  ジャスミンの香りをかぐ
  2.  ラベンダーの香りをかぐ
  3.  何もしない

 

この実験では、参加者に9時30分〜17時のあいだに1時間の作業を5回指示し、それぞれのタスクごとに30分の休憩をはさんでいます。参加者がアロマを使ったのは休憩時間で、みなディフューザーで香りをかいだそうです。

 

 

その結果、休憩しながらラベンダーをかいだグループは、作業を続けてもパフォーマンスが下がりにくくなり、他のグループよりも高い集中力を維持できたのこと。おそらく、ラベンダーのリラックス作用が休憩の効果を高め、脳をより大きく回復させてくれたんでしょうな。

 

 

つまり、上記の話をまとめると、以下のようになります。

 

  • 作業のあいだはペパーミントオイルを使う

  • 休憩のあいだはラベンダーオイルを使う

 

このくり返しにより、手軽に集中力を高められるかもですな。アロマ好きはお試しをー。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。