【質問】めっちゃ怒りやすいんですが、どうすればいいですか?#5「怒りの氷山」
シリーズ「めっちゃ怒りやすいんですが、どうすればいいですか?」の続きでーす(#1,#2,#3,#4)。
このシリーズでは、「なんだかよくわからず怒りがわいたり、ちょっとしたことで不必要に怒ったりすることが多いです」ってご質問に応えて、怒りの対処法について考えております。
前回は「怒りからタイムアウトするときにやるべきこと」の話をしまして、「一定の時間を取って怒りをやり過ごすときに実行すると、怒りが緩和されやすい方法」をご紹介しました。 怒りが習慣になってしまった人は、怒りがわくたびにここらへんを実践していくと、少しずつ脳が慣れ始めて、すみやかに怒りを解決できるようになるはず。
で、 今回は、最後のステップで「なぜ私は怒るのか?を理解しようぜ!」 という話をしていきます。そもそも人が怒る原因はいろいろあるんで、そこらへんを掘り下げて、根本解決を目指そうって話ですね。
基本3.怒りの氷山
さて、怒りとうまく付き合って行くには、「怒りの底にはなにがあるのか?」ってのを掘るのがめっちゃ大事だったりします(R)。
というのも、怒りの問題に悩んでいる人というのは、多くの場合において、 怒りの奥底に、恥ずかしさや悲しみ、失望など、より辛い感情を 隠し持っているものなんですよ。これらの感情が強すぎるあまり、怒りの感情を発動させて、どうにかして辛い感情を隠そうとしているわけですね。 いくつか例を挙げると、
- 相手から批判されて激怒する人は、 その根底に「恥ずかしさ」が存在しており、「批判した相手が悪いんだ!」と 怒りまくることで、恥ずかしさを抑えようと していることが多い。
- 誰かに約束をドタキャンされて 激怒する人は、 その根底に「失望」が 存在しており、 この感情を味わいたくないがために怒りを爆発させていることが多い。
みたいな感じです。このように、たいていの怒りは、 もっと嫌な、別の感情を隠すために発動しているケースが ほとんどなんですよ。
なので、怒りの 問題を本当に解決しようと思うなら、その根底にどのような感情が潜んでいるのかを 探り当てるのが大事。 根っこにある原因がわからないと、いつまでも対象療法で終わってしまいますからね。
でもって、この問題を解決するために役立つのが「 怒りの氷山」と 呼ばれるトレーニングです。 心理療法の世界でもたびたび使われる手法で、 アンガーマネージメントにお困りの人には役立つはず。
このトレーニングでいう氷山とは、 もちろん怒りのメタファーです。 ご存知のように、氷山は1部分しか海面の上に顔を出しておらず、海の下には巨大な氷の塊が隠されているわけです。この状態を、人間の怒りに当てはめたわけですね。
ざっくり説明すると、以下のような考え方になります。
- 氷山の最上部: 海面の上に出ている氷山のごく一部。つまり、私たちが他人に示す怒りを 表している。
- 氷山の中央部: 海面の下にある氷山の本体。 つまり、 私たちの怒りを駆り立てる隠された感情を表している。
- 氷山の最下部: 氷山の一番底の部分。つまり、私たちの怒りを駆り立てる思考や価値観を表している。
こんな感じで、人間の怒りを3つのパートに分類して考えるわけですね。それでは、このメタファーを使って、自分の怒りを分析してみましょう。
1.氷山の最上部チェック
氷山の最上部は、怒りの引き金となった状況とあなたの反応のことです。まずは、 自分が最も怒りを感じたときの状況を思い浮かべてください。 その上で、何があなたを怒らせたのかを考えて、簡単に 紙に書き出してください。
- 例:「面談中に、上司が私のアイデアを頭ごなしに否定し、 そのくせに、何も生産的なアイデアを出さなかった。」
2.氷山の中央部チェック
上述の通り、怒りは氷山の一角にすぎないことが多く、怒りの下には もっと別の感情が隠れていることが多め。 そこで、このステップでは、怒りの下にある傷ついた感情について考えてみましょう。怒りの引き金となった状況で、なぜ傷ついたと感じたかを考えて書き出してください。
- 例:
- 「上司が私の業績をすべて無視したので傷ついた。私は自分の仕事に真剣に取り組んでいるのに、それを無視されるのは辛い」
- 「私は自分の能力が同僚より劣っていると 思われることに恐怖を感じていた」
こんな感じで、自分の怒りに油を注いでいる可能性がある 感情をいくつか 考えてみましょう。この時、多くの人は、怒りの下に以下のような感情を隠し持っているケースが多いので、参考にしてください。
- 恐れ:何かが起こること、あるいは起こらないことを恐れて、自分を守るために怒りを 発動させるパターン。 怒りの原因としては、かなり定番。
- フラストレーション:ある状況に対してイライラを感じ、そのフラストレーションを健全な方法で表現するのではなく、怒りとして表現している。
- 傷つく:誰かに傷つけられ、自分を守る方法として怒りを発動させるパターン。
- 失望:物事が思い通りに進まず、その失望を怒りに 変えているパターン。
- 不安:不安や無力感を感じ、怒りが爆発してしまう パターン。
- 罪悪感や羞恥心:罪と恥の感情を隠すために、自分自身や他人に対する怒りを 発動させるパターン。
3.氷山の最下部チェック
さて、 最後にもっと深く掘り下げてみましょう。上の ステップで確認したあなたの本当のネガティブな感情の下には、さらに満たされていないニーズがあると考えられます。これについて考えて、紙に書き出してください。
ニーズは、私たちが心の奥に抱く人間としての根本的な欲求のことで、「金が欲しい」「昇進したい」「家を買いたい」といった表面的なものではなく、「他者からの理解」「友人からの共感」「社会とのつながり」のように、より深いところにある欲求を意味します。
- 例:
- 「私は他人から認められたいという欲求があり、 これを満たされなかったせいで 傷つき、これが怒りの感情につながったのかもしれない」
- 「私は安全を得たいと言う欲求があり、上司に怒られたせいで、この欲求がくらつき、 怒りが沸いたのかもしれない」
という感じで、 怒りの最奥にあるニーズを 掘り下げてみてください。
ってことで、 怒りの氷山エクササイズは以上です。今度、自分の気持ちをうまく表現できなかったり、怒りの理由がわからなくなったりしたら、もう一度このエクササイズを試してみてください。怒りの背後にある本当の感情やニーズを知ることで、解決策を見つけやすくなりますんで。
また、このエクササイズは、他人の怒りにも有効で、誰かを怒り狂う人を見かけたら「 この人の氷山は どんな感じなんだろうか?」と 自問してみると良いでしょう。他人の氷山を想像してみると、相手の怒りに巻き込まれにくくなりますし、 より前向きな解決策が生まれやすくなりますんで、こちらもお試しください。