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今週の小ネタ:楽観的すぎる人はIQが低い説、ワーカホリックはめっちゃ不幸説、信用できなさそうな顔の人はめっちゃ不利説


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

 

楽観的すぎる人はIQが低い説

楽観主義者はIQが低いのではないか?ってデータ(R)が出ておりました。これはイギリスの約36,000世帯を対象にした調査で、みんなのIQをチェックしたうえで、将来に自分が裕福になっていると思うかどうかと、さらに実際にみんなの経済状況がどうなったかを調べてみたら、

 

  • IQが高い人は、低い人よりも、経済的な将来について現実的である傾向が22%高かった。
  • IQが低い人ほど極端な楽観主義者である確率が高かった。
  • 将来をあまりバラ色に考えない人は、記憶力、言葉の流暢さ、数的推理、流動的推理が優れていた。

 

って結果だったらしい。これは楽天的な性質が悪いって話ではなく、あくまで「非現実的なレベルの楽観主義」に焦点を当てた話なのでご注意ください。つねにネガティブなことを過小評価し、つねにポジティブなことを強調するような人は、どうやらIQが低いかもしれないぞって話ですんで。

 

筆頭著者のクリス・ドーソン先生は、こんなことを言っておられます。

 

ポジティブに考えすぎる人の問題点は、重大な決断を下さなければならないときに、意思決定の質に悪影響を及ぼす可能性があることだ。

 

将来を正確に予測することは難しいため、認知能力が低いと自分に媚びるバイアスが強くなり、より多くの誤りを犯すと予想される。

 

他方で、認知能力が高い人ほど、重要な決断をするときに、この自動的な反応を上書きすることができる。

 

過度に楽観的な信念にもとづく計画は、判断を誤らせ、現実的な信念よりも悪い結果をもたらすのは間違いない。 

 

非現実的なほど楽観的な人は、自分の経済状況も甘く見るため、過剰な消費と負債、そして不十分な貯蓄につながる。過剰にビジネスのリスクを取り、それが失敗につながることもある。 

 

要するに、人間は誰でも自分の未来を楽天的にとらえたい傾向を持っているんだけど、認知能力が高いと、この天然の性質に抵抗することができるため、より現実的な未来を予想するのがうまくなるんだって話ですね。

 

まぁ、そうは言っても、過去の研究を見れば「楽観的な人ほど長生きする」ってデータもあるわけで、必ずしも未来を良い方向に考えるのが悪いわけではございません。おそらく、最も大事なのは、「科学的に正しくポジティブシンキングを使うには「予想」と「空想」を区別せよ 」で書いたように、楽観的な態度を正しく使うことなんでしょうな。

 

 

 

ワーカホリックはめっちゃ不幸説

ワーカホリックほど不幸な人はいないのでは?と思わせる論文(R)が出ておりました。ワーカホリックの人は、しばしば「俺は仕事が一番好きだ!」「仕事をしているときが一番幸せだ!」と主張するわけですが、実際には、平均して仕事の最中も機嫌が悪いだけでなく、ポジティブな感情の量も少ない傾向があるんだそうな。

 

こちらは139人のフルタイムワーカーを対象にしたテストで、みんなに「いまどのように感じてますかー」ってのを1日を通して尋ねまくったらしい。その結果について、主筆のバルドゥッチ先生は、こう申しておられます。

 

収集されたデータによれば、ワーカホリックな労働者の多くは、平均して他の労働者よりも気分が悪い。つまり、仕事中毒の人は、別に仕事から喜びを得ているわけではないようだ。


さらに、仕事からの喜びがない結果として、ワーカホリックは感情が平坦になりやすい傾向もあった。

 

ってことで、ワーカホリックってのは仕事をすればするほど嫌な気分になってるし、感情の波がどんどんなくなっていくし、それでもさらに仕事にのめりこんじゃう傾向があるらしい。

 

なんでこういう現象が起きるのかと言いますと、ズバリ「ワーカホリックたちは、つらい考えや感情を遮断するために仕事をしているから」ってことらしい。薬物やアルコール依存と同じで、ネガティブな気持ちから目をそらすために仕事にのめりこむのが、ワーカホリックの大きな特徴だってことですな。

 

そのせいで、ワーカホリックは精神的な幸福度が低くなるだけでなく、思うように仕事が進まないときには、不安、敵意、罪悪がわきあがることも多いらしい。

 

ワーカホリックに見られる否定的な気分は、日々のストレスレベルが上昇していることを示しているのかもしれない。

 

さらに、ワーカホリックが責任ある地位に就いていることが多いことを考えると、彼らの否定的な気分は部下や同僚にも伝染しやすい。

 

これは、組織における深刻なリスクだと思われる。

 

ってことで、ワーカホリックはよく働くだけに出世することも多いんだけど、いつも不機嫌なせいで部下のパフォーマンスを下げる可能性が高いよーって話ですね。これは会社あるあるかもしれんな……。

 

ちなみに、ワーカホリックには、大きく7つのサインがありますんで、以下のポイントによく当てはまる人はご注意ください。

 

  1. どうすれば仕事の時間を増やせるかをつい考えてしまう。
  2. 最初の予定よりも、はるかに多くの時間を仕事に費やしている。
  3. 罪悪感、不安、無力感、抑うつ感を軽減するために働いている。
  4. 他の人たちから「仕事を減らすように」とよく言われる。
  5. 働かないように言われるとストレスがたまる。
  6. 趣味や余暇活動、運動よりも仕事を優先させる。
  7. 働きすぎのせいで健康に悪影響が出ている。

 

 

 

信用できなさそうな顔の人はめっちゃ不利説 

「信用できない顔の人には死刑判決が出やすい」という嫌なデータ(R)が出ておりました。こちらは、フロリダ州で殺人を犯した受刑者400人の顔写真を用意し、すべてを被験者に見せて「この犯人が無期懲役と死刑のどちらを宣告されたか当ててください」と指示したんだそうな。

 

すると、実際に犯人が死刑を宣告された数と、被験者が「信用できなさそうな顔だなー」と判断した人物の数には大きな相関が合ったらしい。私たちが他人の顔に抱くバイアスは、そんなところにも影響を与えるわけですね。

 

研究チームいわく、

 

これらの発見は、私たちが顔に抱く固定観念が、実社会で悲惨な影響を及ぼす可能性があるという先行研究を補強するものである。これまでの研究で、このバイアスを排除するのは非常に難しいことがわかっている。

 

とのこと。この研究では、模擬の陪審員を使った実験と、現実の被告と陪審員を使った実験の2パターンを採用してるんですが、いずれも「この顔は信用できない」と思われる被告ほど死刑が言い渡される傾向があったそうな。

 

具体的には、どちらのケースでも、眉毛が濃かったり、唇の両端が下がっていたりと、ちょっと怖そうで威圧的に見えるような人は、信用できないと思わわれやすかったとのこと。うーん、これは辛い。

 

まー、私たちが他人に抱く印象が、持ち前の顔立ちにかなり左右されるのは有名ですからね。生まれつき信頼できなさそうな顔を持つ人には理不尽な話でしかないですけど、そういう顔に生まれた人は意識していくしかないんでしょうなぁ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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