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あなたの時間を奪いまくる「わかった!…しまった!効果」を防ぐにはどうすべきか?


デビッド・ロブソンの「期待効果(The Expectation Effect)」を読んでいたら、「わかった!……しまった!効果」に関するパートがちょっとおもしろかったのでメモ。ロブソンさんは、日本だと「The Intelligence Trap: なぜ、賢い人ほど愚かな決断を下すのか」などで有名なジャーナリストですね。

 

 

で、「わかった!…しまった!効果」ってのは、なんかふざけたネーミングですけど、もともとは「TIME SMART(タイム・スマート)」のアシュリー・ウィランズ先生が名づけた心理効果です。どのような心理なのかを簡単にまとめると、

 

  • 「未来はもっと時間があるだろう」と甘く見てしまう現象

 

のことです。ウィランズ先生の説明によると、

 

先週の月曜日、友人が私に土曜日に引越しを手伝ってくれないかと頼んできた。私は「わかった!(No problem)」と返事をした。

 

そして、火曜日には、私の同僚が土曜日までに彼女が作ったレポートに目を通すように頼んできた。私はまた「わかった!」と答えた。

 

水曜日には別の友人が私が行きたかった新しいレストランに土曜の夜に誘ってくれた。私はもちろん「わかった!」と答えた。

 

こうして誘いや頼みに何度も何度も応じ続けた結果、いざ土曜日の朝になると「しまった!私は何を考えていたんだ!」と思ってしまう。

 

とのこと。「来月になればもっとヒマだろう」と考えて、映画や食事の計画をガンガンに詰め込んだところ、当日になったら「こんなにいろいろできるわけあるか!」って状態になってしまったような経験は誰にでもあるでしょう。これを、ウィランズ先生は「わかった!…しまった!効果」と呼んでるわけです(いわゆる「計画の誤謬」バイアスに近いですね)。

 

 

このように、たいていの人は、明日には今日より多く時間があるだろうと勘違いしがち。私の場合も、仕事で追い込まれたときには、だいたいこのバイアスにハマっているケースが多いっすね。

 

 

デューク大学のガル・ザウバーマン先生らの研究によると、この「わかった!…しまった!効果」は、私たちの記憶力と想像力の欠陥から生じるものだとのこと(R)。ほとんどの人ってのは、数週間から数カ月先の予定について考えるときに、いつもの暮らしで行っている平凡な仕事(たとえば部屋の掃除や医者の予約など)を忘れてしまい、そのせいで「未来には無限の時間が!」って気分になるわけですね。

 

 

そういえば、こないだ取り上げたUCLAのハル・ハーシュフィールド先生も、「私たちは、『将来は自由な時間がある魔法の国に違いない』と、すぐに騙されてしまう」と書いておられました。うーん、これはわかってるんだけど、いざ未来のことを考えると、やっぱり頭から抜け落ちちゃうんですよねぇ……。

 

 

また、最近の研究(R)によると、私たちは、「これをやったら楽しいに違いない!」と思っているアクティビティを思い描くときに、最も自分の能力を過大評価する傾向が強くなってしまうんだそうな。要するに、自分が魅力的に感じる行為ほど「たっぷり時間があるに違いない!」と思っちゃうよーって話でして、このような認知のバイアスもまた、「1日のうちにやりたいことを詰め込みまくったせいで、当日になったらほとんど時間がなくなってしまう」状態につながってるわけですな。

 

 

この効果になんの対策も取らないと、時間的なプレッシャーがガンガンにたまっていき、せっかく魅力的に思えた機会を楽しむことができなっちゃうのは間違いないところ。私もそうですが、せっかく旅行に行っても、旅先でずっと仕事のことを考え続けたりして、人生の楽しさが減っちゃうわけです。

 

 

ってことで、この問題に対処するために、デビッド・ロブソンさんが何を言ってるのかと言いますと、

 

  1. 未来に行う活動にかかる時間を、いつものように普通に見積もる

  2. 1で見積もった時間を2倍にする

 

ってシンプルなソリューションです。この「2倍」ってのはただの経験則らしいんですけど、確かに倍ぐらいにしておかないと、見積もりエラーは防げないかもしれませんなぁ……。

 

 

また、「わかった!…しまった!効果」を防ぐもうひとつの方法としては、

 

  • 未来に行う活動を考えているときに、「明日この仕事をしなければならなくなったら?」と想像してみる。

 

ってやり方も提案されておりました。できるだけ予定を直近に想定して、もし答えがノーだったら考え直すべきだって話ですね。

 

 

どっちもシンプルなやり方ですけど、それだけに効果は高そうだなーって感じなんで、私もさっそく「見積もりを2倍にする」ってやり方を試してみようかと。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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