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【質問】めっちゃ怒りやすいんですが、どうすればいいですか?#1「そもそも人はなぜ怒るのか?」


 

こんなご質問をいただきました。

 

いつも楽しく読んでいます。なんだかよくわからず怒りがわいたり、ちょっとしたことで不必要に怒ったりすることが多いです。怒りを爆発させたあとはだいたい後で落ち込みます。どうにかならないでしょうか。

 

ということで、怒りの問題をどうすればいいのか、と。アンガーマネージメントの話はめっちゃ範囲が広いので、ここで簡単にまとめるのは難しいテーマですなぁ……。

 

おそらく現時点では、「Shrink~精神科医ヨワイ~」の11巻が、最も手軽で楽しくアンガーマネージメントを学べる教材になってるんで、こちらを手に取っていただくのが早いんじゃないかなーと。実践的なテクニックもたくさん紹介されているので、日常でも使いやすいはずであります。

 

が、ここで終わるのもつまらないので、個人的に「大事だよなー」と思うポイントもまとめておきましょう。コントロールできない怒りってのは深刻な問題で、強い怒りは心臓病の発症リスクを高めるし、不眠症、消化器系の問題、頭痛などの問題を引き起こす確率が上がりますからね(R)。

 

 

なによりまずは「怒りの記録」から

怒りを抑える方法としては、呼吸法やグラウンディングなど無数にあるんですけど、それらをうまく使いこなすには「怒りの記録」を実践するのが最優先であります。「自分はいつ、どのように、なぜムカつくのか?」ってのを記録して、自分の怒りを刺激するトリガーを分析するわけですな。

 

そのトリガーは人によってさまざまで、「スーパーのレジで待たされた!」みたいに単純なことかもしれないし、「差別された!」ようなシリアスな事態かもしれません。いずれにしても、普段の生活の中で「怒り」がどのように発生しているのかを理解しないと、対応する方法も考えられないですからね。

 

そのためには、「Shrink」で紹介されているアンガーログを使ってもいいし、1日の終わりに「今日は何に怒ったんだっけ?」と振り返ってみたうえで、

 

  • 何に対して怒ったのか? そこでどのように感じたか? どこにいたか? 誰といたか? どう反応したか?  その後でどう感じたか?

 

といったポイントをざっくり書くだけでもOK。たとえば、以下のような感じです。

 

今日は同僚にむかついた。昨日のミスをまた掘り返されて、ネチネチと嫌みをいられた。その時はラウンジにいて、ちょっと仕事から離れてリラックスしようとしていた。

 

本当にむかついたので、彼に怒鳴り返した。オフィスに戻ると机を殴った。そして罪悪感と恥ずかしさを感じ、その日はずっとオフィスにこもっていた。時間が経てば、自分の日記を評価し、(わがままなど)名前を呼ばれたことが怒りの引き金になっていることに気づくかもしれない。

 

こんな感じで日記を1〜2週間ぐらいつけたら、怒りの引き金となる人、場所、物事などに共通点があることに気づくはず。この認識が怒り対策の第一歩になります。

 

 

 

そもそも人はなぜ怒るのか?

まぁ私たちが怒るときってのはだいたい共通していて、たいていの人は「不公平」を感じたときに怒ってるはず。そもそも「怒り」の感情ってのは、基本的に「もっと公平な扱いをしてくれ!」ってニーズを満たすための交渉戦術として進化したと考えられていて、「怒りのリキャリブレーション理論」などと呼ばれております(R)。簡単に言えば、怒りを交渉の戦術として使うことで、自分の期待と他者が与えてくれる価値のズレを修正してるわけですな。

 

このようなズレってのは、だいたい以下のような原因で起きるケースが多めであります。

 

  1. 人から不当な扱いを受けたと思っている:他人から不当な扱いを受けたと感じ、その記憶を何度も頭のなかでくり返し、怒りが慢性的になってるパターン。なにせ周囲が悪いと思っているので、自分に有利になるように闘い続けるしかなくなっちゃう。他人の行動に対する寛容度が低いケースが多め。


  2. 怒りの成功体験が忘れられない:過去に他人に怒りをぶつけて何らかの得をしたせいで、「怒ったほうが得なんだ!」と脳が学習したパターン。ただし、怒りを常に交渉の手段に使う人は対人ストレスにつきまとわれるため、そのせいで怒りの感情がブーストしやすい。


  3. 怒りを抑えすぎている:普段から細かい怒りを抑えまくっている人は、怒りの爆発が起きがち(R)。「怒りをコントロールするぞ!」って気持ちが強すぎると、それが裏目に出ちゃうんですよね。この問題については、怒りのコントロールを止めて、感情を抑えずによい気晴らしを見つけるのがいいっすね。


  4. 努力をジャマされたか無駄にされた:せっかくの努力を妨げられたり無駄になったりしたときに、怒りが発動する人も多め。治した家具がまた壊れたりとか、肝心なときにスマホが使えなくてイライラしはじめるようなケースですな。この場合は、とりあえず怒りの原因から数分身を引き離すだけでどうにかなるケースもありますね。


  5. 自分に正当な権利があると感じている:「エンタイトルメント」もまた怒りの原因になりやすいポイントであります(R)。これは、「自分には良いことが起きて当然だ!」と思っている状態で、「他人が自分によくしてくれるのが当然だ!」「自分には幸運が起きて当然だ!」みたいな思考にとらわれてる状態ですね。研究によると、エンタイトルメントが強い人は、自分が不運に見舞われると怒るのに、他の人が不運に見舞われると怒らないとのこと。困ったもんですねぇ。


  6. なんらかの疾患がある:慢性的な怒りは、間欠性爆発性障害、双極性障害、境界性パーソナリティ障害などの疾患に由来するケースも多め。これらの障害では、怒りがデフォルト状態になっちゃうケースも多いので、プロフェッショナルのサポートを頼るほうが無難。

 

これが「怒り」の原因の全てってわけじゃないものの、多くの人は、だいたいどこかに当てはまるんじゃないでしょうか。

 

というわけで、いろいろと書いてたら長くなってきましたんで、この話はシリーズにします。次回は、「怒り」って現象をもうちょい掘り下げつつ、具体的な対策をまとめていきましょう。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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