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効果的かつ正確に人を判断する方法はこれだ!という本を読んだ話



『良い判断(Good Judgment)』って本を読みました。著者のリチャード・デイビスさんは組織心理学者で、フォーチュン100社に名を連ねる企業を率いるCEOへコンサルをしている先生らしい。クライアントには、Meta、Microsoft、Apple、Nike、Starbucks、Amazon、Googleなどがあるそうで、なんかすごいもんですな。

 

で、本書はタイトルどおり「本当に人生に必要な“良い判断”とは何か?」に焦点を当てていておもしろかったです。著者さんの独断にもとづく話も少なくはないんですけど、「ビッグファイブ理論を活かして相手を判断しよう!」って考え方は、かなり実践的で良いのではないでしょうか。

 

では、本書から勉強になったところを見てみましょうー。

 

 

  • 「優れた判断」と言われると、多くの人は、「論理的な思考」や「分析的な意思決定」のイメージを思い描く。「良い判断」と「悪い判断」のどちらかを選択し、一方は正しく、もう一方は間違いだと思い込み、そのためには認知バイアスを乗り越えて、事実さえ正しく整理すれば良い……そんな考え方である。

 

 

  • しかし、実際には、「優れた判断」とは、人に対する優れた判断のことを意味する。基本的に、私たちという存在は、人生で下す決断の関数であり、その決断の総体であり、その決断のほとんどは人に関わるものだと言える。

    どの学校に行くか、どこに住むか、どのキャリアを選ぶか、誰とパートナーになるか、誰と仕事するかなど、ほぼすべての判断には“人”が関わっている。

 

 

  • なかでも、人生で最も重要な決断のほとんどには、私たちが誰と生きるかを選び、その人をどれだけ信頼するかというポイントが関わっている。

    これは仕事においても同様で、仕事のトラブルをうまく切り抜けるためには、関係者の本質を見抜く判断力が必要になる。

    ここまでの話をまとめると、私たちがより幸せで成功した人生を送るためには、他人への判断力を身につける必要がある。

 

 

  • 他人をうまく判断するためには、知覚力と呼ばれる認知の筋力を使う必要がある。筆者の調査によれば、成功する人は、たいてい知覚力を持っており、仕事や人生において他の人より優位に立っている。知覚力を持つ人は、人を理解するのがうまく、その人がどんなことに心を動かされるのかを理解している。

    幸いなことに、知覚は鍛えることができる。「知覚力を鍛える」とは、人を理解し、その人の気質を理解し、その人のパーソナリティに関する知識をどのように使えば、より良い決断が下せるかを理解することを意味する。

    もちろん、私たちは、人を見極める際にさまざまなミスを犯す。しかし、人を見極める際に発生するノイズを断ち切る方法を学べば、他人を見抜く能力を手に入れることができる。

 

 

  • 知覚力は、普段から意識して使わないと、時間とともに能力が低下していく。しかし、現代人は、SNSやメッセンジャーを使ったコミュニケーションに慣れているため、他人と話したり、話を聞いたり、観察したりする能力が低下している人が少なくない。

    この問題を解決するには、知覚の筋肉を鍛えることで、他人に対して本当に注意を払う能力を取り戻すのがよい。他者に対する子供のような好奇心を取り戻し、それを日々の仕事や生活に取り入れるしかない。

 

 

  • 他人への判断力と言われて、EQ(感情的知性)を想起する人は多い。もちろん、EQはある程度まで大事だが、近年は、その効果が誇張されすぎている。

    EQを世に広めたのはダニエル・ゴールマンだが、残念なことに彼は、EQという概念を当初の研究とはまったく異なる意味に変えてしまった。ゴールマンは、EQを能力ではなく気質として扱っており、そのせいで共感や社会的洞察力といったものがEQあとみなされるようになった。

    共感の重要性は疑いようがないが、共感はEQではないし、EQと混同すべきではない。筆者が本当に強調したいのは、相手の感情をもとに判断を行おうとしても、それは“つかの間の状態”に過ぎないため、判断の精度が落ちてしまうという点である。

    一方で、その人のパーソナリティは永続的なものであり、感情よりもはるかに行動を予測しやすい。そのため、相手の感情を理解することには、それほど気を配らなくてもよい。その代わりに、その人の核となるパーソナリティを理解することにエネルギーを注ぐほうが賢明である。

 

 

  • 人を理解する最善の方法は、相手のビッグファイブを理解することである(ビッグファイブの詳細については「3分で自分の性格を正しく理解する」などをご覧ください)。

    ビッグファイブに関する研究論文は、すでに何万件も発表されており、現在では、ほぼすべての心理学者がこの考え方に同意している。ビッグファイブは、人をより明確に理解したいときに使える最良の方法だと言える。

 

 

  • 以上をふまえて、相手をよりよく理解したいと思ったときは、目の前に5つの箱があると想像し、それぞれの箱に「相手の情報を入れられないか?」と考えてみるとよい。具体的には、以下のような箱を使って行く。

    ・知性の箱: このボックスには、その人がどのように考えるかに関する知見を入れる。例えば、新しい情報に対する反応や問題解決のアプローチなどである。

    ・社交性の箱: このボックスには、その人が他人とどのように関わるかに関する情報を入れる。例えば、友好性やコミュニケーションスタイルなどである。

    ・情緒の箱: このボックスには、その人が感情をどのように表現するかに関する情報を入れる。例えば、感情の起伏やストレスへの対処方法などである。

    ・動機の箱: このボックスには、その人が何を目指しているか、なぜそれをするのかに関する情報を入れる。例えば、目標設定ややる気の源などである。

    ・勤勉さの箱: このボックスには、その人がどのように仕事に取り組むかに関する情報を入れる。例えば、計画性や仕事への態度などである。

 

  • 相手と会話をする際、話の内容から得られる情報を、上記の5つのボックスに分類していく。例えば、相手が仕事の話をしている時、その内容が勤勉さに関するものなのか、動機に関するものなのかを判断する。

    その際は、例えば、「どうしてその目標を設定したのですか?」といった質問を使い、動機に関する情報を収集。各ボックスを、できるだけ多くの情報で満たすようにする。

    これを続けていくと、それほど時間が経たないうちに、相手への判断力がめっちゃ豊かになったことに驚くはず。そうなれば、あなたは相手を判断するための能力を手に入れたことになる。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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