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今週末の小ネタ:病気の改善に役立つウォーキングの歩数とは? ビタミンDが片頭痛に効くかも? 筋トレでどこまで病気を防げる?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

 

いろんな病気の改善に役立つウォーキングの歩数とは?

ウォーキングほど素敵なエクササイズはない!みたいな話は、「不老長寿メソッド」で強調したとおりです。特別なトレーニングはいらないし、ほとんどどこでも実践できるし、そのくせ健康効果は高いしで、なにも運動したことがない人は、ぜひ試すべきエクササイズの筆頭なんですよね

 

 

が、まだ謎だったのが「慢性疾患の改善に役立つ歩数とは?」という問題であります。肥満、高血圧、睡眠時無呼吸症候群、胃食道逆流症、糖尿病といった問題に効くウォーキングの量はどれぐらいか、という問題ですね。

 

 

でもって、近ごろこの問題を調べてくれた研究(R)が出ていたので、内容をチェックしておきましょうー。




これは平均56歳の男女6,042人を対象にした観察研究で、歩数と慢性疾患リスクとの関係を評価したものです。研究チームは、参加者にFitbitを使わせて約4年におよぶ歩数のデータを調べ、1日当たりの歩数、歩行速度などをチェック。そのうえで、みんなの慢性疾患の発生率を調べたところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • 1日の歩数が2万歩になるまで、肥満、睡眠時無呼吸症候群、胃食道逆流症、大うつ病などのリスクは下がり続けた(1日20,000歩以上でさらにリスクが下がるかはわからない)

 

  • 1日あたり8,200歩を超えたあたりから、病気リスクが下がり始めていた

 

  • 糖尿病と高血圧については、1日あたり8,000歩を超えてもリスクは下がらなかった

 

ということで、もしかしたら「1日2万歩ぐらいは歩いたほうが良いのかも?」みたいな結論になっておりました。もちろん、これはあくまで最大値なので、個人的には1日8000歩もいけば十分じゃないの?ぐらいに考えてますが。

 

 

 

ビタミンDが片頭痛に効くかも?

ビタミンDが頭痛に効くのでは?というデータ(R)が出ておりました。このブログで何度も書いているとおり、片頭痛は非常に難しい問題で、男性の約8.6%、女性の17%が苦しんでいると想定されております。

 


で、近ごろ「片頭痛に効くのではないか?」と言われるのが、ビタミンDです。過去の研究では、片頭痛が多い人ほどビタミンDレベルが低い傾向が明らかにされているんですよ。

 

 

そこでこの研究は、メンデルランダム化のテクニックを使って、ビタミンDが片頭痛を左右するのかどうかをチェック。片頭痛がない1,274,943人と、片頭痛がある88,363人を対象に、体内のビタミンD濃度と遺伝子変異を調べたんだそうな。

 

 

そこで何がわかったかといいますと、以下のような感じです。


  • 体内のビタミンDレベルが1標準偏差上がるごとに、片頭痛のオッズが約8%低下した。

 

ということで、やはり体内のビタミンDレベルは、頭痛の発症を左右する可能性が高そうであります。この研究では、ビタミンDの「1標準偏差の増加」の具体量を報告していないものの、これまでの研究から考えれば、20 nmol/Lまたは8 ng/mLぐらいでしょう。

 


ちなみに、このレベルのビタミンDを達成するには、1日に400IUぐらいのサプリを飲めばOKな計算ですけど、この量については、ベースラインのビタミンDレベルや体脂肪などによって変わるでしょうから、そこはご注意ください。

 

 

さらに余談ですが、ビタミンDが頭痛に効く理由としては、

 

  • 片頭痛の原因であるカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)と呼ばれる神経ペプチドのレベルを下げてくれるから(CGRPは神経細胞で作られ、神経末端から放出されると、血管拡張と神経の感作を誘発する)?
  • ビタミンDが炎症性メディエーターの減少や脳内セロトニン合成の促進をうながすから?

 

のように考えられております。まー、ここらへんはまだ謎が多くて定説があるわけじゃないんですが、頭痛にお悩みの方は、ビタミンDに気を使ってみちゃいかがかと思うわけです。

 

 

 

筋トレは全死因リスクを減少させるか?

近ごろは筋トレと健康に関するデータが増えてきましたが、新たな研究(R)も「筋トレで死亡リスクはどこまで下がるか?」を調べてくれていて参考になりました。世界保健機関(WHO)なんかは、「健康のために週に2回以上の筋トレをしてねー」と言ってるんですが、実は筋トレと死亡リスクの関係はあまり明確になってなかったので、まことにありがたい研究だと言えましょう。

 


これは、米国の成人99,713人(平均年齢71歳)対象にした試験で、みんなを平均9.6年ほど追いかけたものです。この調査では、すべての参加者に、普段の筋トレと有酸素運動の回数をチェックしたんだそうな。

 


でもって、それらのデータを分析したら、結果はこんな感じになりました。

 

 

  • 筋トレを行わない人と比べて、筋トレをする人は、全死亡のリスクが下がる傾向があった

    • 筋トレを月1回未満から週7回以上までやった場合は、全死亡リスクが9%低下した

    • 週1〜2回の場合は、全死亡リスクが14%低下した

    • 週3~7回以上の場合は、全死亡リスクが7%低下した

 

 

  • さらに、筋トレは心血管の病気による死亡リスクの低下とも関連していた。

    • 筋トレを月1〜3回する人は、心疾患のリスクが11%下がった

    • 筋トレが週1〜2回の人は、心疾患のリスクが15%下がった

 

 

  • がん死亡率については、月に1~3回の筋トレにより、リスクが15%ほど下がる傾向があった。

 

 

ということで、やはり筋トレってのは、いろんな病気による死亡リスクを下げてくれるようなので、私たち筋トレ好きにはうれしい結果じゃないでしょうか。

 


まー、この研究には限界もありまして、筋トレと有酸素運動の頻度を1つの時点だけでしか評価していないので、時間の経過に伴う運動習慣の変化を考慮できておりません。また、参加者がどのような筋トレのルーチン(強度、負荷、量など)をしているのかも不明だったので、この点も結果に影響しているはずであります。そこは注意しつつ、今後も筋トレに励んでいただければ幸いです。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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