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日本人向けのメンタル改善テク「漢字脱フュージョン」をやってみよう

 


 

有名なメンタル改善テクニックのひとつに、「脱フュージョン」ってのがあります。くわしくは「この脱フュージョンがすごい!」をお読みいただければと思いますが、端的に言うと、「自分の思考はただの思考に過ぎないから、それに巻き込まれないようにしようぜー」って手法の総称になります。

 

といっても意味がわかりにくいでしょうが、たとえば、最も基本的な脱フュージョンの方法として「思考と距離を置く」ってやり方があります。くわしいやり方を説明すると、

 

  1. 自分を定期的に苦しめているネガティブな思考を選ぶ(『俺は絶対に成功しない人間だ』『自分はコミュ障だ』みたいなやつ)。

  2. 少し時間をとって、そのネガティブな思考を本当に信じてみる。「自分は絶対に成功しない」と思っているなら、本当に何をやってもダメな自分の姿をイメージしたりして、心の底からネガティブな思考に浸ってみる。

  3. 続いて、頭の中のネガティブな思考を、次のように言い換えてみる。「自分は絶対に成功しない」って思考が問題になっているなら、その思考を「私の脳は、私は絶対に成功しないという考え方をしている」みたいに変換します。これで思考と距離が置けるようになるわけですね。

  4. さらに思考と距離を置きたいなら、「いま観察している自分は、脳が『自分は絶対に成功しない』と思っていることに気づいている」みたいに付け加えるのもあり。

 

みたいになります。このような変換作業を行うことで、「自分は成功できない!」って思いを他人事のようにながめることができ、急に嫌な気分が消えたりするんですよ。もちろん、これで常に嫌な気分が改善するわけじゃないものの、「思考と距離を置く」ってのは超重要なスキルなので、意識しておくと良いのではないでしょうか。

 

で、脱フュージョンのテクニックはいっぱいあるんだけど、伊井俊貴先生が開発した日本人向けの脱フュージョン(R)がおもしろかったのでメモしておきます。これは「漢字を使って脱フュージョンしよう!」ってテクニックで、日本人が使いやすいようにデザインされたもの。脱フュージョンってのは言葉を上手く使いこなさないと効果が出ないことが多いので、私たちになじみ深い漢字を使えるのは、非常にありがたいですね。

 

具体的なやり方は、こんな感じになります。

 

  1. 自分に苦痛を与えるような思考を紙に書き出す(「自分は落ちこぼれだ」みたいな)。

  2. そのネガティブな思考を読んで、体にどんな変化が出るかをチェックする(「顔の筋肉が緊張してシワが寄る」みたいな)。

  3. 同じような体の変化が、もっと強く出るような言い回しを探す(「失敗者」「駄目人間」「落伍者」など)。

  4. 新たに見つけた言葉を、何度も口に出して読む(「落伍者、落伍者、落伍者、落伍者………」みたいな)。

  5. その言葉を、ゆっくり読んだり、早く読んだりする。

  6. その言葉をひらがなにして、そこに別の意味を持つ楽しそうな漢字に変換する(「楽娯社」みたいな)。

  7. 当て字にした言葉を、なんどもくり返して読み、身体の変化がどうなったかを確かめる。

 

ということで、自分の身体の反応が強くなるようなネガティブワードを探り、その漢字を無理やり別の感じに当てはめて、もともとの嫌な単語をばかばかしい感じに変えていくわけですね。まだ自分では試していないんですが、確かにこれは効きそうな気がしますね。

 

ってことで、今回は漢字を使ったバージョンを紹介しましたが、どの脱フュージョンも基本は同じで、「いかに自分の思考に巻き込まれないようにするか?」ってのがポイントになります。それさえできれば、なにがしかのメリットはあるはずですんで、自分の感覚にしっくりくるテクニックを選んでいただければと。

 

ちなみに、最後に注意点を指摘しておくと、脱フュージョンのテクニックは「気分を良くすること」が目的ではなく、あくまで「思考に巻き込まれない自分でいる」ってのが重要なので、そこはご留意ください。

 

確かに、脱フュージョンをやってみると、その直後から気分が改善することが多いんですけど、それはあくまでオマケみたいなものなんで、この偶発的な気分の改善を、脱フュージョンのゴールだと勘違いしないようにしてくださいませ。「脱フュージョンで気分を改善だ!」と思いすぎると、脱フュージョンが思考をコントロールするための戦略に変わっちゃって、逆効果になる可能性もありますんで。よろしくどうぞー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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