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意志力研究のプロ「目標を達成したいなら意志力より考えることは他にあるよねー」

 


 ダイエット中なのに夜食に手が伸びる、悪いと思っていても友人とケンカしてしまう、運動しようと決めてもやらないなど、「わかっちゃいるけどできない!」って問題は誰にでもあるもの。私もピアノの練習がなかなか習慣化できずに困っております。

 

ってことで、トロント大学の心理学者マイケル・インズリット先生が、この「意志力」問題について、超ナイスなレビュー(R)を出してくれていて勉強になりました。インズリット先生は、長年にわたって、自制心や努力といったテーマに取り組んできた有名な博士であります。

 

かなり論点が広い内容なので、私見も交えつつ、ざっくり要点を抜き出してみると、以下のようになります(かなり私の意見が混ざったまとめなので、純粋にインズリット先生の考え方を知りたい方は原文をお読みください)。

 

  • 50年以上前にニュージーランドで始まった大規模な調査では、約1,000人の赤ん坊を追跡し続けている。この研究では、子どものころに、両親や教師などから「意志力がある」と評価された人たちは、大人になってからも 収入が高く、銀行の預金残高も多く、健康で、メンタルも安定していて、 犯罪をおかす確率も低かった。 このデータを見てみると、一般に「意志力がある」と言われる人たちは、無理せず日常的に自制心を発揮できているのだと思われる。

 

 

  • インズリット博士の研究では、ストループ課題で参加者のパフォーマンスを計測し、これを全員の長期的な自制心と比べた。しかし、この研究では、脳の我慢や自制をつかさどるシステムと、日常で発揮される意志力には、なんの関係も見られなかった。

 

 

  • ドイツで行われた研究では、自他ともに「自制心が強い」と評価される人たちを集め、普段はどのように行動しているのかを調べた。すると、意志力がある人たちは、日常生活で自分をコントロールする頻度が少ないことがわかった。

    自制心が高い人は、ダイエット中は不健康な食べ物をそれほど欲しがらないし、お金を節約しようとしているときに物を買いたくなることもない。つまり、意志力とは、脳の機能がどうこうって話よりも、「誘惑から身を避けるスキル」のほうが大事なんじゃないかと考えられる。

    上記の発見は追試でも確認されているため、おそらく「自分の意志力のなさ」を嘆くよりも、「身の回りの誘惑をいかに減らすか?」のほうがもっと大事なのだと思われる。

 

 

  • ただし、これらの研究では、意志力が強い人たちが欲望を避けるのがうまい理由はよくわからない。単に生まれつき欲望が薄いからなのかもしれないし、後天的に学習したスキルなのかもしれない。

    もっとも、このポイントについては、努力に対して一貫して報酬を与え続けることで、誘惑を避けるモチベーションが高まることを示すデータも存在している。そう考えると、誘惑を避けるのは、練習で身につくスキルなのだと思われる。

 

 

  • これらのデータを日常で使うには、まずは内的動機づけに本気で取り組むのが大事。たとえば、「健康な食事をすることで、自分の人生がどのように良くなるのか?」を深く考え、具体的に書き出してみる。これによって内的動機が高まり、誘惑を感じにくくなる。

    また、嫌いなものを好ましいものと組み合わせるのも、誘惑から身を守るのに役立つ。例えば、ブロッコリーをチーズソースと一緒に食べるような感じである。

 

 

  • 同じように、「いつ何をするか?」というスケジュールを立てて計画を立てるのも大事である。こうしておけば、嫌なことをする葛藤に悩まされにくくなる。実際、自制心が高い人は、良い計画をたくさん立てる傾向がある。

 

 

  • 意志力を発揮するうえでさらに大事なのは、「失敗は常に起きる」という事実を受け入れる姿勢を持つことである。実際のところ、ある研究では、失敗に負けずにがんばり続けられる人は、逆にチャンスを逃す可能性が高まるとも報告している。

    あまりにも目標に向かってがんばりすぎると、私たちの視界はせばまってしまい、他の選択肢を発見する確率が下がってしまう。

 

 

  • ネガティブな感情をうまく使うのも大事である。怒りやイライラなどの感情は、一時的なものであれば、目標を達成するのにめっちゃ役立つ。

    ネガティブな感情は嫌なものだが、その感情にのまれて自分自身を責め始めない限りは、目標の達成に役立つことは覚えておきたい。もしネガティブな感情に襲われはじめたら、自分を責めるの代わりに、 「ちょっと面白いことになってきたぞ」と言ってみると良い。

    研究によると、自制心が強い人ほど罪悪感を強く感じる傾向があるが、それと同時に、嫌な気分が発生するタイミングを認知するのがうまく、ネガティブな感情を処理するのもうまい。

 

 

  • 「他人」の力を使うのも、意志力アップには大いに役立つ。これは行動経済学者がプレコミットメントと呼ぶ手法で、「私はダイエットをします!」「私は英語を学びます!」のように、友人や同僚に宣言しておくだけで良い。

    これによって「友人にバカにされたくない!」という気持ちが生まれ、目標の達成率を大きく上げてくれる。シンプルながら、めっちゃ強力な手法である。

 

 

  • 「努力のパラドックス」も、意志力アップに欠かせないファクターである。 これは、「私たちは、より努力が必要な仕事を、より意義がある仕事として経験する」というものである。つまり、私たちにとって、本当に価値や意味の感覚を与えてくれるのは「努力」であり、この事実を認識しておけば、困難なタスクにも取り組めるモチベーションを維持しやすくなる。

    しかし、これまでの実験では、行動の選択肢を与えられた人の大半は、圧倒的に簡単な方を選ぶことがわかっている。簡単なものを好むのもまた人間の特性だが、真に意味と価値の感覚を生むのは「努力」だと知っておきたい。

 

 

  • 意志力を発揮するに当たっては、「退屈」もまた重要な感情である。退屈は嫌なものだが、他にすることがなかったり、難しい仕事から離れられる可能性があると、それまで興味がなかった特定のタスクが急に魅力的に見えてくることはよくある。

    このような心理は、目標を達成しようとするときに役に立つ。やろうと思っていたことに退屈を感じたら、自分のToDoリストをあらためて見直し、他のタスクであればモチベーションがわくかどうかをチェックしてみるとよい。

 


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